職人教育待ったなし!技術+αの向上を経営・人材育成
職人の意識向上で紹介受注が増える?
現代の職方には技術だけでなく、施主に対するマナーや挨拶といった礼節が求められています。これは以前から言われていることではありますが、依然として苦慮している住宅会社が多いのが実情です。住宅会社側が協力業者向けにマナー研修といった学習の場を用意しても、学んだ内容が定着しにくかったり、あいさつさえも続かないというケースが散見されます。
お施主様は自身の住宅の工事が始まると、図面が徐々に立体となっていくことが嬉しく感じる反面、ちゃんと工事がされているかを心配する気持ちもあり、複雑な心理状態にあります。毎日のように現場へ向かう方もいるでしょう。そのため、工事が始まると住宅会社の社員よりも工事をしている職方と接する機会が格段に増えることも多々あります。ここで関係性が構築できれば、お施主様は安心して家づくりを職方に委ねることができます。
一方、職方があいさつをせず、お施主様を避けるような行動を取ってしまうと、不信・不安が生まれ、クレームのきっかけになることもあるでしょう。工事中の満足度を向上させるには、工事監督や営業だけでなく、職方も当然重要な要素です。満足度を高めた状態で住宅の引き渡しすることができれば、その後の紹介やリフォーム受注などにつながり、自社の将来的な生き残りにも寄与してくるはずです。職方教育をする上では、まず何のためにマナーやあいさつを徹底するのかを提示し、意識改革をすることが必須と言えます。
また、職方を教育するだけでなく、モチベーションを向上させる機会を設けることも必要です。全体の安全会議の際、マナーや挨拶をテーマに職方向けの表彰制度を作るのも1つでしょう。マナーやあいさつと言った習慣は研修後の短期間で改善されるということはなく、定期的にモチベーションを向上させながら、定着させることが必要です。
自社で大工育成を進めるビルダーたち
周知の通り、大工の数は年々減少の一途を辿っています。総務省の国勢調査によれば、1985年時点で81万人を数えた大工の数は2015年時点で35万人と半数以下にまで減少しました。新設着工戸数が減少しているとは言え、1985年と2015年の住宅着工戸数を大工の数で除すると、大工1人あたりの新設着工は1985年時点で1.5戸、2015年時点では2.6戸と増加しています。近年はプレファブ化やプレカット技術の向上などから住宅1棟を建てるための工数が減少しているとはいえ、大工の高齢化も進んでおり、大工不足はより深刻化するでしょう。
野村総合研究所によると、2030年には21万人まで減ると予測されています。住宅会社としては、将来の大工不足を解消するために新たに大工を探すということも対策の1つですが、自ら大工を育てることも視野に入れる必要があります。家づくりにおいて、大工の技術力が品質を左右することはもちろん、将来的には大工が余っていないという状態も考えられるためです。受注は獲得できても、完工が進まなければ売上が伸びず、引き渡しまでの期間が長ければ顧客が逃げてしまうこともあるでしょう。ビルダー業界では自社で大工を育てる企業が増えてきました。有名なところでは、ポラスグループや三栄建築設計、平成建設が挙げられます。
2017年には不動産出身のケイアイスター不動産が、グループ会社ケイアイクラフトを設立し、大工育成をスタートしました。上記はいずれも広域の大型ビルダーの事例ですが、地域で活躍する住宅会社でも大工育成を手掛けることもあります。埼玉県ふじみ野市の近藤建設は20年ほど前から専属大工の育成を行っています。同社は地元の高卒生を年間2~3名雇い入れ、住宅・非住宅の木造建築の知識を蓄えることを目標とし、教育施設「テクニカルセンター」にて教育します。このセンターで1年間技術を学び、大工技術を習得した後、現場で先輩大工について働きながら技術を高めています。社内で技術を向上するだけでなく、客観的に評価されることもモチベーションの向上には重要と捉えており、国家資格である2級技能士を取得することを推奨しています。
また、毎年8月にはものづくりを子供たちに楽しんでもらう親子大工体験イベントを開催し、地域と交流を持ちながら周辺住民に愛される大工、企業を目指しています。
(情報提供:住宅産業研究所)