人口減少時代で急増が見込まれる空き家の実態とは市場動向
空き家は需要と供給のミスマッチから発生し、供給は住宅ストック数、需要は世帯数及び人口と言えます。かねてより、空き家の増加が問題視されていましたが、2015年実施の国勢調査で国内人口が初の減少に転じ、今後は空き家の増加に拍車がかかることが予想されています。
今回は、その人口と空き家率の関係性を国勢調査や住宅土地統計調査(2013年実施)をもとに検証します。
都道府県別の人口動態と空き家の相関性を検証
人口増減率は国勢調査の2010年実施分と2015年実施分をもとに算出します。
空き家率が高い県は、山梨県17.2%(人口▲3.2%)、愛媛県16.9%(▲3.2%)、高知県16.8%(▲4.7%)、徳島県16.6%(▲3.7%)、香川県16.6%(▲1.9%)です。
上位5県の平均値は空き家率16.8%、人口増減率▲3.34%です。この他にも空き家率が高い地域は中国地方や鹿児島県などで、西日本に集中していることがわかります。
空き家率の低い県は、沖縄県9.8%(人口+3.0%)、山形県10.1%(▲3.9%)、埼玉県10.6%(0.9%)、神奈川県10.6%(+0.9%)、東京都10.9%(+2.7%)です。
山形県以外の4都県の人口は増加しています。下位5都県の平均値は空き家率10.4%、人口増減率は+0.72%であり、やはり、空き家率と人口増減率に相関がありそうです。宮城県の空き家率が9.8%と低いですが、東日本大震災があったため、除外しています。
今後、人口減少に続いて懸念されていることが、世帯数の減少です。
国土交通省によると2020年以降、減少が続くと予想されています。人口が減少に転じても、世帯数がしばらく増加するのは、単身世帯の増加や世帯の小規模化などが進んでいることが要因と言えます。
そのため、今後は延べ床面積の大きい住戸の需要は減少すると見込まれます。空き家の種類にも傾向が出てくるかもしれません。
空き家バンクの実態は?
今後、空き家の利活用を促進していくために、多くの自治体では空き家バンクを発足しています。利用可能な空き家については、その有効活用の支援を目的としています。
空き家の賃貸・売却などを希望する所有者は、空き家バンクに物件内容を登録でき、自治体はその情報を流通させ、利用希望者を探しだします。
自治体としては人口減少をくい止める目的もあり、空き家バンクは、UIターンを図る移住者の受け入れ、定住先を支える手段となります。
また、移住希望の世帯だけではなく、都市と農村といった二つの地域での居住を希望する世帯もまた、空き家バンクから物件を見つけることが可能です。
空き家バンクによる情報流通の促進に加え、空き家改修に補助金を供与し、さらに空き家を借り上げる、といった施策に踏み込む自治体もあります。
都市地域においても、民間借家が空室、空き家として顕在化しています。
大都市では、適切な住宅を確保できない高齢者、母子世帯、障害者などが増えました。このため、高齢者などに民間借家の空き家を供給していく方向性が期待されます。
しかし、家主は、高齢者などの入居を拒む傾向もあります。低所得の世帯には家賃滞納のリスクがあり、家主は、高齢の借家人が亡くなった場合などのケースを案じるでしょう。
このため、高齢者や母子世帯の借家入居を支援する仕組みづくりが新たな課題となりました。
いくつかの地域では、自治体、宅地建物取引業者、賃貸住宅管理業者、NPOなどが組織する居住支援協議会が、借家入居支援に乗りだしました。空き家の実態は地域ごとに多様なので、空き家対策の中心的な役割を果たすのは、現状、自治体となっています。
しかし、自治体単独の施策だけでは、とくに財政面において、空き家対策の拡大と持続が困難になる可能性があります。
また、私有財産である空き家に自治体が関与するには、法制度の整備も必要です。これらの点に関し、国の支援が期待されます。
空き家対策では、自治体が独自の対策をさらに発展させ、国がそれを支える、という枠組みをつくることが大切です。
(情報提供:住宅産業研究所)