「HOUSE VISION 2」に見る先進的な住宅デザイン~後編~商品・トレンド,業界ニュース,ハウスメーカー,太陽光/省エネ/ZEH関係
今年7月末から1ヶ月間、東京お台場でエキシビションが開催された「HOUSE VISION」。12社の企業が建築家などのクリエイターとのコラボによるモデルを出展し、前回はその中で、建物の機能を向上・変化させている提案モデルをご紹介しました。今回は主に新しい暮らし方・住まい方を提案したモデルをご紹介します。
大東建託「賃貸空間タワー」
従来の賃貸住宅は、専有部を最大化し共有部は階段や廊下などの通路のみという構成であるのに対し、提案モデルでは専有部を最小化し、共有部の空間を広げています。各専有部はベッド、収納、トイレのみの7~16㎡の小さな空間とし、その分、住民が共有するキッチンやバスルームなどを広くして、住民が利用できるライブラリーやホームシアター、来客を泊められるゲストルームも設けました。
いくつもの箱を組み合わせたような構造で、大小様々な空間を少しずつずらして立体的に組み合わせることで、階段、廊下、テラスなどの共有部の空間を広げ、植栽や庭のスペースを多く確保しています。賃貸住宅を小さな一つの街に見立てて、住民同士や近隣との交流を促進する提案です。
無印良品「棚田オフィス」
1階は農業の作業部屋として、2階は居住やオフィスとして活用することを想定した、都市と農村の二拠点居住の提案モデルです。SE構法を用いて4本の柱と梁で建物を支える、物見やぐらのような構造で、農機具を収納する1階は四方を全面開口として、近隣とのコミュニケーションの場として活用できるようにしています。
2階はパソコンを持ち込んで、周囲の自然を感じながらデスクワークができるオフィス空間にしました。無印良品では千葉県鴨川の里山集落と交流し、農業の繁忙期には田植えや稲刈りのイベントを行っています。
会場内に設けた3棟のうち1棟は会期終了後にこの集落に移築して、実際に無印良品のサテライトオフィスとして活用する計画です。
Airbnb「吉野杉の家」
民泊の仲介サイトを運営するAirbnbが出展したモデルは、2階は宿泊施設、1階は広い縁側に面する建具を開け放して地域のコミュニティスペースとしての活用を提案します。
奈良県の吉野杉・吉野桧を豊富に使って現地に建てたモデルを分解して「HOUSE VISION」会場に搬入し、会期終了後には再び奈良県吉野町に移築して、Airbnbに登録して宿泊予約を受け付けます。宿泊費の利益の一部は吉野町に寄付し、地域の伝統を継承する活動に使用される計画です。
TOYOTA「グランド・サード・リビング」
電気でもガソリンでも走り、太陽光発電もできる「プリウスPHV」に、丈夫で軽い炭素繊維を使用したテントを複数積み込んで、車で出かけた先をどこでも快適な住空間に変化させられるライフスタイルの提案です。
急速充電なら約20分で80%まで充電でき、合計1500Wまで給電可能。出かけた先でも自宅と同じように家電を使用でき、車と住まいの関係の新しい価値を発信しています。
「分かれてつながる/離れてあつまる」をテーマとした今回の「HOUSE VISION」の出展モデルでは、建物の内と外、人と人とをつなぐような提案が多く見られました。また、一ヶ所に定住しない、あるいは決まった住居の形に固執しない、場所も形も自由に変化させられるような住まい方が提案されていました。
実際に住まう住居としては突飛なデザインや、使いにくい間取りのモデルも多いですが、近未来の住生活の一端を示し、これからの住宅商品開発のヒントになることはあったと思います。
(情報提供:住宅産業研究所)