平屋商品の訴求ポイントは?商品・トレンド
前回は、住宅着工統計のデータから見て、持家の平均床面積が縮小し、特に平屋の需要が高まっていることを解説しました。持家のおよそ10棟に1棟が平屋で、地域によっては平屋率が20%を超える県は九州を中心に7県あります。
平屋のメリット~総額コスト、防災、メンテナンス…
平屋需要が高まっていることの背景の一つは、高齢者の増加です。総務省の発表では、65歳以上の高齢者人口が3,500万人を突破し、4人に1人以上が高齢者となりました。子どもが独立して広い家が必要ではなくなり、階段の上り下りがいらない平屋は、高齢の夫婦世帯・単独世帯の建替え・住み替えに根強い人気があります。また、若年層の住宅に対する意識も変化してきました。最近では生まれてからマンションで過ごし、一度も階段のある家に住んだことがないという人も増えています。
また、以前は住宅の購入は人生の一大イベントであり、少々無理をしても大きくて見映えもいい住宅を買いたいというニーズは少なくなかったはずです。ところが最近の若年層は見栄を張らず、身の丈に合った実用的な住宅を購入し、住宅以外の趣味や娯楽、子どもの教育に使えるお金を取っておきたいという傾向があります。相対的に価格の安い平屋は若年層の選択肢の一つとなり得ます。平屋のメリットとしては以下のようなことが言えます。
・子育て世帯が坪単価は割高かもしれないが、総額は2階建よりも安い
・階段・バルコニー無し、トイレが一つで済む
・構造的に安定し、台風や地震に強い
・大容量の太陽光発電を載せやすい
・メンテナンス費用を抑えられる
・ワンフロアのマンションライクな間取り
・庭が近く、自然を感じる暮らし
・段差のないバリアフリーな家
特に最近では少子化で子ども1人の家庭は少なくなく、夫婦のみのDINKSも増えています。これまで定番だった、2階建4LDKという間取りを必要としない世帯が増えました。子どもが2人以上いるとしても、今は子どもがリビングやダイニングで勉強する等、共有部分を広く採り、以前のように6畳×人数分の子ども部屋を確保するといった間取りは贅沢すぎるという考え方もあります。
大手ハウスメーカーでも平屋がトレンドに
大手ハウスメーカーでは、販売棟数に占める平屋のシェアが高まってきています。主要なハウスメーカー9社の販売棟数に占める平屋率は、7.8%→9.5%→11.5%→13.1%(2014~2017年度)と高まっています。ハウスメーカーの平均請負価格は年々高まり、3,000万円を超える会社が少なくありません。現在の若年層からは手が届きにくい価格になっていることで、建物の仕様を落とすのではなく、床面積を減らすことで総額を抑える平屋を強化していることも要因の一つです。大手ハウスメーカーで最も平屋率が高いのが住友林業で、2017年度は25.7%、4棟に1棟の割合で平屋を建てています。住友林業では、2階建と平屋の動線の違いや、2階建と同じ部屋数を平屋にした場合の延床面積の違いなどを、図などを用いて視覚的にわかりやすく伝えるツールを揃えています。
ミサワホームの2017年度の平屋率は9.5%。平屋は収納スペースを確保しにくいというデメリットがありますが、ミサワホームでは同社が得意とする「蔵」を平屋のプランにも取り入れ、半地下と小屋裏に「蔵」を設ける3層構造の平屋を訴求しています。多層階を得意とするパナソニックホームズや、都市部を主力エリアとする旭化成ホームズでも平屋を商品化しており、平屋はハウスメーカーの商品開発のトレンドの一つと言えます。需要の高まりだけでなく、2階建よりも工期が短い平屋は、職人不足対策としての生産効率向上の観点からもメリットがあるでしょう。
(情報提供:住宅産業研究所)