4月の法改正で何が変わるか市場動向
今年4月から、民法と意匠法が改正されます。いずれも明治以来改正されてこなかった現行法が、現在の社会にそぐわなくなってきたため、令和の時代に一部を改正するということで、住宅事業にも関連してくることが少なくありません。
また、働き方改革関連法が中小企業にも適用されるようになります。これらの法改正で注意すべきポイントを紹介します。
民法の改正
民法の改正によって、住宅事業に関わる点で大きく変わるのは、瑕疵担保責任を定めた条項です。改正前の「瑕疵」という文言は使われなくなり、「契約不適合」に改められます。契約不適合は、売買の目的物が「種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき」に、買い主が保護されるという制度です。以前の瑕疵担保責任では「隠れた瑕疵」が要件でしたが、契約不適合責任ではその要件がなくなりました。
例えば新築住宅に雨漏りなどの欠陥があったケースを想定します。改正前は、買い主が契約以前からの欠陥があることを知っていた場合、売り主は瑕疵担保責任を負う必要がありませんでした。改正後の契約不適合責任では、このような場合でも契約の内容に合わないものを引き渡した場合は、売り主が責任を負うこととなります。例えば一部に欠陥がある中古住宅を販売する際には、契約時に取り交わす書類の中に「欠陥があること」を記載していないと、契約不適合となるということです。そのため中古住宅のインスペクションの重要性がより高まるものと思われます。
契約不適合時に対して買い主が取り得る手段も増えます。改正前は契約の「解除」と「損害賠償」の二つの手段だけでしたが、改正後はこれらに加え、「追完請求」と「代金減額請求」ができるようになります。「追完請求」は契約不適合の部分を直してもらうように請求でき、追完請求をしても売り主が直さない、あるいは直せないときに、代わりに代金を減額することができる「代金減額請求」が認められます。これは売り主の過失・無過失に関わらず請求できるようになります。注文住宅の場合は、設計契約をしてから請負契約というケースと、請負契約をしてから細かい仕様決めをして確定図面や見積書を作成するケースが考えられますが、いずれにしてもこれらの設計図書が契約のベースとなります。自社で使用している契約書や帳票類が改正に準拠したものであるかどうかを、今一度確認しておきましょう。
意匠法の改正
改正前は、意匠権として保護される対象は「物品(有体物である動産)の形状や色彩など」に限られていましたが、今回の改正によって無体物である「画像」と、不動産である「建築物」、「内装」も保護の対象となります。改正前も、工業的に量産され流通する組立家屋(プレハブ住宅)は動産であるという解釈で、デザインの一部を部分意匠として登録することはできました。しかしながら、この意匠権を持つ住宅会社が他社にデザインを模倣されたときでも、「施主からの請負であり住宅会社の自社主導ではない」「不動産のため保護の対象外である」として、意匠権侵害を逃れられるケースが少なくありませんでした。
今回の改正により、建物のデザインも意匠権によって保護が厳格化されるということです。意匠権を主管する特許庁では、デザインの力がブランドの構築やイノベーションの創出に寄与し、企業競争力につながるとして、「デザイン経営」を推奨しています。意匠法の改正もこの政策の一環です。住宅業界においても、統一された特徴のあるデザインでブランディングするプロダクトハウスが、商品価値を高められる法改正と言えます。
働き方改革法案の中小企業への適用
昨年4月から順次施行されている働き方改革関連法が、今年4月からは中小企業にも適用されるようになります。建設業については、オリンピックの関連事業などで一時的な人手不足が想定されるため、2024年3月末までの猶予期間がありますが、今から対策を進めておくのに越したことはありません。他業種に比べて労働環境が整っていないと、時間外労働は原則として月45時間・年360時間が上限となります。例外も認められていますが、原則である月45時間を超えることができるのは、年間6か月までとなります。
ただし、単純に休日を増やしたり、労働時間を短縮するだけでは、全体の労働量が減るだけで売上・利益は目減りすることとなります。ITの導入等による業務の効率化や、一部業務のアウトソースによって、従業員の労働時間を減らしても1人当たりの生産性を落とさないような対策が必要です。また、時間外労働の上限ができることで、会社としても従業員としても勤怠管理がシビアになり、未払い残業代を請求される案件が増えると見られますので注意しましょう。従業員の労働時間を適正に把握し管理することが重要となります。
(情報提供:住宅産業研究所)