2020年まで、ZEH対応はどこまで進む?商品・トレンド,市場動向,ハウスメーカー,太陽光/省エネ/ZEH関係
前回は、ZEHビルダー登録と補助金の申請・採択の実績から、住宅業界全体のZEHへの取組の傾向を見てきました。今回は主要な住宅会社の具体的な取組について見ていきます。
一昨年あたりから、総合展示場では、出展している大手ハウスメーカー各社のモデルハウスに、軒並み「ZEH」をアピールする懸垂幕や幟旗が掲示されています。ZEHへの取組は、ビルダー・工務店よりも大手ハウスメーカーが先行しています。ただし、、、
大手各社のZEH普及率目標を見ると、初年度は10%内外で2020年までに50%まで引き上げるという目標自体は、大半のZEH登録ビルダーと変わらないスタンスのところが多いです。
一方で、ZEH推進に積極的と言えるのが積水ハウス、サンヨーホームズ、三菱地所ホーム、積水化学工業の4社で、初年度から30%以上を目標としています。
積水ハウスは昨年度の時点で既に70%を超えています。サンヨーホームズは得意とする電気系システムとの連携を特徴としています。三菱地所ホームは全館空調「エアロテック」による省エネ効果をアピール。積水化学は先行して取り組んできた太陽光発電の取組みをベースに高い目標値を設定しています。
このように省エネ関連設備に関して先駆的に取り組んできたメーカーで高い目標値を掲げています。
ZEH先駆者は更なる高みへ
最も積極的にZEHに注力していると言えるのが積水ハウスでしょう。同社ではZEH比率を2020年までに80%、新築住宅と戸建・賃貸ストックにおけるCO2排出量を2030年までに2013年比で39.3%削減するという高い目標を掲げています。
住宅の供給を通じて社会課題を解決することが企業の責任であるという考え方の下、2009年から環境配慮型住宅「グリーンファースト」を展開。
13年4月にはZEHを先取りする商品として「グリーンファースト ゼロ」を発売し、15年度の棟数実績は7,556棟で、販売比率は70.9%を占めています。発売当初から省エネ基準を大きく上回るハイグレード仕様を標準として、今年からは真空複層ガラスを新たに採用するなど、性能を日々ブラッシュアップしています。
ZEH補助金採択件数が最も多いと見られるのが、一条工務店です。
今年3月には「i-シリーズZERO」というモデルでハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エナジー2015大賞を受賞し、広告宣伝では「超“ZEH”」という言葉を使って大きくアピールを始めています。
ZEHの外皮性能を満たす物件は15年度販売分では98%に達し、太陽光発電が標準のため、オプションでHMESを設置すればZEHの基準を満たします。
セキスイハイムでは、過去に販売した自社物件に対してHEMSを通じたゼロエネルギー達成度に関する調査を行っています。最新の調査(2015年1月~12月)によると、ZEH相当以上のゼロエネルギー達成率は59%、家電込のゼロエネルギー達成率は32%と発表しています。
ポイントは、国のZEHの定義が「運用時ではなく設計時で評価する」ものに対し、同社では「運用時の評価」を行い「家電込みのエネルギー収支」の比率も出していることです。独自の評価等を用いて実際の入居者がどれだけゼロエネを達成しているかをアピールし、ランニングコスト面での訴求で勝負をしようという狙いが伺えます。
ビルダーでは、ZEHへの取組に最も積極的な会社の一つが福岡のエコワークスです。同社では既に5年程前からZEHの要件である外皮の断熱性能と高効率設備を標準化し、平成25年基準のUA値で全棟計算しているため、5~6kWの太陽光発電を搭載すればZEHを達成できます。
ZEH補助金採択の加点要件である、建築物省エネ住宅性能表示制度(BELS)も全棟で取得しています。
ZEH普及へ向け、後発企業の課題は?
ZEHが日本の住宅のスタンダードに近づくほど、対応していない住宅会社は業者選びの候補として選ばれにくくなります。
まず必要なのは躯体性能を高めること。現状で断熱化が遅れているのは、開口部と屋根ではないでしょうか。
窓は樹脂サッシとLow-Eペアガラスやトリプルガラスに変え、屋根断熱を強化する必要があります。その上で、壁の断熱も強化し、各種補助金を活用して高効率設備や創エネ設備を取り入れるという流れになります。
これらのグレードアップ、設備搭載にはコストがかかり、販売価格は上がることになります。
ZEHとそれ以外の住宅の価格差について説明し、ZEH仕様にすることのメリットを伝えられる営業力も必要となってきます。ZEHの普及にはまだ時間がかかりますが、他社から取り残されないよう、準備を進めてください。
(情報提供:住宅産業研究所)