「2022年度グッドデザイン賞が発表」業界ニュース
住宅会社のプロジェクトが多数受賞、住宅以外も
2022年度10月に公益財団法人日本デザイン振興会から、
グッドデザイン賞(GD賞)が発表されました。
今回審査対象だったのは5,715件で、
そのうち受賞となったのは1,560件。
今年度も多くの住宅会社が参加しています。
住宅会社がこれまでGD賞に応募してきたのは
主に住宅やマンションといったプロジェクトでした。
今年度は建物だけでなく、
住宅会社が自社開発したスマホアプリなども選出されました。
その一つが、旭化成ホームズがグループ会社などと共同開発した
マンション居住者向けアプリ「GOKINJO(ゴキンジョ)」です。
このアプリは居住者同士のコミュニケーションを促すことを目的に、
2020年9月から東京都板橋区にある
全227戸の分譲マンションに導入され、実証実験が行われました。
GOKINJOの主な機能の一つは、「情報交換」です。
アプリ内にはいわゆるSNSやネット掲示板のような機能があり、
ユーザー(居住者)間でチャットすることが可能です。
例えば「近隣のおすすめのスーパーを教えてください」
という投稿があれば、他のユーザー(居住者)から
これに関する情報提供が発生します。
実際に運用したところ、
暮らしに関する話題が多く投稿されているようです。
このほか「お譲り」「お助け」といった機能もあります。
「お譲り」は、家庭で不要になったものを
他のユーザー(居住者)に無料で譲る機能です。
子育て世帯には助かる機能の一つであり、
ベビーカーやベビーベッドといった大きいものから
おもちゃ、絵本などがGOKINJOを通して
居住者間で手渡しされているとのことです。
そして、「お助け」機能は、例えば「物を貸してほしい」という
困りごとの解決を目的としています。
家具を組み立てるための電動ドライバーなど、自分で持っていなくても
居住者の誰かが持っているかもしれないモノの
一時的な貸し借りが生まれているとのことです。
このようなデジタルを活用した居住者間のコミュニケーションは、
コロナ禍における新しいご近所づきあいの
在り方の一つとも言えそうです。
導入から2年が経過した2022年度GD賞受賞時点では、
アプリ月間利用率80%、投稿・返信3,600件と、
持続的なコミュニケーションが発生しています。
この8月には旭化成ホームズがGOKINJO利用者を対象に
アンケートを実施しました。
この結果、満足率89%、
さらに92%が「人に勧めたい」とのことでした。
具体的な回答としては、
「アプリ利用者が入居者のみなので、情報に信憑性があり、安心」、
「アプリが交流場所となっている」と高い評価を得ています。
東日本震災後にオープンした分譲地が「ベスト100」に選出
GD賞に積極的に取り組んでいる1社が埼玉県のポラスグループで、
2022年度は合計11点が受賞となりました。
その中でも「結美の丘/全54邸」は
同グループ初のグッドデザイン・ベスト100に選出されました。
「結美の丘」は、
JR川越線西大宮駅から徒歩7分の立地に54世帯が居住する街です。
販売されたのは2012年春で、
当時さいたま市において初の「景観協定」が策定された分譲地でした。
「景観協定」とは、
街の良好な景観の維持増進に努めることを目的に、
自主的な規制を行うことができる制度です。
屋外への広告物設置禁止や、
かきやさくの構造は生垣とするなど様々な規制が設けられています。
地域住民にとっても、街の景観は共通の財産です。
街並みから地域の魅力を高めることで、生活環境の向上のほか、
にぎわいの創出や地域活性化といった効果も期待できます。
「結美の丘」の特徴の一つは豊かな植栽です。
街を南北に貫く緑道のフットパスや、樹木を沿道に配置して
街区内は視認性の高い「オープン外構」とするほか、
街の外周部は緑で囲う「グリーンベルト」が設けられています。
街が竣工したのは2013年の夏。
当時は街びらきから始まり、園芸のプロが講師となって住民向けに
植栽の管理方法などをレクチャーするグリーンワークショップを、
2年間に亘って計11回開催しました。
現在、共有地の植栽の剪定については、
年4回住民同士が協力して行われているとのことです。
「結美の丘」でこれまで積み重ねられてきた
これらのソフト面での努力は、
他の開発事例においても広く共有すべきものとして
GD賞ベスト100に選出されました。
ポラスグループがこの街で重視したのは、
建物を含む街全体の計画だけでなく、
住民にとっての良好な環境やコミュニティづくりです。
住宅は一般的に竣工した時が価値の最高潮と捉えられますが、
「結美の丘」は住民の手によって育まれ、
この10年間で街の価値をさらに高めたプロジェクトと言えます。
(情報提供:住宅産業研究所)