住宅会社各社が注目するアジア進出事例市場動向,ハウスメーカー
前回は、アメリカやオーストラリアでの住宅関連会社の海外事業や、住宅以外にも展開する日本企業の海外事例をご紹介しました。今回は、高い経済成長と人口の増加が続く東南アジアなど、アジア地域での日本の住宅関連会社の進出事例をご紹介します。
現地企業と連携し需要を開拓
2016年5月、旭化成は2018年度までの3年間の新中期経営計画を発表しました。
新中期経営計画の中で、旭化成ホームズや旭化成建材が主要事業会社となる住宅領域では、海外事業の推進が実行施策として挙げられました。
海外事業の進出先として、アジア、オーストラリア、アメリカなどの市場を対象にしており、まずは台湾でのマンション開発を検討しているということです。
同社では、海外展開においては、地域の気候や風土、生活習慣を考慮した住宅の供給が必要だという考えのもと、現地パートナーとの事業展開を行っていく方針を取っています。
具体的には、子会社の旭化成不動産レジデンスによるマンションの建て替えや、現地駐在の日本人向けに家具やキッチン、食器などが完備されたサービスアパートメント事業を検討しており、戸建の展開は行わないということです。
旭化成では、住宅領域の海外・シニア事業の合計で2025年度の売上高1,000億円程度を見込んでいます。
経済成長続く東南アジア展開が本格化
近年、住宅会社が新たに事業展開する海外エリアとしては、著しい経済成長を遂げている東南アジア諸国が挙げられます。
東南アジア諸国は、日本から様々な分野の企業進出が相次いでおり、住宅会社各社では、駐在員向けの住宅を供給する会社も増えています。
積水化学工業は、2009年からタイのバンコクで住宅事業展開を行っています。さらに2013年には、タイにユニット住宅の量産工場を竣工しており、タイでの住宅事業を本格的に展開しています。
工場の生産能力は年間1,000棟で、工場見学「ファクトリーツアー」も開催しており、同社の工場生産の強みと短工期を訴求しています。
また、2014年には工場の敷地内に施工研修センターを設置し、自社で本格的な施工を行うことができる技術者の育成も開始しました。
2015年度は戸建住宅と集合住宅で300戸の生産実績を上げており、今後は分譲住宅を強化し、さらなる受注拡大を目指しています。
パナホームは、2016年5月に現地企業と協業し、富裕層向け戸建住宅272戸の建築請負を受注したと発表しました。
これは、パナホームの子会社であるパナホームマレーシアが、現地の大手開発事業者が手掛けるプロジェクトの建築請負を受注したものです。
パナホームがASEAN地域向けに、日本の壁式プレキャストコンクリート構造をベースに開発した「W-PC構法」による建設期間の短工期化や、優れた防水性、安定した施工品質が評価されたということです。
「W-PC構法」を採用することで、レンガ壁を積み上げていくASEAN地域の一般的な工法と比べ、約3カ月の工期短縮が図れるということです。
供給する住宅は、マレーシアの住宅向けに基本となる内装プランと、家事のしやすい動線に配慮した間取りを「リビングデザインパッケージ」として提案しています。
また、パナソニック製の最新のホームネットワークシステムや外出先からでも来訪者を確認することができるビデオインターコムを採用し、安心・安全面を追求しています。
さらに、家全体をきれいな空気にする独自の換気システム「ピュアテック」と、天井断熱を採用し、健康・快適・省エネの設備・仕様も取り入れているということです。
不動産の賃貸・仲介・管理などを行っているスターツグループは、海外22か国、34拠点で事業展開しています。
2006年にタイへ進出し、その後、フィリピン、ベトナム、カンボジア、インドネシア、マレーシア、シンガポール、ミャンマーと東南アジア全域で住宅仲介やコンサルティング事業を行っています。
2018年春にはカンボジアのプノンペンで、スターツグループ初となる海外自社施工ホテルの開業を予定しています。
240室を備えたホテルで、最上階にはレストランやジム、プールなども入るということです。自社施工による高品質な建物や設備とサービスを提供し、他のホテルとの差別化を図っています。
長期滞在する日本人や欧米の駐在員、さらには増加している短期出張のビジネスマンなどの需要も取り込んでいく計画だということです。
(情報提供:住宅産業研究所)