3階はもう低い?縦に伸び続ける多層階住宅商品・トレンド,市場動向,ハウスメーカー
今年3月の国交省の発表によると、1月1日時点の公示地価が8年ぶりに前年比プラスに転じました。そのなかでも商業地と呼ばれる地域の上昇幅が大きくなっています。
一方、住宅地の動向を地域別に見てみると、都市圏では上昇し、地方圏では下降と明暗が分かれる結果となりました。全国的に人口が減少する時代に突入しましたが、都市部では郊外や地方からの人口流入による人口増加が起こっています。
多層階住宅に住むメリットは?
この背景から、都市部の地価は依然として高く、その分敷地が狭くなり、住宅を建てるなら縦に伸ばそうと開発された3階建住宅がもはや、一般的となっています。
現在では更に縦に伸び、多くの鉄骨住宅メーカーが4階建以上の商品を開発しています。多層階専門の住宅展示場が 2012年4月に吾妻橋、2016年1月に板橋区高島平でオープンし、多層階市場はさらなる激化の様相を呈しています。
このように都市部の住宅市場でブームとなっている多層階住宅ですが、消費者のメリットとしては下記のような点が挙げられます。
1)居住スペースの確保~狭い敷地でも縦に伸ばす分だけ、延床面積が大きくなる
2)居住性~建物密集地でも、採光、眺望、通風等を確保しやすくなる
3)多世帯同居~複数の世帯が階ごとに住み分けしやすくなる
4)店舗併用、賃貸併用~「家が稼ぐ」ことでローン負担軽減や老後資金獲得
5)節税対策~賃貸併用、店舗併用による相続税対策が可能
相続税の改定などを背景に、価値の高い都市部の土地を有効活用して不動産収入をねらった賃貸併用住宅、店舗併用住宅などが増えています。
一方で、建設費が高いことや、住民同士の騒音トラブルリスク、テナント、賃貸の空室リスクなど課題は多々ありますが、各メーカーがこれらの対策を打ち出しています。
木造で4階建住宅が可能に~住友林業のBF構法~
住友林業は数少ない木造の多層階住宅「プラウディオ」を商品化しています。木造住宅の4階建の実現には同社独自のビッグフレーム構法(BF構法)が大きく寄与しています。
BF構法は560mm×105mmと断面を大きくすることで高い強度を持たせた集成材「ビッグコラム」を主要構造材とし、構造材に埋め込まれた金属同士のメタルタッチ接合により、構造躯体を強固に一体化させることで、地震や強風など外から加わる力に強い構造になっています。
また、BF構法の大きな魅力は、梁勝ちのラーメン構造を採用しているため、通し柱の制約がなく、柱や壁の位置を各階毎に自由に配置できる点です。
敷地を有効に活用するプランをはじめ、柱や壁の少ない開放的な空間など、高い設計自由度で住まいの夢を叶えます。
敷地形状や暮らし方に合わせて自由に住まいを設計できるという点も魅力です。鉄骨構造と比べ、火災に対する耐久性が課題の木造住宅ですが、同社では火災拡大を食い止める「ファイヤーストップ構造」を訴求しています。
これは、火災時に火の通り道となりやすい壁内と天井裏の間を木材や石膏ボードなどで区画し、上下階間や各部屋間に燃え広がりにくい構造となっています。
万が一発生してしまった火が一気に家全体に広がるのを防ぎ、居住者が避難するための時間を稼げることを目的としています。
このことから、準防火地域、防火地域の3、4階建てにも対応可能となっています。
同社は様々な手法で、木造住宅の品質の向上を図っていますが、鉄骨住宅メーカーから5~7階建の住宅が商品化されている今、どこまで多層階市場で勝負できるかがポイントになるでしょう。
(情報提供:住宅産業研究所)