CEATEC 2019が示す進化する住まい業界ニュース
アジア最大級のIT・エレクトロニクス展示会である「CEATEC 2019」が10月15~18日の4日間、千葉市の幕張メッセで開催されました。従来は家電見本市の印象が強かったシーテックですが、2016年に“脱・家電見本市宣言”を行い、現在はAIやIoTを含めたあらゆる産業の総合展示会という位置づけに変わってきています。2000年に開始されて以来、20回目となる今回のシーテックでは、「つながる社会、共創する未来」をテーマに、海外からの出展者250社/団体を含む、787社/団体が未来の暮らしや社会を提示しました。今回は今年のシーテックに展示されたものの中から、未来の住まいや暮らしに関連するものをご紹介します。
上下水道管、電線がなくても暮らせる住宅
イギリスに本社を置くArm社の日本法人であるトレジャーデータ株式会社は、パートナー企業10社と共に「2030年の豊かな暮らし」を実現するオフグリッド型コネクテッド住宅「OUTPOST(アウトポスト)」を共同出展しました。アウトポストは、パートナー各社が提供する各分野の最新技術をフィジカルとデジタルの両面で融合した住宅システムです。長さが約40フィート(約12m)のコンテナ型の住宅で、都市ガスや電気、水などの既存の社会インフラから独立して生活することができるため、スペースさえあれば山の上等、どこにでも置くことができ、多拠点居住にも対応した、場所を選ばず豊かな暮らしを送る住居空間として提案されています。パートナー企業による水循環システムを標準搭載しており、家庭内での水の利用を最小化することができるほか、水を再利用することで環境面への効果も期待されています。
例えば、シャンプーを洗い流した使用後の水でも汚れを分離することができ、シャワー2回分の水があれば100回分の再利用が可能ということです。さらに、太陽光パネルとLPガスやディーゼル等での創エネルギーにより、循環型エネルギーを実現し、CO2排出低減にも寄与しています。住宅内の照明、家電やEVへのエネルギー自給も可能となり、照明等の操作や設定はアプリ上で行うことができます。また、パートナー企業の各種テクノロジーと5G通信を通じて、複数のデバイスから生活データを高い精度で収集・管理できるということです。トレジャーデータ社では、これらのデータを統合的に管理・分析することにより、豊かで健康的な循環型かつ持続可能な社会の実現を目指しています。
モビリティとリビングの未来を具現化
竹中工務店は、メルセデス・ベンツ日本の電動モビリティーブランド「EQ」と協力して建設した「EQハウス」の模型をシーテックで展示し、住宅と自動車が作り出す未来のライフスタイルを具現化しています。特徴的な模様が施された外壁は、ひし形の穴が開けられた白いアルミ製のパネル全1200枚と、ガラスを二重に貼り合わせて構成されています。1年365日の日照パターンをすべてシミュレーションしたデータに基づき、パネル内部に設けられた調光フィルムの透過度をコントロールすることで、常に最適な日照が得られるようにしているということです。電気自動車用の駐車スペースは室内に設けられており、バッテリーチャージャーが設置されています。
駐車スペースと生活空間を仕切るガラスドアは、EQハウスのコントロールパネルとしても機能し、タッチ操作によってバッテリー残量や航続可能距離といった車両データを確認したり、エアコンの設定温度や照明の明るさ等を設定したりすることができます。また、音声操作にも対応しており、「ハイ! メルセデス」の掛け声でシステムを起動し、タッチ操作と同等のことが行えるということです。EQハウスはAIによる学習機能も備えています。例えば音声操作で「照明を明るくして」と要望し、適切な明るさが得られたと判断したら、スマートフォンの「いいね」ボタンを押すと、AIがそれを学習します。このような操作を繰り返すことで、徐々にユーザーの好みを理解し、その人により合った空間づくりをしていく「成長する家」となっています。
(情報提供:住宅産業研究所)