ハウスメーカーの低価格商品戦略ハウスメーカー
このところ大手ハウスメーカー各社は、セカンドブランドとして、若年のエンドユーザーでも手が届きやすい価格帯の商品を続々と発表しています。
これまでハウスメーカーの1棟当たりの単価は上昇傾向にあり、現在約4,000万円。土地を所有していない顧客であれば、当然建物にかける予算は小さくなり、検討対象からハウスメーカーが外れることが多かったでしょう。また、2019年は「老後2000万円問題」がメディア等で大きく取り上げられ、多くの人々の将来不安を煽りました。さらに、人生100年時代も叫ばれている中で、老後に向けて貯金をある程度残しておきたいという心理がエンドーザーに働いているはずで、ますますハウスメーカー離れが進む可能性が高いです。
今のところ、選択肢からハウスメーカーが外れたエンドユーザーの受け皿となっているのはビルダーです。タマホームや桧家住宅はその筆頭であり、ハウスメーカーを諦めた顧客を上手く捕捉しています。これらの企業は住宅の安さだけでなく、住宅価格を抑えつつも一定レベル以上の住宅性能を確保できる高コスパの住宅を販売しています。今後、顧客がビルダーを選択するという傾向が強まれば、当然ハウスメーカーの受注も減少し続けます。そこで、ハウスメーカーは顧客をキャッチできる低価格の新商品を矢継ぎ早に打ち出しています。
WEBで家づくりを実現
19年11月に大和ハウスが発売したのは、Webサイトを通じて販売する戸建住宅商品「ライフジェニック」です。この商品の特徴は、販売窓口を原則、WEB経由に一本化し、商談を徹底的に省いたことです。ライフジェニックの発売に合わせて開設したのが、Webサイト上で楽しく家づくりをするための「ライフスタイル診断」です。この診断では、住宅購入者の嗜好解析のため、心理テストのような6つの質問を出題します。その結果に基づいて、ライフスタイル判定を行い、外観やインテリアを提案します。
ライフスタイル診断の他、好みのデザインや設備などを選んで家づくりシミュレーションを行う「こだわり条件」も用意しています。「こだわり条件」は、「10の外観デザイン」「5つのインテリアスタイル、水回り設備(キッチン・洗面・トイレは各16種類、バス9種類)」「間取りプラン(89種類)」から選択し、概算価格も示される仕組みになっています。また、インテリアコーディネーターへの相談はオプションで3時間3万円です。構造躯体は同社のメインブランドの1つである「ジーヴォΣ」向けに開発された軽量鉄骨Σ構法を採用してます。また、断熱性能は3層の断熱を施した計132mm厚の断熱仕様「スタンダードV」として、プランによってはZEHも可能とのことです。
企画化やネット活用以外にもコストダウンポイントとして、ライフジェニック専用の住宅仕様の限定が挙げられます。まず、1階の天井高を2.72mまで高くすることが可能なジーヴォΣに対して、ライフジェニックは1・2階ともに2.4mとしました。また、外壁面材には同社独自商材であるNXウォールのみで、外壁表面の一次防水に加え、外壁の内部にも防水を施す独自の「二重防水構造」を採用しています。防水初期保証に関しては、ジーヴォΣの30年に対し、ライフジェニックは15年です。プランに関しては90~110平米と比較的コンパクトなものを中心として、企画型プランを採用していますが、壁や窓位置の変更が可能です。ジーヴォΣの場合、平均3,000万円台を超えてきますが、ライフジェニックの価格は97.72平米で税込1,978万円。プランにも左右されますが税込2,100~2,400万円がボリュームであり、予算が2,000万円台前半の層をターゲットとしています。
調達・物流から見直した木造住宅ブランド
積水ハウスは今年2月から、戸建住宅のセカンドブランドを販売する新会社「積水ハウスノイエ」を設立し、営業を開始しました。これまでは、エリア別に展開していた積和建設グループ17社が、木造住宅事業「積和の木の家」や一般の戸建住宅、マンションのリフォーム事業などを手掛けてきました。この内13社の新築戸建住宅事業の販売部門と人員を、「積水ハウス ノイエ株式会社」に事業分割し、10ヶ所に営業所を新設しました。10営業所以外のエリアに関しても積和建設4社にて受注・施工を行い、沖縄以外では基本的に対応できる体制を採っています。
メインの商品は、これまで販売してきた「パルタージュ」です。18年11月に旧積和建設各社がそれまで独自に運用してきた調達、物流などを全国で一本化し、高性能ながら坪単価55万円~と、高いコストパフォーマンスを実現する商品です。そして2月より、これまで切妻のみだった屋根形状に、新たに寄棟屋根を追加して提案幅の拡充を図りました。性能面については、耐震等級3、断熱等性能等級4、樹脂サッシ+LowE複層ガラス標準、オプションでZEH対応可、省令準耐火構造仕様となっており、品質・機能・価格において「ちょうどいい家」として訴求しています。
(情報提供:住宅産業研究所)