電力小売り自由化まで半年で変わる住まい(前編)業界ニュース,市場動向,太陽光/省エネ/ZEH関係
経済産業省は、10月8日、来年4月からの電力小売り自由化に向け、小売電機事業を行う予定の登録企業40社を公表しました。さらに、10月23日には、新たに8社が加わりました。
その中には、大和ハウスグループの大和エネルギーが入っているなど、住宅関連企業も電力小売り自由化を新たなビジネスチャンスと捉え、各社が参入を表明しています。
今回は、電力小売り自由化まで半年を切り、住宅会社がどのような取り組みを行っているか、また、今後、電力・ガスなどのエネルギーの自由化によって、住まいや暮らし方にどのような変化が起こるかを見ていきます。
電力小売り全面自由化までの主な経緯
2000年 大規模工場やビルなど、
2000kW以上を受電する大需要家が電力自由化の対象に
2004年 2000年の基準を500kW以上に引き下げ
2005年 2004年の基準を50kW以上に引き下げ
2014年 改正電気事業が成立
2016年 4月より50kW以下の一般家庭も電力自由化の対象に
電力小売り自由化は、1950年の電力事業再編以来、
各地域に1社ずつ独占的な供給が許されていた電力供給事業を、
どのような事業者でも参入出来るようにしたものです。
新たな事業者の参入によって、サービス競争が起こり、
電力料金が安くなることを目的としています。
2000年以降、段階的に電力小売り自由化への移行措置が取られており、
来年4月以降は、一般家庭向け(50kW以下)の低圧電力も
自由化の対象となり、
その市場規模は7兆円を超えるという試算もされています。
■ 電力小売り自由化に向けた住宅業界の取り組み
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段階的に電力小売り自由化の対象が引き下げられたため、
すでにその恩恵を受けているケースもあります。
大規模マンションなどでは、管理組合が新電力会社と契約、
一括受電し、共用部などの電力料金が低減されている
といった物件も存在しています。
また、賃貸住宅会社では、自社物件の差別化ポイントとして、
電力小売り自由化への取り組みを始めています。
大東建託は、2014年9月に新電力会社「大東エナジー」の設立を
発表し、大東建託グループが管理する賃貸物件向けに
電力供給を行っています。
大東建託では、2012年8月以降、管理物件の屋根上を借りて、
太陽光発電設備を設置し、売電事業を展開していますが、
屋根上で発電した電力は、現在、他の電力会社へと売電しています。
今後は売電先を大東エナジーに切り替えていくということです。
大東エナジーでは、買電した電力に加え、
既存の電力会社から大口購入した電力を確保することで、
他社管理物件よりも安い料金での電力供給が可能となり、
他社との差別化を図ります。
ハウスメーカー系では、
ミサワホームが来年4月を目途に家庭向けの電力販売を、
沖縄県を除く全国で始めると発表しています。
同社の住宅購入者に限定したサービスとして、
顧客との接点を増やすことで、
リフォームなどのリピート受注を獲得する狙いがあります。
ミサワホームでは、住宅購入者を対象とした
年会費無料の会員制サービスである
「ミサワオーナーズクラブ」を運営しています。
現在、ミサワオーナーズクラブには、10万人以上の会員がおり、
専用サイトのマイページでは、
自宅の改修履歴などを確認することが出来ます。
また、会員専用の通販サイトでは、換気扇フィルターなどの
消耗品を購入することが出来るのに加え、
清掃や家事代行などの生活支援サービスの手配をすることも出来ます。
このミサワオーナーズクラブで取り扱うサービスの一つとして、
電気の販売を追加するということです。
電気の販売という日常生活に欠かせないサービスを提供することで、
顧客との接点を増やし、点検や修繕、
リフォームといった提案もしやすくなります。
また、顧客の満足度が高ければ、新築を検討している知人を
紹介してもらえるといったことも期待出来ます。
ミサワホームでは、販売用の電力は市場で調達するということです。
電力料金は、電力会社と同等かそれよりも低めに設定し、
会員が切り替えた方がお得に感じる提案をしていくということです。
(情報提供:住宅産業研究所)