「昨今の平屋ブームについて」商品・トレンド
平屋ブームの到来 その背景とは
日本では少子高齢化がどんどん加速しています。
総務省の人口推計では、
2021年10月1日時点の
65歳以上の人口は3,621万人。
総人口の28.9%が高齢者となっています。
2021年の合計特殊出生率は
1.30で前年より0.03ポイント落ち込み、
6年連続で低下。
年間出生数も過去最少となりました。
また、世帯当たりの人員も減少してきています。
若者の「恋愛離れ」など
という情報を見聞きすることもあると思いますが、
単独世帯の増加は著しく、
ここ30年で3倍以上に増加しています。
その他、賃金が上がりづらい実態や、
女性でも働き続けて自由な生活を送りたい
という意見の増加から、
夫婦のみ世帯も増加しています。
この少子高齢化と世帯当たりの人員数の減少、
そしてコロナ禍による価値観の変化を背景に、
住宅業界には平屋ブームが訪れています。
建築着工統計によると、
2021年度の居住専用住宅のうち平屋は56,673棟で、
前年から約9,000棟増加しています。
10年前と比較すると約1.8倍に増えており、
2021年度は新設住宅の12.7%が平屋となっています。
全国の中でも九州、四国、北関東は
特に平屋の割合が高く、
九州で32.6%、四国で24.9%、北関東では23.3%です。
また、比率ではなく着工棟数で見ると、
市場規模の大きい愛知や千葉、埼玉、兵庫等でも
1,000 棟を超える平屋着工があり、
首都圏近郊での平屋需要も無視できません。
この平屋ブームにはいくつか要因がありますが、
そのうちの1つが、平屋には階段がなく、
住居内での上り下りが発生しないことです。
これは家庭内事故の発生率を下げることに繋がり、
高齢者だけでなく子育て世代にとっても
メリットと言えます。
2つ目の要因は平屋のコンパクトさです。
子どもの独立を機に終の棲家として
コンパクトな家を求める高齢者、
また、世帯人数が多くないため
部屋数はそんなに必要ないという一次取得者層、
どちらにも訴求力があります。
3つ目は、コロナ禍による
テレワーク普及の影響で生まれた
「郊外などの広い土地で伸び伸びと暮らしたい」
という需要と平屋の相性が良いことです。
郊外の土地は、安い、広い、
隣地との距離が取りやすいといった特長があり、
平屋の建築に適しています。
大手ハウスメーカーの平屋事情
大手ハウスメーカーも平屋を積極的に提案し、
平屋比率を高めてきています。
この背景としては、
資材価格高騰の影響により平均本体価格が
高額化してきていることが挙げられます。
平屋であれば建物のサイズが
小さくなり総額が抑えられるため、
土地の安いエリアなら
施主の予算に合わせての提案が可能になります。
住宅産業研究所の調査を基に、
大手12社(ヘーベルハウス、住友林業、
セキスイハイム、積水ハウス、大和ハウス、
トヨタホーム、パナソニックホームズ、
ミサワホーム、三井ホーム、一条工務店、
タマホーム、ヤマダホームズ)
の2021年度持家着工における
平屋比率を算出したところ、
12社平均では19.9%で、
建築着工統計の12.7%という数値を
大きく上回っていました。
大手の中でも平屋比率が
最も高いのが住友林業です。
上記12社の中では唯一30%を超え、
北関東では約55%、九州では60%を
超える比率となっています。
木を活かした和モダンを基調とする
高級感のあるデザインが
平屋を好む客層にマッチしているものと見られ、
価格優先の顧客よりも、
広い土地を贅沢に使いたいという
志向の客層を掴んでいるようです。
パナソニックホームズ、
積水ハウスも平屋比率が20%を超えています。
パナソニックホームズは
今年7月にLCCMに対応する新商品
「カサートX 平屋LCCMモデル」を発売しました。
同商品は専用エアコン1台で
家中の換気・空調を行う「エアロハス」を
標準搭載し、消費エネルギーを
抑えながら高い居住性を実現します。
高さを抑えた平屋では、
空気環境のコントロールがより計画的に行えます。
また、平屋は屋根面積が大きく、
太陽光パネルを搭載しやすいため、
LCCM等の環境面での訴求とも相性が良いです。
積水ハウスでは、
エネルギー問題との
親和性の高さを訴求することで、
平屋の販売を促進しています。
平屋のフラットな屋根を活かし
太陽光発電を積極的に搭載することでZEHに対応し、
付加価値を高めての訴求を行っています。
平屋好調の影響もあり、
積水ハウスの2021年度
新築戸建ZEH比率は過去最高の92%となっています。
(情報提供:住宅産業研究所)