住宅ストック利用促進に向けて~2017年住宅業界ニュース業界ニュース,市場動向,ハウスメーカー,リフォーム・リノベーション,耐震・制震・免震関係
2017年、地方圏を中心に展開している中古住宅再生事業の最大手カチタスが東証一部に上場したことが話題となりました。国の動きとしても、住宅ストックの活用推進を目的とした支援事業や体制づくりが加速しています。2018年は、中古やリフォームを取り扱う仲介業者を対象にした税優遇制度を設けるなど、リフォーム業界に追い風を吹かせており、市場拡大が期待されます。
お墨付き既存住宅「安心R住宅制度」が始動、既存住宅の価値見直しへ
国交省は2017年12月より、「安心R住宅」の事業者団体の登録受付を開始しました。安心R住宅の目的は、エンドユーザーが既存住宅に対して抱く「不安」、「汚い」、「わからない」というマイナスイメージを払拭し、既存ストックの流通を促進させることです。
住宅の買い物は一生の買い物であり、エンドユーザーにとって住宅会社の選定は大いに悩むところです。これが既存住宅の購入となれば、今までどんな人が住んでいたのか、水廻り設備はちゃんと使えるのか、地震が発生しても大丈夫かなど、気になる点は多くなります。
「不安」を払拭するには
(1)耐震性の付与…
昭和56年の5月以前に着工した住宅、つまり新耐震基準以前の住宅には事前に耐震診断や耐震改修を実施し、広告する前に耐震性を確認することが必須です。
(2)構造上の不具合
・雨漏り…
対象となる住宅に対してインスペクションを実施し、構造上の不具合及び雨漏りが認められず、購入予定者の求めに応じて既存住宅売買瑕疵保険を組めることも条件です。ユーザーが既存住宅を購入する上で基礎的な品質を確保し、購入後に関しても安心して住まえることが目的です。
「汚い」を払拭するには…
「リフォーム」が必要となります。住宅の状態、築年数などによって手を付ける部位が変わることはもちろんですが、ユーザーの主観によって「汚い」感覚が異なることは留意すべき点でしょう。
「わからない」を払拭するには…
「わかりやすい」を実現するには、設計図書、適法性に関する情報、認定、住宅性能評価など建築時の情報や竣工後の維持管理の履歴に関する情報、保険や保証に係る情報など既存住宅に関する情報が必要です。
「安心R住宅」制度は、インスペクションの実施や情報の開示などの条件を設けている点で購入検討者目線の制度と言えます。とはいえ供給業者にとっても、既存住宅を販売しやすくなる要因に成り得ます。
将来的には、安心R住宅の取得が、既存住宅の売却条件とすることもあるかもしれません。
民泊ってどうなったの?外国人観光客7人に1人が利用
2017年の民泊業界は、大手メーカーの住友林業やミサワ、EC大手の楽天などの大企業が参入するという報道が続き、注目を集めました。マンション・戸建問わず、1戸単位からスタートできる事業のため、参入障壁が低いことも要因でしょう。
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観光庁は、2017年7月~9月における外国人旅行者の日本滞在中の宿泊施設利用動向を発表しました。
観光客に限定すると、最も利用率が高いのは「ホテル」で78.1%。次点で「旅館」が21.9%、3番目に「民泊」で14.9%となっています。
この「民泊」利用割合の数字は、約7人に1人に当たり、日本では2016年にスタートしたばかりの「民泊」ですが、既に一定のシェアを獲得していることが分かります。
年齢別構成比では、20代以下が61.3%、30代以上が38.8%の利用率となっており、比較的若年層からの需要が高まっています。
一方、民泊需要の高まりに影響を受けているのがホテル業界です。一時は急増する外国人旅行客に対して、ホテルの客室戸数が不足することも想定されていましたが、様相が変わってきました。
2020年東京五輪に向けて、首都圏を中心にホテル建設ラッシュを迎えていますが、もしかしたら余るのではという声が出ているほどです。
確かに、東京五輪の開催期間を想定すると、日本に連泊する外国人にとって民泊は複数人で借りることで、ホテルより出費を抑えられます。
また、宿泊場所を拠点に首都圏の競技会場を回ることができるため、民泊需要の方が優勢かもしれません。
2018年は、6月に住宅地でも民泊の営業が可能となる住宅民泊事業法が施行される予定です。今後、民泊が促進することで、近隣問題を含め功罪様々な事柄が発生するでしょう。民泊条例により、規制が強まることも想定されます。
しかし、住宅ストック活用という観点で民泊は有用であり、この可能性をさらに模索していきたいところです。
(情報提供:住宅産業研究所)