ユーザーの心をくすぐる“個性派”住宅(後編)商品・トレンド,市場動向,ハウスメーカー
消費増税の反動減により、厳しい状況が続く住宅業界ですが、住宅メーカーは、各社の強みを生かした新商品の開発や新提案を行っています。
住宅メーカー各社が発表した新商品は、子育てや、防災、多層階などのユーザーの的を絞った個性的なものが多数ラインナップされています。
■ 空を楽しむ多層階住宅商品
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従来、ゼネコンの得意分野であった中層住宅の商品開発ですが、
近年は、住宅メーカーによる4〜7階建ての中
層住宅の商品開発が活発化しています。
パナホームは、一昨年に5階建て、昨年位は7階建てを
商品化してきました。
そして今年は、店舗・事務所併用のビューノプロを投入。
柱と梁を強化し、自宅と店舗・賃貸併用、賃貸専用など、
提案の幅を広げています。
また、重量鉄骨ラーメン構造の工業化住宅としては、
日本で初めての6階建てのモデルハウスを
東京都新宿区にある住宅展示場にオープンしました。
このモデルハウスは、
「ペントハウスに住む スカイビュー空間を楽しむ家」
をテーマにし、少し贅沢な二世帯住宅をイメージした
作りになっています。
住友林業では、木造戸建て住宅による4階建ての新商品
「BF−耐火」を発売しました。
従来比1.5倍の強度に進化した大断面集成柱
「ツインボルトコラム」や、新たな耐火仕様の開発により、
最大で4階建ての建築を可能とし、狭小地にも建てやすい点が、
同商品の特長です。
住友林業が従来の「ビッグフレーム構法」で使用していた柱には、
接合部分に金属ボルトを2本埋め込んでいましたが、
より強度を高めるために金属ボルトの数を4本に増加。
使用する木質建材は、強化石こうボードで覆い、外壁や天井、
床などに用いることで、家全体の耐火性能が向上しました。
都市部の老朽化した木造住宅が密集するような地域では、
大規模な地震が起きた際に倒壊や延焼といった
被害が懸念されています。
住友林業では、そのような木造住宅密集地域での
建て替え需要を見込み、初年度に全国で100棟の受注を
目指すということです。
■ 賃貸住宅もテーマを付与し差別化
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賃貸市場においても、
個性的な特長を備えた新商品での差別化が進んでいます。
賃貸住宅の場合は、明確なコンセプトやテーマを打ち出すことで、
他の物件と差別化を図ることができ、
賃貸オーナーの長期的な安定経営をサポートする役割を担っています。
賃貸マンションやアパートの建築を手掛ける埼玉県越谷市の
ポラスグランテックは、30〜40代の単身男性にターゲットを絞った
賃貸商品「ループ」を発売しました。
単身の30〜40代の男性が増えているということに着目し、
働く単身男性のストレスを解消するような「癒し」をテーマにした
賃貸商品の企画・開発を行いました。
単身の30〜40代の男性は、働き盛りであり、
仕事上でのストレスを多く抱えているという考えのもと、
生活の中に4つのプランによる癒しを提供しています。
例えば、「カフェ」プランは、オープンテラスや
キッチンカウンターなどで、ひきたてのコーヒーの香りを
楽しみながら、読書にのめり込む部屋をイメージした
プランになっています。
また、「ショップ」プランでは、洋服や小物をディスプレイして
部屋をセレクトショップのように仕上げたプランです。
この「ループ」の販売価格は、敷地面積320平米、
延床面積485平米の12戸のモデルプランで、
1億580万円。今期は限定5棟のみの販売となるとのことです。
また、同社では、女性向けの賃貸商品である
「ラコント」も販売しています。
「ラコント」は、賃貸募集・管理を手掛けるグループ会社、
中央ビル管理との共同による開発で、「ループ」と同様に
「働き盛りの女性」をターゲットに、
愛着を持って長く住んでもらうことを目的として開発されました。
今回ご紹介したような、自社の強みを生かし
ターゲットを絞り込んだ住宅商品は、
今後も増えていくと考えられます。
住宅業界では各社が断熱性や気密性などの高性能を追求するあまり、
ユーザーにとっては、各社の商品の違いが
わかりづらくなっていると言えます。
インパクトのあるコンセプトやテーマを打ち出すことで、
他の商品と差別化を図ることができ、
ユーザーが住宅会社を選択する際の一押しになることも
十分にありえます。
住まいの性能の高さはもちろんですが、
個性的な新商品を開発・アピールすることで、
今後も厳しくなることが予想される住宅業界を
乗り切る一助になるのかもしれません。
(情報提供:住宅産業研究所)