注目高まる木造新素材“CLT”商品・トレンド
RC造や重量鉄骨と比較したときのコストの安さや、林業再生のための国産材活用の観点から、公共建築物などの非住宅の木造率が高まっています。
近年注目度が高まっているのがCLT
中大規模建築の構造材として、使える木質系の新建材として、近年注目度が高まっているのがCLTです。
ひき板を繊維方向が直交するように積層接着した厚みのある大きな板で、強度のある構造材として使用できます。断熱材・遮熱材を兼ねるため、そのまま外観や内観に現しで使うことができ、木の素材感が感じられる意匠性も評価されています。
欧米では既にCLTを使った高層建築が施工されています。日本でも13年12月にJAS規格が制定され、16年4月にCLT関連の建築基準法告示が公布・施行されたことで、一般利用が本格的にスタートしている。
国産木材の活用支援制度では、CLTを使用することで補助金の加算や採択の優先が設けられている制度もあります。すでに非住宅の構造にCLTを取り入れている住宅会社も少なくありません。
岡山県のライフデザイン・カバヤでは早期からCLTに取り組み、自社の社屋やモデルハウス、集合住宅の建築請負にCLTを採用しています。今年4月にはCLTを用いた工法を提供するFC「日本CLT技術研究所」を発足しました。
同社が普及を図る「オリジナルCLTコア構法」は、構造体全てにCLTパネルを使うのではなく、部分的に効率よく配置することで、まだ価格が高いCLTの使用量を抑えてコストダウンし、専用の接続金物を用いて簡単に構造計算ができるようにしました。
同構法の普及を図り、3年間で40社程度のネットワークを目指すということです。工場で生産・加工するCLTパネルは、大きな面材のため部材点数が少なく、現場での施工が容易で工期が短縮できるというメリットもあります。
一方で、パネル1枚が重く搬入にクレーンが必要なため狭小地には向かない、厚い木の固まりのため現場で加工・調整しにくい、価格がまだ高い等の理由から、住宅用の構造材として普及するにはまだ時間が掛かりそうです。
現状では住宅よりも中大規模木造建築での利用価値が高いと見られるCLTですが、実験的に住宅の構造材として全面的に活用する事例も出てきています。
アキュラホームが今年5月、神奈川の港北展示場でオープンした新モデルハウス「キラクノイエ」は、外壁と屋根、小屋裏床材に5層構造のCLTを使用しています。
CLTの躯体のみで構造を支えているため、内部は柱や構造壁の無いワンフロアとなっています。内装は構造材をそのまま現しとして、外装はCLTの上に遮熱材とガルバリウム鋼板を施工しています。
モデルハウスは「多様な暮らしの器となる」をテーマとして、小さな3棟の小屋を組み合わせたプランです。アキュラホームでは、この1棟の小屋ユニットを70~80㎡の準規格住宅として販売する計画があります。
CLTの住宅利用の可能性を検証する
SE構法のNCN、ログハウスのアールシーコアを中心に、木材を現しで使用する住宅の普及を促進する「木のいえ一番協会」では、協会内のCLT事業部会の活動の一つとして、CLT低層住宅の実験事業「CLTHUTプロジェクト」を発足し、実験棟を建築して今年6月に公開しました。
NCNが構造設計と専用金物の開発を行い、パネルの生産・加工は銘建工業、現場はアールシーコアのログハウスを施工する職人が担当しました。壁材と屋根材には150mm、床材には210mmのCLTを採用しています。
屋根以外は現しとした内外装の美観を損ねないために、接合金物が表に露出しないように工夫しています。外壁4辺の中央部のパネルで構造を支え、主室の角は二面開放の大きな引き戸とすることで外部デッキとの連続性を持たせ、風雨や日射から外壁を保護するため、2階床と一体の1160mmの深さの庇で周囲を囲むような構造です。階段や玄関ドア、室内ドアもそれぞれ1枚のCLTパネルを削り出して製造しました。
工期は当初の計画よりも長引いたそうですが、こうした改善点の発見は実験棟建築の成果の一つと言えるでしょう。
今後もCLTパネルの経年変化の測定や、室内の熱環境を継続的に観測して、CLTの住宅利用の可能性を検証するということです。
(情報提供:住宅産業研究所)