生まれ変わる空き家事例~高齢者施設・宿泊施設編~商品・トレンド,市場動向
建設業界にとっては東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年が1つの境目、日本の高齢化に焦点を当てると、団塊世代が75歳を迎える2025年が1つの境目と考えられています。現在、政府を中心に医療体制や介護サービスの充実を促進しており、それまでの体制化を目指しています。
空き家から高齢者施設へ
株式会社コミュニティネットは、2014年12月、UR板橋区高島平団地内にサービス付き高齢者向け住宅を開設しました。
UR都市機構の高島平団地26街区2号棟の121戸中、30戸の空室を改修し、サービス付き高齢者住宅「ゆいま~る高島平」へ用途変更。また、2016年4月に2期開設分として5戸、2017年3月には3期開設分として7戸が続き、現在、全42戸に増加しています。
既存の住戸を単身世帯向け住戸に改修したため、1戸あたり43㎡内外の1DK、1LDKと比較的ゆとりのある専有面積となっています。
また、敷地内の隣接した住棟に、生活相談と安否確認サービスを担う生活コーディネーターと呼ばれる生活支援者が日中常駐し随時対応。地域の病院、クリニック、介護事業者とも連携しており、バックアップ体制は万全です。
小池東京都知事は高齢化対策にも積極的に取り組む方針で、「サービス付き高齢者向け住宅の整備」として政策を掲げています。
既に、介護ロボットを活用した先進的な介護施設などの現地視察も行い、現場職員からの声をボトムアップしつつ、サ高住整備や働き手の賃金・労働環境の改善に着手していくようです。
空き家から宿泊施設へ
国土交通省観光庁によると、訪日外国人旅行者数は東日本大震災が起こった2011年の622万人から、2016年はその4倍弱となる2403万人に達しました。
日本政府は3年後の東京五輪年となる2020年に4000万人が目標と発表しており、国内の観光業はますます熱気を帯びてくることでしょう。
2015年における訪日外国人の旅行消費額は総額3兆4771億円。2020年には訪日外国人数が2015年(1973万人)の2倍程度となる見込みのため、旅行消費額は単純計算で7兆円ほどとなります。
ここで懸念されているのが、関西、首都圏を中心とした宿泊施設の不足です。
そのため、現在はホテル建設ラッシュやゲストハウスの増加が起きており、並行して政府が取り組んでいるのが、民泊の体制づくりです。
今回紹介するのは、大阪に本社を置くクジラ株式会社が空き家を宿泊施設に用途変更した取り組みです。同社は賃貸の入居率改善リフォームをメーン事業に、長年空き家になっている物件に対して、リフォームにより価値を高め、入居率改善に取り組んできました。
現在は中古物件の空間プロデュース事業を行っており、不動産からデザイン、建築のリソースをワンストップで提供できる特徴があります。
同社は、2017年6月、大阪市・西九条の住宅街に点在する空き家を宿泊施設として再生、活用するプロジェクト「SEKAI HOTEL」を開始しました。施設運営も同社が担っており、共通の窓口となる「フロント」を設けて、チェックイン業務などを一元管理しています。
フロントは観光拠点としても機能しています。民泊の導入には近隣とのトラブルが懸念されることもありますが、フロントを設置することで安心感を高めているのが特長です。
宿泊客は、チェックインのためフロント施設に立ち寄ってから、それぞれ空き家を利用するフローとなっています。
また、SEKAI HOTELは飲食店、物販店などがそれぞれの空き家に分散していることも特徴です。宿泊客が食事や買い物で街の店舗を利用することで、にぎわいづくりにもつながります。
最寄り駅のJR西九条駅から人気観光スポットであるユニバーサル・スタジオ・ジャパンまで電車で5分という好立地ですが、駅前は空き家が点在していることも影響し、まとまった用地の取得が難しく、再開発が進んでいませんでした。
そのため、同プロジェクトは訪日外国人など旅行客の呼び込みにつながり、街の活性化とホテル不足の解消に寄与しています。
前述の通り、来る2020年の東京五輪に向けて訪日外国人が急増する見通しで、宿泊の受け皿となる民泊のニーズは高まっています。
全国で民泊を解禁する住宅宿泊事業法も6月9日に成立しており、空き家活用の可能性はさらに拡大していくでしょう。
(情報提供:住宅産業研究所)