「コロナ以降、戸建需要が高まっている?」商品・トレンド
日本国内で新型コロナウイルスの感染が拡大し始めてから
1年余りが経過しました。
まだ収束したわけではないので、
コロナ以前/以降の比較はできませんが、
消費者の意識は確実に変化してきています。
国交省では新型コロナウイルスの
住まいに関する意識への影響について、
昨年10月にインターネット調査を実施し、
今年1月にその調査結果を公表しました。
その内容から
消費者の住まいに関する意識の変化を見てみましょう。
国交省データから見る住替え意向
コロナ以降に導入が増えている
「在宅勤務」の住まいの環境について、
戸建では64.9%、
共同住宅の持家(分譲マンション等)では56.8%の世帯が
「在宅勤務に専念できる個室がある」と回答しました。
これに対し、共同住宅の借家(賃貸アパート等)では
「個室やスペースがない」という回答が42.5%で、
「個室がある」の34.4%を上回りました。
賃貸より持家、共同住宅よりも戸建のほうが、
在宅勤務に適した環境と考えられています。
「住み替え意向」については、
感染拡大前は「できれば住み替えたい」という
消極的な住み替え意向だった人のうち22.4%が、
感染拡大後は「ぜひ住み替えたい」という
積極的な考えに変わっています。
また、感染拡大前は「できれば住み続けたい」と
住み替え意向がなかった人のうち、感染拡大後は9.1%が
「ぜひ住み替えたい」、16.7%が「できれば住み替えたい」と、
住み替えを検討するようになっています。
住み替えを検討する住宅の形態については、
現住宅が共同住宅・賃貸の人の新築・戸建の希望は、
感染拡大前24.7%→感染拡大後33.3%に増加。
共同住宅・持家の人の新築・戸建の希望は
20.5%→25.0%に増加しています。
これらの調査結果からは、
アパートに住む一次取得層の新築戸建需要が高まっている
と言えそうです。
東京から郊外へ、人口移動と住宅需要
戸建の需要の高まりは、
分譲ビルダーの販売好調という形で
昨年からすでに顕在化していました。
戸建分譲の需要の傾向が表れていることの一つが、
東京都からの人口流出です。
東京都の人口は2020年5月に
1400万人を超えたのをピークに減少に転じています。
住民基本台帳人口移動報告によると、
東京都の人口移動は
2020年7~12月の6ヶ月連続で転出超過となりました。
12月単月の転出者数は29,710人と前年同月比で17.1%増え、
この増加率は47都道府県で最も大きく、
東京都から他県へ人口が流れる動きが続いています。
一方で、東京と隣接する埼玉、千葉、神奈川の3県は
転入超過の傾向が続き、都心から周辺の県へ
人口が流出していると考えられます。
コロナ禍によって都内の密な環境が避けられ、
在宅勤務が定着したことにより
郊外の人気が高まっていると見られます。
ただし、郊外と言っても利便性は求められ、
通勤に使う駅やスーパー、
学校への距離が遠い物件は売りにくいでしょう。
首都圏では、
週に数回の出勤であれば特急指定席で都内に快適に通勤できる、
京急線や小田急線の横浜・川崎以西、
TX線や常磐線の茨城県エリアの駅近物件は動きが良さそうです。
別荘やセカンドハウスの需要も高まっているようです。
静岡県の中古マンション契約件数は昨年7月以降、
多い月では前年同期比で7~9割増と大きく伸びています。
リクルートのSUUMOでは、
千葉県館山市や栃木県那須町の中古物件閲覧数が
コロナ以前から約2倍になっているそうです。
一方で、
都心の狭小建売に特化するオープンハウスの販売も好調です。
通勤時間が短い方が良いという都心の需要もある中で、
マンションとは違って異なる階で
夫婦それぞれがテレワークをしやすく、
新築マンションよりも値頃感のあるオープンハウスの戸建分譲は、
共働き世帯の需要に合致しています。
郊外派と都心派の二極化傾向とも言えますが、
共通するのは価格の優位性で、
アパートから戸建への住み替えにおいては、
それまで支払っていた家賃と同等か
それ以下の住宅ローン月額で買える価格というのが
ポイントでしょう。
アパートから戸建に住み替えることのメリットとして、
「部屋数が増える(広くなる)」、「隣戸への騒音等が少ない」、
「将来的に資産になる」等はどの住宅会社でも同じことが言え、
価格勝負ではローコスト建売に分があるでしょう。
注文住宅を主力としているビルダー・工務店は、
戸建需要が高まっている時こそ、
独自の付加価値を訴求してファン化することで
他社との差別化を図り、受注単価を落とさずに
適正な利益を確保したいところです。
(情報提供:住宅産業研究所)