「基礎工事の課題を解決する新工法が誕生」市場動向
近年、
職方不足や工期短縮などの業界が抱える課題解決を目的とする、
職方の内製化やITシステムによる
効率化を図るソリューションが増えています。
今回ご紹介するのは、
ピトン株式会社が開発した新しい基礎工法
「eLbase(エルベス)工法」です。
基礎工事に関する課題解決を目指して開発が始まったのは、2019年の春。
そして、10件以上のトライアルの後、
2020年10月に正式ローンチを果たしました。
現状、西日本の住宅会社からの反響が比較的多いとのことで、
その背景には当該エリアにおける生コンの単価上昇もあるようです。
型枠に使用するのは「EPS」
eLbase工法は新しい工法ではありますが、
使用する部材の多くは意外と一般的なものです。
従来の基礎工事に使用されるセパレーターや
内装工事などで使われるCチャンネル、EPSなどで、
建築現場で比較的使用頻度の高い材料で構成されています。
これがコスト削減の一因でもあります。
最大の特徴はEPSを型枠として使用することで、
同社ではこれを「eL型枠」と呼んでいます。
独自加工したEPS型枠であり、この特許も取得しています。
基礎施工時に使用されることが多い鋼製型枠よりも軽量で、
非力な人でも扱いやすいことがメリットの一つです。
現場毎にプレカットされた状態で搬入されるため、
職方が現場で加工する必要もありません。
型枠の設置フローとしては、捨てコンの打設後、
墨出しを行い、セパレーターを並べます。
セパレーターにCチャンネルを設置し、eL型枠をはめ込んで完了です。
コンクリート打設については一体打ちを可能としており、
コールドジョイントも発生しないため、品質向上を期待できます。
コンクリート養生後、
eL型枠ははめ殺しとしての仕上がりを想定しており、
従来の鋼製型枠のように片付ける手間も不要です。
このように施工フローを簡素化したため、
技能習得のハードルも格段に低くなりました。
工期は1週間、人工ベースでは
従来のべた基礎工事よりも4割以上の削減が可能です。
eLbase工法は「省施工方式」と「基礎断熱方式」の
2種類の施工方法を用意しています。
前者は基礎立ち上がりの外周部に鋼製型枠、
内周部にeL型枠を施工する工法で、
後者はeL型枠を外周、内周の両面に設置する工法です。
「省施工方式」は、
eL型枠はそれ自体に防蟻処理を施していますが、
それでも不安というエンドユーザーのための工法です。
eL型枠の断熱性能を考慮すれば、内周部だけの施工でも十分です。
さらに「基礎断熱方式」では、
省エネ基準地域区分の1地域にも対応できます。
ベタ基礎時代に布基礎を再提起
eLbase工法はべた基礎、
L型フーチングの布基礎のいずれにも対応していますが、
基本的には布基礎を推奨しています。
布基礎のメリットの一つは、
べた基礎よりもコストを抑えられることです。
布基礎に必要な鉄筋量はべた基礎の40%程で、
コンクリート打設量も同様に70%程度に抑えられます。
地盤改良杭も基礎外周部に限定でき、
耐震等級3を取得するためのコストも布基礎の方が抑えられます。
さらに耐力壁も外壁に配置することになるため、
間取りもより自由にデザインできます。
住宅業界は今のところ、べた基礎至上主義です。
95%以上の住宅会社はべた基礎を採用していると見られます。
もちろん、エンドユーザーに対して訴求しやすいのは
耐久性の高いべた基礎ですが、これが必ずしも必要でないことは
事業者も認識していることでしょう。
これを裏付ける要因の一つが、
地方を中心に増えている平屋需要です。
最近ではDINKSや子どもが一人だけの子育て世帯など
世帯人員が少なくなっており、
同時に住宅に求められる延床面積も小さくなっています。
さらに、施主が高齢になっても住みやすい住宅ということで、
平屋が選ばれやすい傾向にあります。
平屋であれば、布基礎の耐久性でも十分というケースが大半です。
もちろん2階建の住宅についても布基礎で十分カバーできます。
これからの住宅会社は、
敷地状態などを判断材料に布基礎/べた基礎の使い分けや、
改めて布基礎に回帰することを検討すべきかもしれません。
ピトンはeLbase工法の開発スピードを向上すべく、
2020年10月、「eLbaseプロジェクト」をスタートしました。
在来軸組を中心に手掛ける住宅会社をターゲットとする
30社限定のプロジェクトで、企業間の垣根を取り払い、
お互いに技術を持ち寄って課題解決していく
共創型のプラットフォームを目指しています。
(情報提供:住宅産業研究所)