日本が抱える社会問題~待機児童問題業界ニュース,ハウスメーカー
各種報道では連日、人々の暮らし方に直結する様々な社会問題が取り沙汰されています。長時間労働、所得格差・地域格差、個人情報の取り扱い、食の安全など、その内容は多岐にわたります。
最近では、宅配業者の人手不足による過重労働が大きな話題となり、宅配ボックスを導入する住宅会社が増えてきています。消費者の生活に身近な社会問題は、住宅の商品企画にも反映されます。
少子化、共働き増加で保育所の受け皿が不足
日本が慢性的に抱えている大きな社会問題の一つが少子高齢化です。2016年10月時点の国内の65歳以上の高齢者人口は3459万人で、全人口の27.3%を占めています。
2025年には団塊世代が75歳を超えて後期高齢者となり国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という超高齢社会を迎えると予測されています。
急速に増加する高齢者への対策として、サ高住や特養などの施設の整備が進んでいます。
介護関連事業は今後も需要が拡大するビジネスとして、介護施設の建築請負や運営等に取り組んでいる住宅会社も少なくありません。高齢者の増加と背中合わせの問題が少子化です。
増え続ける高齢者の医療・介護のために膨れ上がった社会保障費を、今後人口が減少する現役世代が負担することとなります。
2016年10月時点の高齢者1人当たりの現役世代人数は2.21人。これが2025年には1.99人となり、高齢者1人を現役世代2人で支える時代が来ることになります。
将来の社会を支える子どもを産み、育てる環境を整えて、少子化を食い止めることは国の課題となっています。
少子化の背景には、現在の若者が未婚化・晩婚化していることもありますが、共働き世帯の受け皿となる保育所が不足していることにより、子どもを産むことに躊躇してしまうという問題もあります。所謂、待機児童問題です。
厚労省では2016年4月時点の全国の待機児童数は2.4万人と発表しました。自治体によって待機児童の定義には差異があるため、潜在的な待機児童はもっと多いと見られます。
少子化が進行しているにも関わらずその預け先が不足している原因は、所得の低下と女性の社会進出による共働き世帯の増加、タワーマンションの林立による都市部への人口集中、保育士の不足などがあげられます。
国では「待機児童解消加速化プラン」を策定し、2013年~15年を緊急集中取組期間として保育所の整備や保育士の確保に取り組んできました。
東京都では、2017年度予算で待機児童対策に過去最大の1381億円を計上し、保育所の整備と保育士の確保を図っています。しかしながら、全国には未だに問題が解消されていない自治体が多いのが実情です。
企業主導型保育事業制度を活用する
待機児童問題の解決策の一つとして、内閣府では2016年4月に「企業主導型保育事業制度」を設けました。
企業が事業所内に設置する保育施設に対し、自治体の認可を必要とせず、国から整備費や運営費などの助成金を支給する制度です。
介護・保育事業大手のニチイ学館では、日本生命と共同でこの制度を利用し、来春までに全国で約100ヶ所の保育所を新設し、1800人程度の児童を受け入れる計画を発表しました。
日本生命では新設する保育所の利用枠の約半数を押さえ、従業員の大半を占める女性営業スタッフに利用してもらうことで働きやすい環境を整え、採用活動を優位に進めることを企図しています。
住宅会社でも女性社員の採用は増えています。事業所内保育所の設置・運営は、従業員の福利厚生と同時に、地域の待機児童問題解消の一助となる新規事業にもなるはずです。
セキスイハイム東海ではこの制度を利用して、2016年12月に事業所内保育所「ひだまり保育園」を開設しました。運営は保育サービスの事業者に委託し、同社の従業員以外の近隣住民も利用できるようにしています。
住宅の取得に関する制度では、若年子育て世代と親世代による同居・近居のための新築取得に対する金利優遇の「フラット35子育て支援型」の新設や、三世代同居の長期優良リフォームに対する補助金の加算など、多世帯同居による家族間の子育ての支援を後押しするような制度が利用できます。
待機児童問題に不安を抱える共働き世帯にも住宅の購入に前向きになってもらうために、このような制度の活用を訴求することも住宅会社の役割と言えるでしょう。
(情報提供:住宅産業研究所)