ビルダーに対抗、大手ハウスメーカーのローコスト住宅商品戦略商品・トレンド,ハウスメーカー,太陽光/省エネ/ZEH関係
前回は、大手ハウスメーカーが展開しているハイエンド商品を紹介しました。今回紹介するのは大手ハウスメーカーの「ローコスト」商品です。
多くのハウスメーカーはこれまで、販売棟数の伸び悩みを1棟当たりの販売単価を上昇させることで売上高を底支えしてきました。現在、平均3,000万円を超えるハウスメーカーも少なくありません。
今回取り上げるローコスト商品は建物販売価格2,000万円内外を想定しており、今後改めて棟数シェアを高めるというハウスメーカーの意図が見えてきます。
また、このローコスト商品開発の背景には、近年の飯田グループや地場の有力ビルダーの躍進があります。全国年間住宅着工棟数に占める大手ハウスメーカーシェアは、2014年度27.2%→2015年度26.6%→2016年度26.0%と年々減少しており、ハウスメーカーが受注に苦戦していることは明白です。
メーカーとビルダーが手掛ける住宅の大きな違いは「価格」で、比較的安価なビルダーの住宅は手が届きやすくビルダー勢が、エンドユーザーのボリューム層を囲いこんできたと言えます。
販売好調~積水化学「グランツーユーV」
2017年10月28日に発売した積水化学のローコスト商品「グランツーユーV」の売れ行きが好調です。
同商品は、もともと企業設立70周年の記念商品として一部のエリアにて17年4月から販売されていました。9月末時点で約600棟の受注と反響が大きかったため、全国展開する運びとなりました。同社の決算情報によると、全国での販売がスタートした3Qは受注が加速し、400棟超を受注。また、受注速度は月を追う毎に増していると言います。
エリアの傾向としては地方部からの反響が大きく、発売当初は、既存の鉄骨系商品との売り分けや販促・販売体制の構築に苦戦するエリアもありましたが、これも解消に向かっています。
残りの4Qで、全国展開が軌道に乗り、月200棟のペースで受注できたと仮定すれば、2017年度は1,600棟内外の受注棟数まで拡大します。2018年度の販売目標2,000棟は達成可能な数字と言えるでしょう。
同商品は木質ブランドであるツーユーホームの中でも中高級商品グランツーユーで使用されている2*6材を用い、新工法「W5工法」を採用しています。ユニットのコーナー部は、新開発の金物で接合することで精度を高め、誤差±3mm程度だった従来のユニット施工精度を±1mmまで向上させています。
また、この新工法により、天井や建具・設備等の工場内取り付けを実現し、工場内でユニットをどれほど仕上げられるかを意味する「工場生産化率」の向上に寄与しました。現場施工の工数を従来から約15~20%削減したことにより、職方1名当たりのコスト削減につながりました。同商品の坪単価は50万円台後半に抑え、建物本体価格は2,000万円前後を想定しています。
三井ホームもローコスト戦線に参入~「ナチュラルヒュッゲスタイル」~
三井ホームはこの3月、坪単価を一律60万円とした規格型戸建て商品「NATURALHYGGESTYLE(ナチュラルヒュッゲスタイル)」を発売しました。同商品は「もっと家を楽しむ」をコンセプトに、ミレニアル世代をターゲットに据えています。この世代特有のコト消費ニーズ、省エネ意識の高さからDIY要素のある提案や、3kWhの太陽光発電システム設備を標準搭載としていることなどが特長です。
発売当初は柏エリアでプレセールス価格を33坪、1,980万円に設定し、今後全国展開を予定しています。インテリアは、自然を身近に感じる天然木を採用することでナチュラルに仕上げ、住まい手がアクティブに過ごせるような内と外をつなぐテラスリビングを取り入れています。
新しい試みはDIYスペースの提案で、壁塗装や飾り棚の取り付けなど住宅に自ら手を加えることができます。外観デザインは切妻屋根で四角形を基調としたものに限定されるものの、外壁のカラーバリエーションの組み合わせは31種類を用意しています。
間仕切り壁は自由に配置することができます。そこで、顧客には戸建の設計図面を手渡し、間仕切り壁の場所などを自由に書き込んだり、床や天井の色を決めたりしてもらうことで、家づくりに積極的に参加してもらう仕掛けも予定しています。
構造は同社独自のプレミアム・モノコック構法を採用し、優れた断熱性・気密性能を確保し、ZEHへの対応も可能です。
(情報提供:住宅産業研究所)