最後の消費増税後に向けて備えておくこと経営・人材育成,業界ニュース,市場動向,ハウスメーカー,リフォーム・リノベーション
前回は、「消費増税前の18年度の市場予測」と「消費増税をフックとした需要喚起はもう始めてもいい」という内容をお届けしました。18年度の消費増税前駆け込みは住宅市場の最後の盛り上がりかもしれません。
19年度以降、住宅市場は縮小するのみ?
人口動態はますます少子高齢化が進み、住宅の一次取得層の中心である20代後半~30代の人口は減少していきます。
人口が減少すれば新築住宅の需要は減りますし、住宅は余ります。新しく建てるのではなく、空き家を上手く活用したり、中古住宅を購入して新築のようにリフォームして住むという選択肢を選ぶ人も増えるでしょう。
また、今の若者は上の年代と比べると所有欲が少なく、一生賃貸でも構わないという考え方も増えると思われます。住宅市場が右肩下がりで縮小に向かうことは避けられないでしょう。
住宅着工戸数は2020年には70万戸台に、その先は中長期的に60万戸、50万戸と減っていくことが予測されます。住宅市場縮小時代に対応するためには、新築住宅以外の事業多角化を本格的に検討すべきかもしれません。
ストック市場の開拓
国ではスクラップ&ビルドの新築市場から、あるものを活かすストック市場へのゆるやかな転換を図り、ストック市場を2025年にリフォームで12兆円、中古流通で8兆円、計20兆円の規模に拡大させる目標を掲げています。
すでに首都圏のマンション市場においては、16~17年の2年連続で中古マンションの成約件数が新築マンションの供給戸数を上回っています。
今年は、エンドユーザーが中古住宅を安心して購入できるようにする「安心R住宅」、中古住宅流通時のインスペクションを促進するための宅建業法改正、「フラット35リノベ」の申請条件の緩和など、ストック流通を後押しするような制度が目白押しです。
ビルダー・工務店のストック事業というと、自社ストック即ちOB客から発生する修繕・リフォームまでに留まっていることが多いです。これからは少し領域を広げて、一般ストック(中古住宅)の流通時に発生するリフォームも狙っていくべきでしょう。
本格的な新築市場縮小期に突入する前に、不動産仲介業の内製化や不動産業者との提携で、中古住宅購入者にリフォームを提案できるようなビジネスモデルを構築しておきたいです。
木造で非住宅を建てる
大手ハウスメーカーは住宅以外でも稼ぐための事業多角化を進めています。その筆頭企業である大和ハウスでは、商業施設や物流施設等の大型建築に強く、その他のメーカーでもゼネコンとの提携、グループ化を進め、総合建築グループへと業態をシフトしてきています。
住宅以外の建築物の受注を強化するビルダー・工務店も増えてきました。その場合、工法は木造が主流になります。
国交省、林野庁では、国産木材の活用を促進するため、中大規模木造建築物に関する構造や防耐火の法整備や、設計・普及の支援を行っています。中大規模建築に活用できる木質系の新素材も注目されています。
山形の木質構造部材メーカーのシェルターでは今年1月、木質系3時間耐火部材「クールウッド」で、国内初の国交省大臣認定を取得しました。
心材となる木材を石膏ボードで囲み、その外側を木材で覆う三重構造の部材で、認定取得によって15階建以上の建物でも木造を取り入れることを可能にしました。
海外ではすでに木造大規模建築に採用されているのがCLT(直交集成板)です。そのトップランナーと言える岡山のライフデザイン・カバヤでは、自社の支店社屋やモデルハウスの構造材としてCLTを取り入れている他、CLTと重鉄の混構造等で中大規模木造の請負受注を取り始めています。
その他、今着すべきことはなにか?
19年度以降の市場縮小期を迎える前に進めておきたいのが、社内体制の再構築です。
ICTやAIの技術開発が進み、社内外のコミュニケーション手段の多様化や、各種書類のペーパーレス化等、様々なシステムを取り入れることで生産性を向上することができます。
政府では労働環境を改善する「働き方改革」を推し進めており、労働時間の短縮とそれを補う生産性の向上は大きな課題です。
社内組織や社員の役割の変更、業務フローの改善等、本格的な市場縮小期の前に、増税前駆け込みで受注・売上が見込める今年度から着手しておくべきでしょう。
(情報提供:住宅産業研究所)