若者世代の住宅取得促進に向けた動きが加速商品・トレンド,資金計画,業界ニュース,市場動向,ハウスメーカー,リフォーム・リノベーション
近年では若者の戸建住宅離れが深刻化していると言われています。この背景には30~40代前半の一次取得層における年収の減少などもあり、地方公共団体は若年層に向けた住宅取得支援の動きを本格化させています。
また、予算の都合上、新築を購入できない若者世帯にとっては既存住宅の購入が候補に挙がりやすく、中古再販事業で成長している企業もあります。今回は若者世代や子育て世帯の住宅取得促進に向けた民間や行政の動向を紹介します。
カチタスがニトリの家具を配置した住宅の販売を開始
若者世代の住宅取得促進に向けた動きとして、大手ハウスメーカーの間では、自社ストックを活用するスムストックがあります。
竣工後の住宅履歴を残しながら、資産価値を維持することが大きな目的で、ハウスメーカーの家を若年世代にも供給していきたい狙いもあります。
また、予算的に手の届きやすい一般の既存住宅に関しては、買取再販を事業の柱としているカチタスや中古マンションに特化しているインテリックスといった企業が台頭しています。
これらの企業の中でもカチタスは戸建の買取再販では最大手で年間3,800戸、マンションを含めると4,400戸の中古物件を手掛けています。
そしてこの事業を更に促進すべく、今年4月、家具販売を主力としているニトリホールディングスと提携しました。この大きな狙いは、家具を配置することで中古住宅をホームステージングして販売することです。
リフォーム後の住宅を販売する際、空き家状態のまま中を見学してもらうのではなく、ニトリの家具を配置することで、見学者に実際の生活をイメージしてもらいやすくなります。
また、消費者は家具が据え付けられた中古住宅を購入することで、家具一式の価格も住宅ローンに含められることも特長です。
この制度はニトリの高級向け家具の購入検討の後押しにもなるでしょう。カチタスの物件は平均価格が1,400万円程です。
今回の提携でリフォームにニトリ製の部材を活用したり、ニトリの物流網を活用したりすることによって、更なるコスト削減効果も見込んでいます。
ニトリはリフォーム事業にも注力し始めていますが、現在のところ施工ノウハウを持っておらずコスト高でも外部に委託している状況です。
今後の売上拡大を見込めるリフォーム事業の成長を加速させるには、自社での取り組みだけでなく、リフォーム事業を先行して展開しているカチタスからノウハウを取り入れることも重要です。
この2社のアライアンスは、双方にとって、今後見据える事業拡大に向けた方針にマッチしたものと言えます。
住宅金融支援機構と地方公共団体が若者子育て世帯を支援
住宅金融支援機構は今年から地方公共団体と提携し、親世帯との同居・近居などを条件に、子育て世帯の住宅取得支援を推進する制度を開始しました。
自治体が設けている住宅関連の補助金を活用する子育て世帯に対し、「フラット35」の金利を一定期間、引き下げるというものです。人口減や高齢化、若年層の流出は、各地方自治体の課題と言えます。
鳥取県は「子育て王国」宣言、島根県はひとり親世帯の移住支援など「子どもの育てやすさ」を前面に押し出した施策を打ち出し、人口減対策に取り組んでいます。
また、住宅金融支援機構との連携により、エンドユーザーの金銭面を大胆にバックアップしつつ、住宅取得にかかる資金面の支援体制も充実させることで、若年層の定住促進を図ります。
その鳥取県、島根県が金融支援機構と共に打ち出した制度では、親世帯との同居や近居の条件を撤廃し、子どもが18歳未満の子育て世帯であれば住宅取得の支援を受けることができます。
これは全国で初の取り組みで、この9月から開始される予定です(8月31日現在)。
鳥取県においては、県産材や県内事業者の活用を促す補助金制度「とっとり住まいる支援事業」を利用することや、子どもが原則18歳未満の「子育て世帯」である世帯が対象となります。
島根県でも地元建材を活用する「木の家ですくすく子育て応援事業」の利用を条件としています。これらの事業を活用した場合、補助金を受けとりつつ、住宅ローン金利は5年間優遇され、さらに長期優良住宅などの条件を満たせば「フラット35S」の制度を利用できます。
鳥取県の「とっとり住まいる支援事業」の2016年度の交付実績は約1000件。うち、子育て世帯の利用は6割と過半数を占めています。島根県の「木の家ですくすく子育て応援事業」の実績は昨年度226件です。
どちらもニーズが高い補助金制度で、今回付与される金利優遇のメリットでさらに同事業のニーズが高まっていくでしょう。
(情報提供:住宅産業研究所)