ビルダー・工務店に足りないのは「安心」の訴求営業・接客,経営・人材育成,資金計画
前回は、ハウスメーカーはビルダー・工務店よりも「安心・信頼」で選ばれているということと、ビルダー・工務店もアフターを充実するべきという内容をお届けしました。省エネ住宅の義務化、ZEH登録ビルダーのZEH普及率50%が目指される2020年に向けて、、、
ビルダー・工務店の住宅性能は向上させざるを得ません。ハウスメーカーとの性能の差が縮まった時に、価格競争力ではビルダーに分があるでしょう。
さらにハウスメーカーからシェアを奪っていくとすれば、ビルダー・工務店に足りないのは「安心」の訴求ではないでしょうか。ハウスメーカーと比べて会社の規模が小さい中小ビルダー・工務店に対しては、倒産の可能性を不安視するエンドユーザーは少なくないと思われます。
10年程前ですが、大手ビルダーの富士ハウスとアーバンエステートが、未着工物件を多く残したまま倒産したことは大きな問題となりました。借入が少なく自己資本比率が高い、利益をしっかり出して内部留保を貯めている、財務体質が良好なビルダーはそれが武器となり、潰れない会社であることをアピールできます。
会社に対する安心・信頼の評判は口コミによる影響も大きく、営業マン等の顧客対応には留意するべきです。OB客に対しても健全に会社が存続していることを示すため、定期訪問やアフター対応だけでなく、感謝祭イベント等で接点を持ち続けることが大事です。
現場の点検・検査で施工品質の安心を訴求する
一生に一度の大きな買い物である住宅の購入者にとって、これから何十年住み続ける家の工事に手抜きは無いか、施工品質は確かかというのも、会社の信頼を左右する大きなポイントとなります。
昨年3月には、秀光ビルドの工事の不具合が週刊誌で報じられたことが話題となりました。秀光ビルドでは信頼を回復するため、同4月から第三者による品質検査を全棟に導入しています。着工から引き渡しまでの10回検査で、検査項目は約200項目・700ヶ所にのぼります。工事の進捗や各工程での検査結果は施主がWEBで確認できるようにして、引き渡し時には検査報告書を提出することで、施工品質に問題がないことをアピールしています。
秀光ビルド以外でも、瑕疵保険の対象となる基礎配筋・構造の検査に加え、防水や断熱の検査のオプションを付ける等、第三者検査を導入しているビルダー・工務店は少なくありません。第三者のお墨付きの検査報告書は自社の施工品質の裏付けとなります。
新築住宅の建物検査を行っている専門業者はいくつかありますが、だいたい基礎配筋から竣工までの10回の検査で、1棟当たり10~20万円の価格設定です。このコストをどう見るかというのもありますが、検査専任の人員を抱えることができる中堅~大手のビルダーでは、第三者にアウトソーシングするのではなく、社内で検査できる体制の構築を進める方向性のところも多いです。
第三者よりも建てた会社が責任を持って検査し、その結果を開示するほうが施主に対して誠実であるという考え方で、職人と現場監督の工事報告に加え、専任の管理部門や役職者によるダブルチェック、トリプルチェックを実施して、写真等の記録をしっかり残し、独自の検査報告書を作成しています。
この社内検査のプロセスを、現場の工程管理や職人への発注システムと合わせてIT化することで、より効率化を図る方向に向かっているビルダーも徐々に増えてきています。
一番心配なのはお金のこと、資金計画で他社と差をつける
住宅購入検討者の家づくりに対する不安として、「自分の収入だとどれくらいの予算で家づくりを考えればいいか」、「無理のない返済計画を立てられるか」といったお金に関する不安は多いものです。この不安を解消してあげることも、会社の信頼につながります。
住宅に住み始めてからの支出は住宅ローンだけではありません。旅行や趣味を我慢しなければいけないような住宅予算の考え方をすると、せっかく家を買ってもその後の暮らしを楽しめません。子どもの教育資金や親の介護資金等、今は必要ではなくても将来的にかかってくるお金もあります。
住宅ローンを軸として、これらのお金の使い方を長期的に計画するライフプランを、商談の初期段階に組み込んでいるビルダーは増えてきています。ライフプランを実施することで、「他の展示場では、自社の住宅のアピールポイントばかりを話し、すぐにプラン提案のアポを取ってきたが、この会社はまだ住宅を契約するとは決まっていないのに、親身になって将来のお金の使い方の相談に乗ってくれた」ということが信頼となり、他社との差別化となってその後の商談を進めやすくなります。
(情報提供:住宅産業研究所)