ZEH標準化まであと2年、普及状況は?市場動向,ハウスメーカー,太陽光/省エネ/ZEH関係
住宅業界は、2020年までの新築戸建て住宅において、年間電力収支ゼロを達成するZEHの標準化を目指しています。現在、目標とする期限まで残り2年を切ったところでもあります。ハウスメーカーはもちろん、地場の有力とされるビルダーの多くは断熱性能、気密性能を独自開発で向上させており、、、
太陽光発電システムを搭載するだけでZEH基準を達成するというレベルに到達しております。一方で、依然としてZEHに着手できていない住宅会社が多く存在していることも事実です。
大手8社の普及率は昨対伸長し、単純計算で平均33%
5月21日、環境共創イニシアチブより2017年度におけるZEHビルダー(住宅会社)のZEH普及実績が公開されました。2020年でのZEH標準化を目標としているため、2017年度時点でのZEH普及率はあくまで参考の数字ではありますが、現在の進捗状況を確認する意味でも重要な数字です。政府が今後のZEH補助事業を思案する上でも、この数字が基準となるということも考えられるでしょう。
5月21日時点で、ZEHビルダー登録件数は6,610件。2017年度普及実績が公表されたのは、3,852件です。残りの2,758件が未報告となっていましたが、これらの普及率公開予定日については6月15日とされています。今回は5月21日時点での情報を参考値として、ZEH普及の現状を分析します。
まず、2017年度のZEH普及実績において1%以上、つまり1件でも受注したZEHビルダーは全体の40.1%。2016年度実績の28.6%から11.5ポイント増となりました。
また、ZEH標準化は50%以上の普及率を指していますが、今回の公表結果において標準化を達成しているZEHビルダーの割合は11.0%でした。2016年度の7.4%に対して3.6ポイント増で着地しています。この数字に関しては残り2年間で100%まで伸ばしていくのが目標ということですが、厳しい状況と言えるでしょう。
また、大手ハウスメーカー8社については、2017年度ZEH普及実績が既に明らかになっています。8社中、普及率1位は積水ハウスで76%でした。16年度においても74%と高い水準を保ち、同社が称するエコファースト企業として十分な実績を残したと言えるでしょう。
そして、2番目に高かったのは、セキスイハイム(積水化学工業)の50%です。ハウスメーカーの中でもいち早く、2000年代初頭から太陽光発電システムの搭載を訴求してきましたが、16年度のZEH普及率28%から大幅増となりました。
大手ハウスメーカー8社の中で標準化を達成したのは、この2社のみです。大和ハウス、住友林業、ミサワホーム、ヘーベルハウス(旭化成)、パナホーム(本年4月よりパナソニックホームズ)は22%~33%の普及率で、三井ホームに関しては10%に停滞しています。
2018年度のZEH補助事業は適応範囲を広く
前述の通り、ZEH普及は徐々に進んではいるものの、2020年でのZEHビルダー(住宅会社)におけるZEH標準化という目標の達成は困難な状況にあると言えます。
要因としては、ZEH建設に対して積極的でないZEHビルダーがまだまだ多いこと(普及率0%がZEHビルダーの59.9%)や、積雪地域や都市部狭小地など、地域によっては太陽光による発電量が不足してZEH基準を達成できないことなどが挙げられます。
2018年度に関しては、上記のような課題を打破すべく、ZEH普及促進策としてZEH認定を受けることができる「広義のZEH」を新たに制定しました。
周知の通り、ゼロエネまではいかないが、再エネ率75%を超える住宅に適用される「NearlyZEH」は以前から用意されていました。NearlyZEHに関しては、寒冷地(地域区分1・2地域)、低日射(日射区分A1・A2)、多雪地域(日射区分A1・A2)(垂直積雪量100cm以上)、に限り補助事業の対象になります。
また、今年度新しく追加されたのが、都市部狭小地向けの「ZEHoriented」です。狭小地の定義を、「北側斜線制限の対象となる用途地域であって敷地面積が85平米未満である土地」と定め、太陽光発電システムの搭載がなくとも一定の断熱性能があれば「広義のZEH」に該当し、こちらも補助対象となります。
また、ZEH建設経験の乏しい中小工務店への救済措置としても設けられたのが、国交省のZEH補助事業にあたる「地域型住宅グリーン化事業」です。補助額は、1件当り上限140万円(ZEH施工経験4戸以上の事業者は補助額1件あたり上限125万円)と手厚く、地域材の活用や三世代同居などにより補助額がさらに加算される制度となっています。
(情報提供:住宅産業研究所)