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空き家対策はどこへ向かう?業界ニュース,市場動向

市場動向
業界ニュース
2017.1.23

乾燥する冬季。昨年末、新潟県糸魚川で多くの家屋に巻き込んだ大規模火災がありましたが、こうした事故は決して「対岸の火事」ではありません。現在、多くの自治体が空き家条例を制定しています。


そのうち、防災の観点から制定されたのが、東京都内では初めての条例となった「足立区老朽家屋等の適正管理に関する条例」です。

空き家の防災対策が急務


この条例は、補修を呼びかけていた住宅で外壁タイルの落下があったことや、東日本大震災を機に制定されました。


特徴は区の勧告に従って住宅の解体を行う場合には解体費用の9割、上限100万円までを助成するという点です。条例制定が大震災直後だったことで注目されることとなりました。


空き家対策条例の目的を分類してみると、景観や生活環境の保護、そして防犯・防災などの安全面の確保の2つが大きなテーマになっています。足立区をはじめとする下町エリアなど都市部での空き家対策には、後者の視点が重要です。


糸魚川での火災同様、木造家屋密集地域では一軒の火災が周辺に多大な影響を及ぼしかねず、逆に一軒を解体することが延焼を遮断することにもつながります。首都圏以外でも木密地域を抱える都市は多く、足立区の例は参考になるでしょう。


防災対策として有用である反面、私有財産である個人の住宅解体に公費が支出されることは、課題と言えます。「危険な状態の空き家を放置している所有者に負担されるべき」というのが大多数の意見でしょう。


自治体には、命令に従わない人への対策として、実力を行使する手段があります。命令に従わない所有者に代わり、行政が建物の除去などを行い、その費用を所有者に請求する「行政代執行」という手段です。


ただ、実際のところは、代執行では費用を回収できないケースが多いようです。強権的に見える代執行で空き家は撤去できたものの、費用が回収されないケースが発生してしまうよりも、助成によって平和的に撤去してもらう方法を取る方が賢明と言えそうです。


足立区の条例には、こうした考え方が反映されています。


空き家入居で月4万円の補助


国土交通省は、空き家に入居する子育て世代や高齢者に最大月4万円の家賃補助を実施すると発表しました。


受け入れる住宅の持ち主にも、住宅改修費として最大100万円が支給されます。これらを早ければ今年秋に始めるということです。子育てや高齢者の生活を住宅面から支え、深刻になりつつある空き家問題の解決にもつなげる施策として期待されます。


このほか、新たな対策で柱となるのは、空き家や民間賃貸住宅の登録制度の創設です。住宅の持ち主に呼びかけ、18歳以下の子どもがいる世帯や60歳以上の高齢者のほか、障がい者や被災者などの専用物件と入居を拒まない物件を地方自治体に登録してもらうというものです。


自治体は、住宅の情報を提供して、対象者に入居を検討してもらいます。家賃補助は専用住宅に入る子育て世帯や高齢者のうち、原則として月収38万7千円以下の人を対象とします。これには全世帯の7割が含まれ、おおむね月収15万8千円以下(高齢者は21万4千円以下)とされる公営住宅の入居対象者より、大幅に条件が緩和されます。


現状、賃貸契約の際に必要な家賃の債務保証料の相場は家賃の半額程度とされ、所得の低い人には大きな負担になっています。そのため、この保証料も最大で6万円補助されます。


耐震改修やバリアフリー化の工事も促します。専用住宅への補助は1戸あたり最大100万円。それ以外でも住宅金融支援機構の融資を受けられるようになります。一軒家の間取りを変えてシェアハウスにする工事なども認められます。1人あたりの面積基準なども定めて、所得が低い人を劣悪な住宅に住まわせて家賃を取るような悪質なやり方を防ぎます。


国交省が空き家を使った新たな制度を構築するのは、自治体が建てる公営住宅だけでは対応に限界があるため。公営住宅の応募倍率は全国平均で5.8倍、東京都は22.8倍に達します。


一方、民間賃貸住宅では子育て世帯が十分な広さの家に住めなかったり、家賃滞納や孤独死のリスクがあるとして高齢者が入居を拒まれたりするケースも多くあります。


全国の空き家は約820万戸に達し、そのうち賃貸住宅が430万戸。今後も世帯数の減少で空き家は増え続ける見通しです。新たに公営住宅を建てるよりも、既存の空き家を有効に活用する方が効率的と判断したようです。


子育て世帯や高齢者の入居を支援しやすくする枠組みも整備されます。自治体で入居を希望する人の状況を把握する福祉部局と、物件情報を持つ住宅部局の連携を強化。入居から入居後の見守りまで支援するNPO法人への補助も検討されています。


政府は2017年の通常国会に、低所得者などへの住宅供給の基本方針を定めた「住宅セーフティーネット法」の改正案を提出する方針です。22日に閣議決定した2017年度の政府予算案でも、家賃補助などの資金が設けられています。

(情報提供:住宅産業研究所)

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