持家市場縮小、土地活用は次の一手となるか(前編)【2014年6月23日】
2014.6.23
○●○●○●○ 工務店MBA 最新業界ニュース ●○●○●○● 「持家市場縮小、土地活用は次の一手となるか」(前編) 2013年度の新設住宅着工戸数は987,254戸となり、 リーマンショック以前の08年度水準に迫っています。 とはいえ長期的な傾向で言えば、ピークとなる 1996年度からは4割も減少しています。 今回の回復はアベノミクスにより 景気にやや上向きの傾向が見られたこと、 消費増税への駆け込みや相続税改正など 複数の要因が重なった影響によるものです。 昨年の上半期こそ順調だったものの、 下半期となる10月以降は集客、受注共に 前年を割っているとの声は多く聞かれます。 過去のデータによれば、消費税アップや 建築基準法改正などにより着工が大きく落ちると、 翌年以降も着工が回復せず、 その水準で推移する傾向があります。 今回の消費増税は2段階という点から、 今年度末に向けて再度駆け込みによる 盛り上がりを見せる可能性はあります。 しかしいずれにせよ、消費税10%を迎えるに当たって 市場が一段階萎むことはほぼ確実と思われます。 特に持家市場は晩婚化や未婚化の進行に加えて、 賃金や雇用状況の悪化に伴う先行き不安や 購買力の低下などマイナスの材料が多く、 今後もボリューム減が見込まれます。 他社に負けないだけの競争力を確保して 持家市場で生き続けることももちろん重要ですが、 リスクヘッジとして従来の持家事業のみに縛られず、 新しい事業に目を向けてみることも必要かもしれません。 持家事業に最も近いのはリフォームですが、 現在注目が集まっているのは「土地活用」です。 相続税の基礎控除引下げにより 資産承継が困難になること。 また、年金が老後のセーフティーネットとしての 機能不全を起こしつつあることから、借入によって 相続の負担を減らし、将来に渡って安定的な収入を得る 土地活用への期待は高まりつつあります。 現在ハウスメーカーや地域の有力ビルダーも 土地活用の提案を強めており、持家、リフォームに次ぐ 第3の矢として今後注目すべき事業だと言えます。 ■ 賃貸〜オリジナリティ強め既存物件と差別化図る ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 中小工務店や地域ビルダーが多数を占める 持家市場とは異なり、賃貸市場は大東建託や積水ハウス、 大和ハウスといった大手アパートメーカーや ハウスメーカーが高いシェアを握っています。 賃貸の空室率は全国的に見て上昇しており、 マーケットに対して過剰な数の物件が 供給されているというイメージがあります。 しかしここ最近は、仕様・性能を向上させた物件や 新たな付加価値を提案する物件の登場により、 新たに供給された物件の入居率は高まっています。 具体的な例としては、 例えば遮音に対する取り組みがあります。 ここ3年余りは特に界床の遮音強化が進んでおり、 積水ハウス…L-55仕様の遮音床「シャイド55」 大和ハウス…高強度コンクリート版を採用した LH-50、LL-40仕様の遮音床 大東建託……高遮音床「ノイズレスフロア」、 高遮音階段「ノイズレスステア」 以上のように各社ともアパートで トラブルの元になりやすい音の問題の解消に努め、 入居者満足度を向上させて入居率のアップ、 ひいては土地オーナーへのアピールを強めています。 また、性能だけでなく 入居者に応じた提案も増加してきています。 パナホームは女性入居者を想定したインテリアや 防犯機能を備えた「ラシーネ」を発売。 住友林業はシェアハウスの設計や運営・管理で 実績を持つ企業と提携してシェアハウスを発売しています。 シェアハウスは住民同士のトラブルも多く、運営の難易度は 高いと言いますが、バイク好きが集まるガレージ付き物件、 音楽好きが集まるスタジオ付き物件など、入居者同士で 趣味を共有したいという、りニッチなニーズに応える 物件としても注目されています。 また、入居者が自由に部屋をアレンジできる 「カスタマイズ賃貸」も流行の兆しを見せつつあります。 首都圏で賃貸住宅を手がけるMDIは、 入居時に建具や壁を好みのクロスに貼り替えられるサービス 「オーダーメイドインテリア」を実施。 WEBで壁紙のイメージを自由に選択できるシミュレーターや、 実際に本社で壁紙の展示を行うなど、入居者にとって 利用しやすいような工夫を行っています。 不動産・住宅のポータルサイト「SUUMO」を運営する リクルートも、賃貸物件情報コンテンツにおいて カスタマイズできる賃貸物件を掲載。 壁紙や床材、照明器具、棚板など、設定された メニューから自分好みのデザインを選ぶ 「セレクトプラン」と、細かい箇所まで自分好みに 変更できる「フリープラン」を設定しています。 上記のような提案は都市部に近いエリアで多く見られますが、 一方で郊外では戸建賃貸の人気が高まりつつあります。 単身入居者では敬遠しがちな駅から遠い立地でも、 車の所有が前提になるファミリーならば 立地環境も相まって入居が期待できます。 また郊外は地代が安く 駐車場が広く取れるのも魅力になります。 一見アパート経営には難しそうな立地であっても、 地域のニーズや戸建賃貸など提案次第では 採算が見込めるケースもあり、意外に懐が広いのも アパートの魅力だと言えそうです。 (情報提供:住宅産業研究所)