2016年住宅市場の振り返り業界ニュース,市場動向,ハウスメーカー,耐震・制震・免震関係,太陽光/省エネ/ZEH関係
2017年がスタートしました。今年の住宅市場はどのような動きとなるでしょうか。2017年の予測の前に、2016年の住宅市場を振り返ってみましょう。
受注の大きな波はなくなったが、住宅着工は増加
2016年6月に、当初は2017年4月に10%に上がるはずだった消費増税が先送りとなることが決まりました。
予定通りに消費増税が行われる場合には、注文住宅の契約経過措置の期限である16年9月までは大きな駆け込み需要が発生し、10月以降はその反動減が起こると予測されていました。
それがなくなったことで、販売戦略を方向転換することとなった住宅会社も多かったのではないでしょうか。
消費増税が先送りとなったことで、エンドユーザーが住宅購入に動くきっかけの一つがなくなり、駆け込み需要も反動減も起こらず住宅市場は停滞するようにも思われました。
しかし実際には、2016年の住宅着工は1~10月の累計で前年実績を6.6%上回りました。単月で見ても、前年同月を下回ったのは6月だけで、ほぼ毎月前年同月比5~10%増で推移しています。2年連続で着工増となることはほぼ間違いないでしょう。
住宅着工が好調な要因は、第一に低金利です。16年2月に導入された日銀のマイナス金利の影響もあり、住宅ローンの金利は史上最低水準を何度も更新しました。フラット35Sの金利は1%を割った月もあり、元々住宅の購入を考えていたエンドユーザーを動かすきっかけになったと言えます。
第二に賃貸住宅の好調です。低金利によって利回りのメリットが高まり、相続税絡みに加え、投資型賃貸の需要も増えています。積水ハウス、大和ハウス等の大手ハウスメーカーの動向を見ても、戸建よりも賃貸住宅に力を入れる傾向にあり、賃貸住宅の請負+賃貸管理でストックによる売上・利益を高めています。
ZEHビルダー登録制度がスタート
住宅の省エネ化・ZEH化は以前から推進されていますが、2016年からはZEHの補助金申請において、ZEHビルダー登録をして、申請に対する採択は性能順という方式に変わりました。
ZEHビルダー登録件数は約4000件で、とりあえず登録は済ませておいたというビルダー・工務店は多いでしょう。
ただし実際の申請状況を見ると、ZEH登録ビルダーのうち、約8割の会社はこれまで一度も補助金申請をしていません。逆に全体の2%弱の会社による申請が、全申請数の9割近くを占めます。
ZEH対策には温度差があるということですが、補助金制度を活用して上手く受注を獲得している会社もあります。
積極的に勧めていなくても、ZEH仕様の商品やモデルハウスを設けている住宅会社は少なくありません。中小工務店も自社が手掛ける住宅の性能向上について、改めて考えるきっかけになったと思われます。
熊本・鳥取で大地震が発生
昨年4月には熊本、10月には鳥取でマグニチュード6を超える大地震が発生しました。熊本の住宅市場は夏頃から復興需要に沸いています。
住宅各社では改めて自社商品の地震に対する強さの訴求を強化しています。繰り返し起こる地震に耐える構造・性能だけでなく、災害後の生活を想定して、創エネ・蓄エネ設備の搭載や備蓄品を収納するプラン等のアピールも目立ちました。
エンドユーザーの関心も高まり、これからの住宅には災害対策がより重要視されるようになると見られます。
住宅会社の経営統合、業界再編
昨年11月、トヨタホームがミサワホームの持ち株比率を27.8%から51%に引き上げ、子会社化すると発表しました。2社の戸建販売棟数を合わせると1万棟を超え、積水ハウスに迫る位置まで上がってきます。
当面はミサワホームの上場は維持したままで、様々な形で両社の連携を強化していくと見られます。
主力の戸建部門では、商品開発や部材調達などの共通化部分を増やし、効率化・合理化を進めることでコストダウンや利益率の改善を図ります。戸建以外では、ミサワホームはこの経営統合で調達した資金を、マンション事業や収益不動産事業に充てるようです。
同12月には、パナソニックがパナホームを今年8月付で完全子会社化することを発表しました。一昨年にはリフォーム事業のブランドを統合する等、両社の協業強化を進めていましたが、連携をより強固なものとする動きです。
以上が2016年の住宅市場の主な動きでした。他にも、住生活基本法の改正や、首都圏の新築マンションと中古マンションの供給件数が逆転する兆しなどが、2016年のトピックと言えます。
(情報提供:住宅産業研究所)