住宅宿泊事業法案(民泊新法)成立業界ニュース
6月9日、一般住宅を利用し有料で客を宿泊させる「民泊」の営業基準を定めた住宅宿泊事業法、いわゆる民泊新法が成立しました。政府は、東京五輪・パラリンピックが開催される2020年までに、訪日外国人旅行者数を、2015年の1,974万人から4,000万人に増やすという目標を掲げています。しかし、、、
既存の宿泊施設やこれから建設される予定の施設を含めても都内近郊の客室は不足することが予測されており、その解決策として民泊が注目されています。
民泊サービスの普及と民泊新法成立の背景
日本での民泊サービス普及のきっかけとなったのが、インターネット上で旅行者と部屋の提供者をつなげるサービス「Airbnb(エアビーアンドビー)」です。
エアビーアンドビーは、2008年に米国で設立され、2014年に日本法人が設立しました。
訪日外国人旅行者数が年々増加していった影響もあり、エアビーアンドビー経由で民泊を利用する人が増えていきました。
しかし、日本では宿泊料を受けて人を宿泊させる営業には、旅館業法上の許可を得なければならず、多くの民泊事業者(部屋の提供者)が違法な状態で営業をしていたため、事業者が摘発される等のトラブルにつながるケースもありました。
そこで、東京都大田区では、2016年に国家戦略特区の特例を利用し、全国で初めて民泊を合法的に解禁しました。
さらに現在までに大阪府、大阪市、北九州市、新潟市でも民泊条例が制定されており、今後も特区民泊は拡大していくと予想されます。
一方で特区民泊は、条例で定められた地域でのみ許可されたものであることや、旅館業法上の「簡易宿所」としての許可を得るにはフロントの設置義務がある等、個人が民泊事業を開始するにはハードルが高いものとなっていました。
急増する訪日外国人旅行者の宿泊施設を確保するためにも、民泊サービスをより普及させる必要があり、民泊の規制緩和が行われ、民泊新法が成立しました。
参入障壁低下も民泊新法の中身
民泊新法が成立し、来年初頭にも施行される見通しと言われていますが、これにより一定の条件を満たせば、従来の国家戦略特区の特例を利用した特区民泊だけでなく、全国で民泊ビジネスを始めることが可能となります。
また民泊新法では、民泊事業者だけではなく、民泊施設の管理業者や仲介業者に対しても関連省庁への登録や事業遂行のための義務を課す制度が創設されています。
主な概要は以下の通りです。
【~住宅宿泊事業者に係る制度の創設~】
・住宅宿泊事業(民泊サービス)を行おうとする者は、都道府県知事への届け出が必要
・年間提供日数の上限は180日、地域の実情を反映する仕組み(条例による制限)を導入
・住宅宿泊事業の適正な遂行のための措置(衛生確保、騒音防止の説明等)を義務付け
・家主不在型の事業者の場合は上記措置を住宅宿泊管理業者に委託することを義務付け
【~住宅宿泊管理業者に係る制度の創設~】
・住宅宿泊管理業を営もうとする者は国土交通大臣の登録が必要
・住宅宿泊管理業の適正な遂行のための措置(住宅宿泊事業者への契約内容の説明等)と、
事業者から委託された住宅宿泊事業の適正な遂行のための措置の代行を義務付け
【~住宅宿泊仲介業者に係る制度の創設~】
・住宅宿泊仲介業を営もうとする者は観光庁長官の登録が必要
・住宅宿泊仲介業の適正な遂行のための措置(宿泊者への契約内容の説明等)を義務付け
民泊事業者に対しては、年間提供日数の上限が180日という条件があるため、約半年間は部屋を民泊事業に使えないといった問題もありますが、民泊ビジネスへの参入障壁は低くなりました。
また、管理業者や仲介業者に対しても登録制度を設け、各省庁が監督するため、民泊利用者にとっても安心感を持てる内容になっています。
次回は、民泊新法施行を見据え、民泊ビジネスに参入を表明している企業を紹介します。
(情報提供:住宅産業研究所)