木造建築による非住宅事業(後編)商品・トレンド,市場動向
RC造の建築費が高騰していることもあり、今後は木造の事業施設・商業施設の需要が高まると見られます。前回は木質系メーカーの非住宅分野への取組を紹介しました。
今回は、ビルダー・工務店ができる非住宅分野の可能性を考えてみます。
■ 地域ビルダーが取り組む非住宅事業
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ビルダーでは、ゼネコンを母体とする会社が
公共工事等を請け負っているケースは見られますが、
商業施設等の建築請負を事業として確立させている事例は
まだ少ないです。
非住宅の分野でも、大規模の商業・事業施設の設計・施工ノウハウを
持たないビルダーの場合は、小規模の低層木造建築が
ターゲットとなります。
注文住宅の延長で、地域密着による人脈づくりや口コミから
顧客を開拓し、非住宅へと事業領域を広げられる可能性はあります。
自社の商品に特徴や強みがあれば、
店舗等の商業施設に活かされることもあります。
例えば、デザインを強みとするビルダーでは、
戸建を建ててくれたオーナーが飲食店や小売店を経営している場合、
その店舗を手掛けるケースは少なくありません。
ログハウスのトップランナーである「BESS」のアールシーコアでは、
昨年10月から、ロードサイド型のカフェチェーン
「ジロー珈琲」の店舗の建築請負を4棟受注し、
今後も首都圏郊外の新店舗の受注が予定されています。
アールシーコアが手掛けるログハウスの内外装は特徴的で、
カフェ店舗として他社と差別化できるとして、
ジロー珈琲側からアプローチがありました。
店舗用に新たに部資材を開発することなく、
既存の規格型住宅に使用している部資材を使うことで
コストを抑えています。
木の温かみや自然素材の健康性能を強みとしているビルダーでは、
高齢者・介護施設や保育園の需要があるかもしれません。
業界トップクラスの高断熱住宅を手掛ける長野県の北信商建では、
高齢者や要介護者が生活する施設こそ、
木の素材の温かみや断熱性能が重要であると訴求し、
グループホームやデイサービスの建築請負を
年1〜2棟受注しています。
居住者の満足度が高いため、リピート受注が多いのが特徴です。
■ 空き家対策の用途変更がトレンドとなる?
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非住宅の需要は新築だけではありません。
今後も増え続けることが予測され、
危険な状態のまま放置されている空き家を整備するために、
今年5月から「空家特措法」が全面施行されています。
この制度によって、市町村が倒壊の恐れなどがある空き家を
「特定空き家」と認定すれば、除去や修繕などの指導ができ、
所有者が勧告や命令に従わない場合、
市町村が代わりに強制撤去を執行できるようになりました。
空き家はただ撤去するだけでなく、
リフォームや用途変更によって蘇らせることができます。
今年7月には「住宅確保要配慮者あんしん居住推進事業」の募集が
開始されました。
既存の賃貸住宅を高齢者・障害者などの
住宅確保要配慮者向けの廉価な賃貸住宅に改修する際に、
1戸当たり50万円の補助金が受けられる制度で、
持家や事務所などから賃貸への用途変更の場合は、
補助金の上限は1戸当たり100万円となります。
最近では外国人観光客が増え、
宿泊施設が不足している傾向にあります。
都市部のアパートのシェアハウスやゲストハウスへの用途変更、
ローカルでは古民家の内外装を活かした旅館への
用途変更等の需要があるのではないでしょうか。
これからの住宅会社は、住宅以外の分野も視野に入れた
事業展開を考えるべきかもしれません。
(情報提供:住宅産業研究所)