最近の受注・集客動向(後編)市場動向,ハウスメーカー
前回は、大手各社の決算データをもとに、2014年度の住宅業界を振り返りました。
今回は、各社の決算データに加え、直近の受注・集客実績をもとに、2015年度の見通しを解説します。
■ 大手各社の2015年度予測は?
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まずは、大手各社の販売予測を見ていきましょう。
今年度の戸数・棟数予測を開示している5社のうち、
戸建販売についてはミサワホーム・旭化成の2社が前年比プラス、
大和ハウス・パナホーム・住友林業の3社が
前年比マイナスと予測しています。
5社全体では前年比▲1.6%と、わずかながらマイナスとなっています。
マイナス幅は前年度より改善していますが、前年度の受注伸び悩みも影響し、
2年連続のマイナス予測となっています。
一方、アパートの販売予測は、ミサワホームを除く4社が
前年比プラス予測で、5社全体では+8.1%です。
好調な受注を背景に、大幅プラスとなった前年度を
さらに上回る予測となっています。
次に、気になる各社の受注予測(戸建・アパート合算)です。
開示5社のうち、微減予測のミサワホームを除く4社が、
前年比プラスと予測しています。ただし、プラス幅は各社とも小幅で、
5社全体での受注予測は前年比+4.3%にとどまっています。
また、プラス受注の要因としてはアパートの好調を
織り込んでいる会社が多く、戸建に関しては前年並み、
もしくは前年割れを予測する会社もあります。
各社とも保守的な予測を出している可能性はあるものの、
2014年度の「アパート好調・戸建苦戦」トレンドが2015年度も続き、
戸建受注の早期回復を見込みにくいと考えている
住宅メーカーが多いようです。
■ 4月・5月の受注・集客は?
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それでは、足元の受注・集客状況はどうでしょうか?
大手住宅メーカーの4月・5月受注は、
前年比でおよそ7%のプラスとなっています。
ただし、前年度の実績が▲20%前後と大幅なマイナスであったことを
考えると、7%というプラス幅は小幅であり、
まだ本格的な受注回復には至っていないと言えます。
アパート・富裕層など好調な分野はあるものの、
受注の主力である戸建請負において、
若年層や2,000万円台の層の動きが鈍いことが影響しています。
省エネ住宅ポイントやフラット35S優遇拡大などの支援策も、
まだ一般消費者の認知度が低く、受注回復の十分な後押しには
なっていないようです。
受注の先行指標となる4月・5月の集客は、
会社・エリアにより差があるようで、一部では好調という声も聞かれます。
ただし、全体では前年並みか、前年をやや下回っています。
前年同期の集客が反動減の影響で不調だったことを考えると、
集客が回復したとは言えず、見込み客の絶対数不足が引き続き懸念されます。
しかし、来場したお客様の中身が濃くなっているという情報も聞かれます。
記名・着座・アポなど次のステップに至る割合が上がっているほか、
消費税10%増税や、住宅ローン金利の上昇傾向を見越したお客様も、
徐々に現れ始めているようです。
絶対数不足が問題とはいえ、
具体的な住宅計画を持つお客様が活発に動き始めていると言えそうです。
動きつつあるお客様を確実に捉えるためには、
チラシやホームページなどによる積極的な来場仕掛けで、
住宅購入を考え始めたばかりのお客様に
自社を知っていただくための工夫が必要です。
また、来場いただいたお客様の見込み客化を促すためには、
省エネ住宅ポイント・フラット35S優遇拡大などの支援策や、
住宅ローンの低金利と上昇傾向など「いま建てる」メリットを十分に伝え、
早期決断を促す工夫が必要となるでしょう。
最近は、検討初期のお客様を対象とした家づくりセミナーを開催して
「2015年は建て時である」ことを説明する会社も増えています。
1対1の商談に比べて集客がしやすいうえに、
セミナー後に商談へ至る率も高いようです。
また、足元の受注を確保する一方で、
現状において戸建請負の依存度が高いビルダー・工務店は、
第2・第3の柱を早期に構築することが求められます。
大手住宅メーカーの2014年度決算を見ても、
住宅市場の低迷により減収減益が相次ぐ中、
事業多角化に積極的な会社は増収増益を確保しており、
2015年度予測も強気です。
近年は大手メーカーだけでなく地域ビルダーなどにおいても
「多角化」の動きが見られ、今後は一層重要なテーマとなりそうです。
(情報提供:住宅産業研究所)