ビルダーと一線を画す、大手ハウスメーカーのハイエンド向け住宅商品戦略商品・トレンド,ハウスメーカー,耐震・制震・免震関係,太陽光/省エネ/ZEH関係
2017年は大手ハウスメーカーが相次いでハイエンド向け商品を発売した1年となりました。これまで富裕層をカバーしていたのは、意匠性の高さ、空間やディテールの提案力に特化する個人建築家のイメージですが、、、
大手ハウスメーカーのハイエンド商品はインハウスのデザイナーが設計を担当し、意匠性の高さはもちろんのことハウスメーカーならではの住み心地の良さや上質な住環境を提供することで差別化を図っています。
ハウスメーカーの富裕層向け戦略は全国的に富裕層が増加していることも背景にあります。
NRI(野村総合研究所)の推計によると、2015年時点で1億円以上の資産を持つ「富裕層」以上が121.7万世帯。2013年時点と比較してこの世帯数が20.9%増加しています。資産5億円以上を有する「超富裕層」に関してはその内7.3万世帯に上り、2013年比35.2%増となっています。
この「富裕層」・「超富裕層」の増加要因には、アベノミクスによる株価上昇により保有資産が拡大したことや金融資産を運用している「準富裕層」の一部が「富裕層」に移行したことが考えられます。
大和ハウスが意匠力を集約~「プレミアムグランウッド」
大和ハウスは、17年4月にプロジェクト「プレミアムグランウッド」を始動させました。同社がこれまで培ってきた家づくりの技術を継承しつつ、工業化住宅のプロセスを見直す「脱プレハブ住宅」を掲げ、フルオーダー、自然素材にこだわった木造の一邸逸品家づくりを目指しています。想定している坪単価は120万~170万円です。
ケーススタディハウスとして第一弾は、兵庫県芦屋の六甲山麓の高台に位置する住宅地に「プレミアムグランウッド神戸・芦屋の家」、第二弾は都内世田谷区にて「プレミアムグランウッド世田谷・等々力の家」を建設し、17年12月にお披露目となりました。
世田谷の物件価格は、土地、建物、家具含め2億7500万円に上り、モデルハウスとして活用したのち、18年9月ごろの販売を目指しています。
同商品の特長は、住空間を住宅単体でデザインするだけでなく、外構も含めた総合的な空間を築き上げる「庭屋一如」の考え方です。内装は、日本特有の「侘び・寂び」の空間を演出するため、左官職人施工による土壁や樹齢200年の吉野杉から5%しか採取できない柾目材を天井に使用するなど豪華に仕上げています。
これまで手掛けてきたプレハブ住宅では扱う機会が少なかった「木」や「土」から質の高い資材をセレクトしたことで、上質な空間を造り上げました。また、技術面でも最高級の住空間を提供しています。
木造用の新エネルギー吸収型制震耐力壁「グランデバイス」の採用やU値0.198W/m2・Kの「オールバリア断熱プレミアム仕様」、基礎の内外に発泡系断熱材を配した継ぎ目のない「基礎ダブル断熱」、床下の温熱を利用した新空調補助システム「快適涼暖システム」などで住み心地を向上させました。
当プロジェクトでは「邸別設計・デザイン」を採用し、「グッドデザイン賞」受賞デザイナーなど経験・知識豊富な担当者を専任させています。今後は外部建築家をはじめ「現代の名工」に選ばれる職方などの専門スタッフ体制を構築し、年間10棟受注を目標に据えています。
グループの技術力を融合~パナソニックホームズ「カサートプレミアム」~
2017年10月にパナソニックの完全子会社となったパナソニックホームズはこの4月にパナホームから名称を変更し、再スタートを切りました。同社が2017年4月に発売したハイエンド商品が、パナソニックホームズとパナソニックの技術力を結集した商品「カサートプレミアム」です。坪単価98万円~を想定しています。
同商品の特長の1つが、パナソニックが開発した新概念の快適・新空調「エアロハス」です。この設備の特徴は以下の5点・家じゅう健康快適な温度・部屋ごとの温度調整と室温変動への自動対応・電気代抑制(一般的な全館空調の44%)・カビ対策(1時間3リットルの除湿能力、空調OFF時もダクト内と室内換気継続)・浄化能力は空気清浄機レベル(PM0.5にも対応)エアロハスの採用により、室内はエアコン設置が必要なく、垂壁もないすっきりとした大空間を実現しています。
また、「アルミ樹脂複合サッシS」の採用で断熱性を強化し、5.4mの吹抜けでも上下温度差0.9℃など、快適性を確保しました。さらに耐震性にもこだわっており、工業化住宅業界初の技術を採用した耐力壁「アタックダンパー」により、地震エネルギーの吸収力を大幅アップ。外観は重量タイルや天然石による重厚な外壁とシャープな軒先が特徴です。太陽光発電は屋根になじむデザインの「HITスリム」を採用しました。
「カサートプレミアム」は構造躯体をパナソニックホームズの技術力が、また、住宅設備についてはパナソニックの技術力がカバーするという両社のシナジーにより生まれた商品と言えるでしょう。
(情報提供:住宅産業研究所)