「SDGs時代の地盤改良工事」市場動向
日本国内ではこの2~3年で、SDGsへの取り組みが加速しました。
住宅業界でもこれまでZEHや住宅のメンテナンスフリー化、
居住者の健康、住み心地の向上などに取り組んできました。
このことを考慮すると、SDGsが浸透する前から
持続可能性を目指した取り組みをしてきたと言えます。
そして、今では多くの住宅会社が自社HP上に
SDGs関連の専用ページを設け、自社の取り組みを紹介しています。
環境、土地への配慮が住宅会社の責務
今回、SDGsに関連して取り上げるテーマは地盤改良工事です。
住宅会社にとっては、
あまり関心度の高くないテーマかもしれませんが、
住宅と切り離すことができない重要な工事です。
さらに近年は、不動産取引時などで過去に施工した地盤改良工事、
言い換えれば「地中の人工物」をきっかけとする
トラブルが起きているのも事実です。
「地中の人工物」を撤去する際の費用を買主、売主、
どちらが負担するかは争点になりやすく、訴訟に発展することもあります。
将来、全国的に増える可能性がある土地のトラブルを未然に防ぐ
取り組みも、住宅会社に求められる責務の一つと言えます。
戸建住宅の地盤改良の方法は3種類に大別されます。
表層改良、柱状改良、鋼管杭です。
いずれの工法においても、
地中に人工物(廃棄物)が残る可能性があります。
表層改良は、一般的にはセメント系固化材を土に混ぜ込み、
撹拌して転圧することで硬質かつ均一な地盤を形成する工法です。
柱状改良では、セメント系固化材と土を攪拌混合し、
柱状に固める方法が多く採用されています。
鋼管杭は文字通り、
鋼管を杭として地中に埋設して建物を支える方法です。
残土・廃棄物ゼロを実現するエコジオ工法
今回紹介するのは、
三重県に本社を置く尾鍋組が
三重大学との共同研究により開発した「エコジオ工法」です。
2010年にスタートした工法で、
累計施工件数は既に2万件以上に上ります。
エコジオ工法の最大の特徴は、「砕石」を用いていることです。
砕石は自然界に存在する材料で地球環境にもやさしく、
環境省によれば、1トンの砕石を生産する際のCO2排出量は、
セメントの100分の1以下、鋼管の300分の1以下とのことです。
さらにこの工法は建物を支えるだけでなく、
液状化対策としても期待できます。
これまで液状化被災地における市営住宅の液状化対策として
同工法が導入されたケースもあり、効果も実証されています。
エコジオ工法に欠かせないのは
地面を掘る際に利用する独自開発の「EGケーシング」です。
このケーシングは
側面に砕石を投入するための窓があることが特徴です。
施工フローとしてはまず、掘削位置に地盤改良をセットした後、
EGケーシングを回転させて掘削していきます。
設計の深さまで挿入した後、
ケーシング側面の窓から砕石を投入します。
そして、先端スクリューの回転により砕石へ圧力をかけ、
地表面まで締め固めれば完了です。
ケーシングが土留めの役割を果たすため、
土が混じることなく、砕石の柱が出来上がります。
エコジオ工法に限らず、
地盤改良の施工時には残土が発生しますが、
尾鍋組はさらに技術開発を進め、
「エコジオZERO工法」が誕生しました。
この「ZERO」は残土が出ないことを意味します。
地盤の状況により、
エコジオZEROが適用できない場合もありますが、
現在、エコジオZEROが8割以上を占めるとのことです。
工期については1物件当たり1~2日です。
セメントを使用する地盤改良などとは異なり、
養生期間も不要のため、
後工程を組みやすいこともメリットの一つです。
また、地盤改良工事の施工不良が度々問題になりますが、
この工法では施工データの管理も徹底しています。
「エコジオ工法クラウドシステム」を開発し、
本部サーバーにて全国の施工データを保存しています。
データ内容は全て暗号化されており、改ざんも防止します。
これまでにエコジオ工法を採用した住宅会社は3,000社以上、
2020年度年間施工件数は約4,000件に上ります。
戸建住宅を中心にアパートなどの集合住宅、
コンビニにも採用されているとのことです。
施工代理店数は2021年5月時点で47社、拠点数は54ヶ所で、
北海道、沖縄、離島以外であれば施工可能です。
運営元のエコジオ工法協会には施工代理店、
三重大学、機械メーカーなどが参加しており、
事務局は開発会社である尾鍋組内に置いています