ビルダー・工務店のリフォーム成功事例~一般客編市場動向,ハウスメーカー,リフォーム・リノベーション
前回は、自社ストックからリフォームを獲得するための、OB客の囲い込みが上手くいっているビルダー・工務店の事例をご紹介しました。ただし、OB客のアフターから発生するリフォームは、設備交換や外壁メンテナンスなどの少額工事が多いものです。
リフォームを事業として確立するためには、OB客以外の一般客からの高額受注を狙いたいです。
高額リフォームは新築並みの提案力が必要
高額受注が取れる大規模リフォームが発生しやすいのは、建替えも検討する築年数の古い住宅であり、断熱性能、耐震性能が不十分な物件も多いものです。
既存住宅の性能向上には国からの支援もあり、長期優良リフォーム推進事業では1戸当たり100万円の補助金が支給されます。築年数の古い住宅を全面改装する場合、価格で比較される設備交換のみのリフォームとは違い、提案内容も比較されます。
そのため、リフォーム専任の設計担当やインテリアコーディネーターを置いて、間取り図やパースでビフォーアフターのイメージをしっかりプレゼンすることが肝心です。これは、自由設計の注文住宅のノウハウに近いと言えます。また、築年数の古い住宅への性能向上型リフォームの提案には、建物診断の技術も必要です。
宮城の北洲では、4つのセンサーと赤外線カメラで測定したデータで壁、天井、床の断熱性能をリアルタイム解析する「JJJ診断」というシステムを活用しています。
断熱性能の実測値を数字やグラフで具体化し、リフォーム後のシミュレーションと比較して示すことで、大規模リフォーム時の断熱改修の受注率を高めています。
大規模リフォームの中でも、特に築年数の古い古民家の再生は、基礎の打ち直しや構造補強などの施工技術のハードルが高い分、高額受注が望めます。愛知の新和建設や福井の永森建設では、古民家再生をリフォーム事業の柱としています。
両社に共通するのは、自社で大工を採用し、熟練の大工の中で育てて、古くからの和風建築の技術を継承している点です。古い建物の良さを活かし、利便性を高めるプランを提案する設計力も古民家再生には必要とされる要素です。
住宅一次取得の選択肢としての中古リノベ
ストック活用事業の1つとして、中古住宅の流通は今後増えていくと見られ、そこに付随するリフォームの需要も増えてくるはずです。
中古住宅を自社で買い取って、リフォームして販売する中古買取再販は、戸建ではカチタス、マンションではインテリックス等の専業業者が強く、ビルダーではフジ住宅が年間1000戸超を手掛けています。
ただし、中古買取再販は仕入れ、値付け、販売といった、不動産のノウハウが必要であり、在庫を抱えるリスクもあります。中古流通に絡むリフォームビジネスでも、中古住宅の仲介にセットで提案するリノベのほうがリスクは少ないでしょう。
中古仲介+リノベの成功事例をいくつかご紹介します。
デグチホームズ(静岡)
2015年11月にリフォームショールーム併設の不動産仲介店舗を開設し、仲介+リノベを強化しています。1000万円以下の中古住宅に500~1000万円のリフォームをすることで、新築の建売よりも少し安く、
戸建住宅を取得できると訴求します。
そのため、仲介店舗には1000万円以下の中古物件情報をピックアップして展示し、その物件を案内する前に、必ずリフォーム設備のショールームを見せて、中古住宅のビフォーアフターをイメージさせるようにしています。
ジョンソンホームズ(北海道)
自社で運営する家具・インテリアショップに来場する、30代後半~40代の独身女性をターゲットとして、札幌市内の利便性の高い立地のマンションを仲介し、リノベの受注を取っています。
このマンションリノベの集客には、セミナーを活用しています。
インテリアショップに来場するターゲット層に対して、店舗でほぼ毎週開催しているセミナーへの参加を勧めます。セミナーの内容は、中古マンションと新築マンションとの比較、住宅ローンの考え方、リノベの施工事例紹介などです。
結婚の予定がない所謂「おひとり様」の住まいとして、新築の分譲マンションを購入したり、賃貸に住み続けるよりも、中古マンションを購入してリフォームするほうが、自分好みの住まいを手に入れることができ経済的であると訴求します。
このセミナー参加者のうち、月に5件は中古マンション購入+リノベの相談に進みます。
希望する立地等をヒアリングして中古マンションを仲介し、1000万円内外の全面リフォームを提案して、年間約60件を受注しているそうです。
耐震性等への不安がある戸建の築古物件に対し、構造には手を付けずほぼインフィルのみのリフォームで新築に近い状態まで一新できる中古マンションの需要は、今後増えると見られます。
マンションストックのある都心エリアでは、リフォームの新規事業として市場の拡大が期待できます。
(情報提供:住宅産業研究所)