とりあえずで得た結果の代償営業・接客
ナックの松田です。ある日の夕方、自宅で子どもとテレビを見ていたら、「ピンポーン」とインターホンが鳴りました。宅配便はさっき来たし、1分くらい前に買い物に出た奥さんが、忘れ物でもしたかなと、着の身着のままというか、出かけて帰って来た後、着替えるのめんどくさくて、、、インナーで着ていた、ノースリーブのシャツ1枚姿で何気なく玄関を開けました。その時は、、、この後、震えるようなことが起こるとは、想像もしませんでした。
助けてくださいっ!お願いしますっ!
ガチャっとドアを開けたら、そこには、20代後半くらいの、私服の男性が立っていました。奥さんだと思って開けたので、おわっ!とちょっと面食らった瞬間、、、
「こんばんわ。○○新聞ですが。新聞ってとってますか?」
挨拶を返す暇すら与えられず、矢継ぎ早に質問を受けました。
いや、とってないで・・・くらいまで、言いかけたところで、怒涛のラッシュが始まりました。
「それでしたら、是非、うちの新聞をお願いします!」
いえ、結構で・・・くらいまで、言いかけると、
「そんなこと、言わずにお願いしますっ!」
(間に合っているという意味で、)うちは大丈夫なん・・・くらいまで、言いかけると、
「大丈夫ということは、OKということですかヽ(`▽´)/」
いえ、そうではなく、結構で・・・
「そこをなんとかっ!3ヶ月だけで良いんでっ!」
いえ、結構で・・・
「じゃあ、2ヶ月だけでも良いんで(T_T)」
いえ、それでも、結構で・・・
「ビール1ケースすぐに持ってきますんでε≡≡ヘ(´Д`)ノ」
(取りに行こうとするのを止めながら)あ、家であんまり飲まな・・・
「じゃあ、チラシがたくさん入る12月、1月だけでも良いんで!」
(えっ1年後の話?)そうですか。。。でも、結構で・・・
「とにかく、お願いしますっ!助けてくださいっ!お願いします!」
会話をする間もなく、この流れを、3ループ程、繰り返した後、最後は、、、
「お願いしますっ!助けてくださいっ!」
「ビール1ケースですよっ!すぐ持ってこれますよっ」
「助けてくださいっっ!!!」
が、恐らく、10回くらい。。。トータル、時間にして、20分程。。。その間、、、ほとんど言葉を発せられず、ノースリーブ姿で、開きっぱなしの玄関から、はいってくる寒風にぶるぶる震える私。
「おっなんだ、なんだ」と言わんばかりに、三和土まで、何度も裸足で出てきて、「トーマスやってるよ」と新聞のお兄さんにおすすめする息子。。必死に契約をとろうと、そんなことお構いましの新聞のお兄さん。。。
どうやら、、、朝からずっとピンポンを押し続け、インターホン越しに断られ続け、数少ない直接、話せたのが私だったようで、このチャンスを逃すまいと必死に喰らいついていたようです。
ん~そもそもお断りしようとしていたんですが、この状態では、仮に必要だったとしても、とてもじゃありませんが、契約する気にはなりませんでした。。。
私には、どうしても受けられない理由が・・・
助けてくださいと必死のお願いを、断ることに、少々、胸が痛みましたが、どうしても、受けられない理由が私にはありました。
以前に、いろいろもらえるからと、新聞を3ヶ月契約したことがありまして。その時に、家に、新聞が溜まることを嫌がられ。月に3千円もかける価値があるのか。本当に読んでいるのか。と、毎月、家族から問われ、契約したことを、後悔し、もう物にはつられないと、心に決めていました。
ビール1ケースに若干、心が揺れても、よく考えれば、そもそも、新聞は読みますが、毎日ではなく、たまに、駅売りを180円で買う程度。しかも、読む新聞は今回のお兄さんのところの新聞ではない(汗)
仮にもし本当に、契約するなら、かさばらない、どこでも見れる電子版をお得に読めるなら、考えたかもしれませんが。。。電子版でも購読者が増えれば、新聞社としては、良いのではとも思っても、新聞販売店としては、そうも行かないみたいです。
なんとしても契約をとる代償・・・
販売店の主な収入は、購読料と折込広告手数料。配達部数が少ない店は収入も部数に応じて少なくなりますし、折込を依頼する側としても、出来るだけ多くの人に広告を見てほしいので、購読者数の多い新聞を選びたい、ですから、購読者の確保は、経営に直結します。
つまり、経営者としては、より多く購読契約を確保したい訳ですね。となると、、、自ずと、従業員に課すノルマとそれに対する成果を、望むことになります。
それが、、、何が何でも、とにかくとりあえず契約を、とらなくてはという行動に、つながるのかもしれません。
これは、新聞に限らず、営業をする上では、当然かもしれません。でも、数少ないチャンスに、諦めず喰らいつくのも、わかりますが、相手のニーズや気持ちを、鑑みないでとりあえずで得た結果が、その場は、、、受注確保、ノルマ達成と良い結果でも、そういうケースが続けば、長いスパンで見た時に、顧客の満足度、自社の評判、ブランドに良い影響があるとは考えにくい。
契約して頂く目的意識は、持つべきでも、契約までの手段が、自社にもたらす「影響」、「結果」を短期的、かつ、長期的にとらえ、営業行為に考慮することができれば、お客様への対応にも自ずと、反映されるのではないでしょうか。