「2022年を振り返って~業界トレンド編~」商品・トレンド
脱炭素に向けて、高性能住宅の推進が目立った一年
2023年がスタートしました。
今回は2022年の住宅業界のトピックを振り返っていきたいと思います。
2022年は脱炭素に向け、住宅の高性能化に特に焦点が当たった年でした。
2022年4月には住宅性能表示基準の一部改訂があり、断熱等性能の等級5と、
一次エネルギー消費量性能の等級6が新設されました。
10月にはZEH基準を上回る断熱等級6・7が創設され、
2025年には新築住宅での一次エネルギー消費量、
断熱等性能の等級4が適合義務化される予定です。
住宅性能評価基準の改定により、10月には長期優良住宅の認定基準に変更がありました。
他にも、建築物省エネ法及び低炭素建築物の認定基準や、
地域型住宅グリーン化事業などの要件にも変更があり、
総じて求められる省エネルギー性能の基準が引き上げられています。
住宅の高性能化を推し進めるため、国は支援事業を打ち出しています。
2021年の「グリーン住宅ポイント制度」に続き、2022年には「こどもみらい住宅支援事業」が発足。
どちらも高い省エネ性能を持つ建物に対して支援を行うという制度ですが、大きな違いは、
グリーン住宅ポイントは指定の用途のみに使えるポイントでの補助であったのに対し、
こどもみらい住宅支援事業では補助金が給付されるという点です。
また、リフォームにおいては追加工事の対象内容や、
一部の補助単価のアップなど、より使い勝手が良くなっています。
こどもみらい住宅支援事業は予算上限に達して早期に終了しましたが、
その後継にあたる「こどもエコすまい支援事業」も既に決定しています。
同事業では、補助の対象はZEHのみとなっており、住宅性能の更なるボトムアップが見込まれます。
LIFULLが公表した、過去3年以内に注文住宅を建てた
全国の男女500人に実施したアンケートの結果によると、
建築会社を選ぶ際の決め手として最も多かったのは「担当者との相性」(41.4%)で、
それに次いで多かったのが「住宅性能(高気密・高断熱、省エネなど)」(39.7%)
という回答でした。
これまで、性能面のことはユーザーにとっても営業スタッフにとっても内容が難しく、
人を選ぶトピックでした。
それが今では住宅を選ぶ際、住宅性能を決め手としているユーザーは
約4割存在していることとなります。
SDGsなどの環境意識の高まりや国からの支援などによって、
高断熱・省エネ住宅の市場は徐々に温まってきており、
エンドユーザーの中にもその重要さが浸透し始めていると言えます。
2022年住宅商品のトレンド
高性能住宅の市場は温まりはじめ、それに伴いZEHの促進も進んできています。
実際、大手のZEH普及率は高まってきており、積水ハウス、一条工務店のZEH率は既に90%を超えています。
その他のメーカーでも、特にミサワホーム、サンヨーホームズ、住友林業は
2020年度時点の普及率から17~19ptアップと大きく上昇しています。
ZEHの普及と共に、HEAT20やLCCM住宅というワードも注目度が高まってきており、
それらの基準に対応した商品を持つ会社も散見されるようになってきました。
例えばパナソニックホームズや住友林業はLCCM対応の商品を2022年に発売しています。
ユーザーの環境意識が高まり、脱炭素・サステナビリティという面で訴求を図ることは、
住宅業界に限らずこの一年で一般的になったと言えます。
住宅業界のトレンドと言えば、外せないのがやはり平屋です。
2020年から21年の1年で平屋は約9,000棟の増加。
10年前と比較すると約1.8倍に増えており、世帯あたり人数の減少、建築費の高騰、
テレワークの普及により生まれた郊外需要等々、
様々な要因が絡み合い、今後も平屋需要は高いと予想できます。
トレンドが定着しつつある平屋は、集客にも有効なようです。
茨城県のビルダー、アゲルでは、展示場や各SNSの投稿に平屋を増やすことで
コロナ禍以降も集客を確保しました。
それによって平屋の契約率は伸び、2021年度の平屋比率が2割だったのに対し、
2022年度は3割まで比率を高めているということです。
脱炭素の機運から、パッシブ設計に注力する会社も徐々に増えてきているように思われます。
パッシブ設計はプランや付属部材で工夫をする以前に、前提として躯体の高断熱・高気密があります。
高性能住宅の普及を踏まえ、「+α」の提案として
パッシブ設計を選ぶことは理に適っているのかもしれません。
また、平屋ブームの背景の1つにある
「(ストレス軽減のため)屋外空間との繋がりを感じたい」
というニーズは、
「自然の力を利用して快適に過ごす」
というパッシブ設計の思想と通ずるものがあります。
更に、パッシブ設計では日射遮蔽のために深い軒の出が求められるため、
デザイン的にも、流行の平屋との相性が良いと言えます。
埼玉県の大賀建設は東京大学の学生との共同研究を実施。
周辺環境を考慮しながらパッシブ設計を研究し、
2022年4月には同プロジェクトのコンセプトハウスを着工しました。
パッシブ設計は日照時間、卓越風の方向など、
地域の特性を活かすプランニングが重要になるため、
地場ビルダーが生き残る一つの武器にもなり得るかもしれません。
(情報提供:住宅産業研究所)