16年度の建売住宅市場市場動向,ハウスメーカー
先週は、株式会社住宅産業研究所のデータを元に、2016年度の住宅市場の勢力図の変化について見てきました。今週は同じデータベースから、建売住宅の市場について見ていきます。
建売分譲住宅着工棟数ランキング
1.一建設10,500棟
2.アーネストワン10,400棟
3.飯田産業7,000棟
4.アイディホーム4,600棟
5.タクトホーム4,100棟
建売分譲住宅の着工棟数ランキングは、飯田グループが上位を席巻しています。6位の東栄住宅まで、上位6社を飯田グループが独占している状態です。
6社合計は、着工ベースで40,250棟、販売ベースで38,178棟(飯田ホールディングスIR資料)。住宅情報館等のグループ子会社の棟数も合わせると、グループ全体の戸建棟数は41,000棟を超えます。16年度の全国の建売住宅の着工戸数は13.9万戸なので、そのうちの29%を飯田グループが占めることとなります。
この他にも、飯田グループを出自とするホーク・ワンやファースト住建もランキング上位に入ります。販売を任せることで販売手数料の旨味を持たせて、不動産業者を囲い込んで土地情報を集め、短工期で次々と建てて安く販売していく飯田グループのビジネスモデルが、現在の建売住宅市場を席巻していると言えます。
6位以下のランキングを見ると、7位は埼玉のポラスグループで2,200棟。地域密着で街づくり型分譲のポラスグループは、飯田グループとは別のビジネスモデルで一つの結果を出しています。
ハウスメーカーで最高位は8位の大和ハウス。マンションや資産活用も得意とする同社は、不動産での強さが建売でも活きていると言えます。
都道府県別No.1掌握図
都道府県ごとに建売分譲住宅棟数のランキングをつくり、各県の1位をどこの会社が取ったかを見ると、飯田グループのビルダーが47都道府県のうち26都府県で1位となり、過半数を占めています。
アーネストワンが11県、一建設が10県で1位となっています。地元勢が飯田グループを退けているのは、栃木のグランディハウス、京都のエルハウジング等。
またこの住宅産業研究所の統計では、建築条件付きの売建ては「建売」には含まれないため、売建ても含めた「分譲会社」としての勢力争いでは、飯田グループに負けていない地元勢がいるエリアは他にもありそうです。
特に首都圏で圧倒的な強さの飯田グループですが、その中でも局地的に見れば、他の会社が強いエリアもあります。
東京都区内では狭小地3階建に特化するオープンハウスの強さが目立ちます。ここ数年の棟数・売上の伸びは飯田グループ以上の勢いです。
利便性の高い立地のマンションと比べると割安に、狭くても戸建を持てるという切り口でオープンハウスが供給する建売物件は、DINKS等の若い層の需要を捉えています。渋谷に開設したショールームの集客力も高く、今後は名古屋市でも同様のビジネスモデルで、他社が攻略できていない市内中心部を開拓していきそうです。
越谷や浦和等、埼玉県の一部で飯田グループ各社よりも高いシェアを取っているのがポラスグループです。飯田グループと競合するエリアで、販売価格はポラスの物件のほうが500~1,000万円は高いですが、市場分析に基づいた絶妙な値付けで、街づくりで付加価値を付けて、完成前に売り切る物件が少なくありません。ポラスグループのビジネスモデルは一つのヒントと言えます。
全国で勢力を拡大する飯田グループは、エリア内の物件数自体が多く、価格は何処よりも安いため、勝つのは難しいように見えます。
一方で、エンドユーザーが建売分譲に求めるものは価格だけではありません。他社の物件より価格は高くても、それに見合った付加価値があれば、選んでもらうことができます。
建売分譲を企画するときには、ユーザーが何を求めているかを改めて考えてみてください。
(情報提供:住宅産業研究所)