空き家の使い方いろいろ業界ニュース,市場動向
東京都の小池百合子知事は都知事選の頃から、頻繁に待機児童の課題に着手することを公言し、そのハード面として空き家の利用に言及してきました。
就任後も、空き家を活用した保育所整備などに補助する待機児童対策を発表しています。保育サービスの定員においても、今年度内に新たに5,000人分増やすとしています。
空き家で待機児童解消
空き家や空き店舗などを借りて保育施設を始める事業者に、家賃の4分の3(上限年4,000万円)を5年間補助する新事業に17億円を計上。空き家改修などで新しい保育施設を設ける際の補助事業(90億円)には、60億円を加算すると言います。
年度内に開設、着工する事業者には補助額を上乗せし、早期整備を促しています。また、利用負担の軽減を目的に、認可外保育施設の利用者に月額最高4万円を補助する事業に25億円を計上。さらに18億円をかけて保育所職員の家賃補助の対象を広げ、人材確保につなげるとしています。
この緊急対策が打ち出される以前にも、一般の民家や空室を利用したいわゆる「おうち保育」が注目を浴びたことがあります。
そこへさらなる上乗せとして東京都が率先して物件の確保や賃料への助成を行うことで、不動産投資家が保有する空室などがますます活用されることが望まれます。
一方、懸念される点もあります。それは少子化による待機児童の減少。増え続ける待機児童は数年後をめどに減少し始めるとの見方があり、現在がピークの状態で、これから緊急で対策を講じたとしても、落ち着きを見せるころには反転して空き家に逆戻りということも考えられます。
しかしながら現在のところは、空室賃貸物件を保育施設や保育士の宿舎として活用していくことは、不動産投資としてのポテンシャルもありそうです。
空き家を民泊施設に
個人が手軽に空き家・空き部屋を使い、利用者を泊めることで収入を得る民泊ビジネスが、世界的に広がりを見せています。そのマッチングサービス最大手がAirbnbです。
Airbnbは、部屋を提供するホストと宿泊するゲストを仲介し、その手数料収入で運営されています。貸し出す部屋は、完全に独立した家または部屋とは限らない柔軟性も評価され、単に空き家・空き部屋を貸すだけではなく、互いに望めばホストとゲストとのコミュニケーションが図れることも、Airbnbが利用者を増やしている理由です。
現在、民泊を展開できる地域は一部の国家戦略特区に限定されています。
現時点での対象エリアは、東京都、神奈川県、千葉県、成田市を含む「東京圏」、大阪府、京都府、兵庫県を含む「関西圏」、「兵庫県養父市」、「新潟県新潟市」、「福岡県福岡市」、「沖縄県」、「秋田県仙北市」、「宮城県仙台市」、「愛知県」といった地域です。
この国家戦略特区は、国が主導して方針やエリアの選定を行っており、今後エリアが拡大される可能性もあります。
東京圏にある大田区においては、2016年1月から、一定の条件下にある空き家を宿泊施設として利用するために、住宅の空き部屋などに旅行客を有料で泊めることを認める民泊条例が施行されました。
2020年に開催が予定されている「東京オリンピック」での、外国人観光客の宿泊先不足の解決策として、その効果が高く期待されています。
空き家の活用方法については、まだまだ開拓の余地があります。空き家の有効活用法として注目されている事業の1つが、「レンタルスペース」です。絵画や陶芸を展示する「ギャラリー」や地域の「コミュニティスペース」、現在では言葉として定着してきたDIYを学ぶ「リノベーションスクール」の実践の場として活用され始めています。
今後さらに増えていくと言われる「空き家」。空き家だけでなく空き店舗も増加しており、街のスラム化や荒廃、老朽化による危険性など、さまざまな問題が懸念されています。
住宅としてだけでなく、スペースの1つと捉えることで、新しい空き家の活用方法を作り出していくことが求められます。
(情報提供:住宅産業研究所)