共働き世帯に向けたプラン提案商品・トレンド,ハウスメーカー
先週は現在日本が抱えている社会問題の一つ、待機児童問題を取り上げました。受け皿である保育所・保育士の数が不足していることが問題ですが、それを必要とする共働き世帯が増えていることが、問題の根本とも言えます。共働き世帯は、世帯構成としてニッチではなくなってきています。厚生労働省の調査によると、、、
専業主婦世帯数が共働き世帯数を上回っていたのは80年代まで。90年代からはほぼ半々の比率で推移し、2000年以降は共働き世帯が専業主婦世帯を完全に上回るようになっています。
2015年の調査では、専業主婦世帯が687万世帯に対し、共働き世帯はその約1.6倍の1,114万世帯。この割合は35年前の1980年とほぼ逆転しています。
家事楽プランから家事シェアプランへ
子育て世代の一次取得層をメインターゲットとするビルダー・工務店では、主婦のニーズを想定し、家事動線などを整えたプラン提案が多く見受けられます。
一方で、大手ハウスメーカーでは、“主婦向けのプラン”ではなく、より世帯年収の高い“共働き世帯をターゲットとしたプラン”が増えてきています。
最近では、主婦が家事を一手に担うのではなく、家族で家事を「シェアする」ことをテーマとした商品が発売されています。
パナホームが昨年7月に発売した「カサート・シェアデイズ」は、共働き・子育て世帯向けに、居心地の良い空間提案と、家事効率化や子育てを支援する機能性をコンセプトとした商品です。
2007年に発表し、同社が登録商標を取っている「家事楽」を共働き世帯向けに進化させた5つのアイディアを提案しています。
「ファミリー収納」はリビングから各自の部屋への動線に配した収納で、家族の部屋着の一時置きや、通勤・通学カバンの置き場として活用することを想定しています。
バスルームの横には、洗濯から室内干しまでの作業をこなし、洗濯物を干しっぱなしにできる洗濯専用ルームの「家事楽ドライピット」を設けることを提案しています。
大和ハウスでは昨年11月に「家事シェアハウス」を発表しました。家事を「分担する」のではなく「シェアする」という発想で、情報とルールを共有して家事を誰でもできるようにする工夫が盛り込まれています。
玄関には「自分専用カタヅケロッカー」を設置し、毎日使う小物を収納したり、郵便物を仕分けして、散らかりがちなリビングに余計なものを持ち込まないようにしています。家族それぞれの荷物を各自が個別管理できるようにリビング・ダイニングにも「自分専用ボックス」を設けています。
子どもの学校からの連絡プリント、ダイレクトメールなどを、ダイニングテーブルに置きっぱなしにしないようにするために、専用収納の「お便り紙蔵庫」の設置も提案しています。
住宅会社も働き方改革を進めるべき?
共働きは住宅を購入する側の世帯だけではありません。住宅会社でも女性の採用が増え、共働きの社員が増えています。
政府が掲げる「一億層活躍社会」の実現に向けて、働き方改革の実行計画の一つとして「子育て・介護と仕事の両立」があげられています。共働きの社員、特に女性社員が働きやすい環境を整えることは企業の今後の大きな課題となってきそうです。
女性の採用と育成に積極的に取り組んでいる住宅会社の一つが積水ハウスです。同社では約20年前の1998年に新卒で初めて女性営業職を採用しました。
2005年からは新卒営業社員に占める女性割合2割を目標に掲げ、女性営業の積極的な採用を開始し、現在は約260名の女性営業職が在籍しています。
女性社員向けの研修制度「積水ハウス ウィメンズ カレッジ」を開講して管理職候補者を育成し、2016年2月時点で女性支店長1名、店長9名が就任しています。
子どもが3歳に達するまでの期間に取得できる育児休暇は2007年から制度化していますが、女性だけでなく、「ハローパパ休暇」の愛称で男性の育児休暇取得も推奨しています。
同社の育児休暇制度の利用者は、男性社員が約4割を占めています。出産・育児で一時的に職場を離れる優秀な女性社員が復帰しやすくするために、また、子育て世代の男性社員も働きやすいように、休暇の取得や在宅勤務などの制度を整えることは、良い人材を集めることにもつながります。
(情報提供:住宅産業研究所)