民間企業や外国で実施している空き家対策事例市場動向
空き家対策は今まで、自治体がメーンに取り組んでいましたが、空き家事業に乗り出す民間企業が出てきました。その一つが有限会社ユニバーサル・ツアーです。同社は国土交通省が主催する平成28年度先駆的空き家対策モデル事業に採択された会社でもあります。
自治体と連携した空き家流通へ向けた取り組み
主要な取り組みは、「空き家を、その借り主が空き家内に放置された私物の整理を条件としたうえで低廉な家賃で貸し出す試行的取組の実施及び、そのマニュアル等の作成」、「この取組を市町村と連携して行い、空き家の流通を図る」とし、空き家流通に向けた取り組みが評価されたようです。
また、自治体と連携することで、空き家バンクの利用向上にもつながる可能性があります。
株式会社ゼンリンも同事業に採択されています。地図製作を主要な事業としていますが、空き家対策にも乗り出しました。2015~16年にかけて、自治体から依頼を受け、空き家調査を実施しました。
しかし、自治体や調査員によって評価にも調査時間にもバラつきが出ていたという課題がありました。
そこで、空き家に対する統一的な調査項目・判断基準作りと活用方法のパターン化を行いました。
これにより、今後空き家利活用に向けた取り組みを実施する上で、全国的に一定の判断を下すことができると考えられます。
空き家バンクを発足したものの、上手く活用できていない自治体も多く存在しています。自治体が民間の仲介技術を利用することも一つの手段と考えられています。
外国でも取り組まれる空き家対策事例とは
空き家について問題意識を持っているのは日本だけではありません。海外へ視線を向けると、米国、英国、フランスにも空き家対策に係る制度があります。
歴史的、社会的背景が大きく異なり、さらには、他の先進国に先んじて人口減少局面に入った日本へそのまま適用することは困難ですが、空き家に対する考え方から日本式にブラッシュアップすることができるでしょう。
米国ではランドバンク(LB)を活用して対応しています。LBは州法で定められる行政組織として自治体に設置されてきたもので、1970年代には多くの自治体に存在し、税金滞納や不良不動産の管理を行ってきました。
ミシガン州では、2003年に固定資産税を一定期間滞納した物件は、裁判所等の手続きを経て、郡のLBの所有とすることができるようになりました。
日本の空き家が増える一因として、更地にすると固定資産税が高騰する懸念があります。個人資産を県や市町村で買取ることは困難なことではありますが、放置されてしまう空き家が増える現状では、このようなことが必要となってくるかもしれません。
英国には、所有者の同意を得た上で地方自治体が空き家の賃貸借を行う仕組みや、地方自治体が強制的に空き家等の住宅を買収する権限が存在します。
前者の所有者の同意を得る仕組みは、後者の強制買収が後ろ盾となって初めて機能するものですが、後者の手続きは地方住宅庁にとって多くの時間と資源を要するという問題がありました。
そうした背景の下、2004年住宅法で「空き家管理命令」が制定されました。
これは、「一定の期間空き家となっている住宅を対象として、地方自治体が、その所有者に代わって、必要な改修を行った上で、住宅を必要とする者にこれを使用する権利を設定し、居住者が支払う賃料を所有者に代わって受領してその中から改修費用を回収する制度」で、前述の任意の賃貸借と強制買収の中間の位置づけです。
日本の自治体の場合、個人資産に手厚く対応することは財政の捻出としても困難でしょう。
フランスには、1998年反排除法により創設された空き家税があります。ただし、これは人口20万人以上で住宅需給に不均衡が存在する市町村で課税されるもので、言わば都市部の住宅難解消の手段と言えます。
課税対象は、過去2年継続して利用されていない空き家で、借り手を見いだせなかった場合や、大規模な工事なくして賃貸できない場合は免除されます。
このほか、崩壊危険建築物制度と衛生危険建築物制度があります。
前者は、自然災害等外部起因の崩壊危険の場合は、市町村が自らの費用で危険を除去し、建築物内部起因の崩壊危険の場合は所有者に命令して所有者負担で危険を除去する制度です。
後者は、非衛生状態の是正が可能と知事が判断した場合には、一定期間内の衛生危険除去命令を発出し、不可能な場合には、最終的居住禁止命令を出し、公用収用措置も執りうるという制度です。
この制度については、日本でも、「著しく保安上危険となり、又は著しく衛生上有害となるおそれがあると認める場合」に「除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他保安上又は衛生上必要な措置」を命ずることができるとされていますが、これより対象と措置の範囲を広げた制度として参考になるでしょう。
海外事例をみると、日本と比べてある条件のもとでは、自治体の個人資産に対する権限が幅広いことが分かります。
固定資産税以外にも空き家税が発生することもあるかもしれません。
最終的に自治体頼みとなってしまうことが多々ありますが、日本でも自治体が個人資産に対して、柔軟に対応できることが求められてくるでしょう。
(情報提供:住宅産業研究所)