住宅会社の海外事業展開市場動向,ハウスメーカー
国土交通省が1月31日に発表した建築着工統計調査によると、2016年の新設住宅着工戸数は、前年比6.4%増の約97万戸となりました。相続税の節税対策でアパートなどの貸家の着工が全体をけん引する中、注文住宅などの持ち家や分譲住宅も前年を上回り好調に推移しています。しかし、、、
国内では少子高齢化が進み、将来的に住宅着工戸数も減少していくと予想されており住宅会社各社の海外進出が相次いでいます。
北米・豪州で進む大型開発
経済成長が著しいASEAN地域に比べ、安定した成熟市場で、需要が大きいアメリカやオーストラリアでは、住宅に加えオフィスや商業施設などを含む大型複合開発に取り組む住宅関連会社の動きが活発となっています。
三菱地所の米国子会社であるロックフェラーグループ社は、ニューヨーク市クイーンズ区において、建物・施設総面積が5万坪超に及ぶ住宅、オフィス、商業施設、駐車場などから構成される複合施設の開発に2014年より着手しています。
今年4月には、約150戸を有する住宅棟が竣工予定で、最終的には2022年頃までに順次完成させていく計画となっています。
住宅メーカーでは、積水ハウスが2008年に国際事業部を設置し、本格的に海外での事業展開を開始しました。
オーストラリアでは、戸建住宅建設事業やマンション・宅地開発事業を手掛けています。同社では、オーストラリアでの大規模開発を皮切りに、中国、シンガポール、アメリカなどを市場として住宅供給を進めています。
住友林業は、2016年11月に2019年3月期までの「中期経営計画2018」を発表しました。この中期経営計画の中で同社は、海外事業における年間販売棟数をアメリカで5,000棟、オーストラリアで3,000棟の合計8,000棟を目標として掲げています。
また、海外での分譲地開発やM&Aなどに1,500億円を投じる方針を示し、縮小が続く国内の新築住宅事業を補う計画だということです。
住友林業では、2002年にアメリカの現地ビルダーとの合弁会社を設立し、2003年から分譲住宅の販売を開始しました。
また、オーストラリアには2008年に現地企業と合弁会社を設立し、2009年から本格展開しています。同社では、海外事業を成長事業の柱と位置づけ、アメリカの住宅事業で全米トップビルダーを目指し、事業の拡大を図っています。
戸建住宅以外にも広がる海外事業
戸建住宅や分譲マンションなどの住宅以外の事業でも、海外展開を積極的に行っている住宅関連会社もあります。
不動産賃貸仲介ビジネスを手掛けるエイブルは、1月にインドのニューデリーに「エイブルネットワークニューデリー店」を開設しました。
エイブルでは、これまでに東・東南アジアや欧米を中心とした海外出店を行っており、ニューデリー店は海外14店舗目となり、南アジアへは初の出店となりました。
ニューデリーは、約1,500社にのぼる日系企業の進出と、それに伴う5,000人超の在留邦人を抱えています。同社では、これまでの海外店舗展開により得たノウハウを活かし、駐在の日本人や現地日系企業などに勤める転勤者の部屋探し、住み替えなどの需要に応えていくということです。
国内で戸建分譲事業や注文住宅請負事業を手掛けるビルダーの三栄建築設計は、ベトナムのホーチミンでホテル開発事業に参入することを発表しました。
ホテル開発事業を手掛ける現地法人の株式を既存株主からの購入と第三者割当増資により取得し、ホテル開発事業を行っていくということです。
建物は、延床面積3,000平米で、地下2階地上10階建てを計画しており、24~31平米の部屋を60室程度供給するということです。2018年夏の運営開始を予定しています。
また、2016年9月には、ベトナムでの住宅開発のため、プレサンスコーポレーションと共同で新会社プロスエーレを設立し、分譲住宅開発事業にも参画することを発表しています。
同社は、中長期的な成長戦略の一つとして、「海外戦略」を掲げており、今後はベトナム以外にもASEAN近隣諸国での事業を積極的に展開する計画だということです。
(情報提供:住宅産業研究所)