大手メーカーの15年度決算を読み解く~2016年度の見通し~業界ニュース,ハウスメーカー
前回は、大手住宅メーカー8社の決算データをもとに、2015年度の販売・受注状況を振り返りました。今回は、2016年度の販売・受注予測を開示している5社(※)のデータをもとに、2016年度の見通しについて解説します。(※大和ハウス・ミサワホームパナホーム・住友林業・旭化成ホームズ)
販売:前期の受注苦戦を引きずる、集合住宅は強気予測
まずは、各社の前年度比での販売棟数・戸数を見ていきましょう。
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大和ハウス :戸建+0.2%、アパート+ 5.4%
ミサワホーム :戸建+4.1%、アパート+11.7%
パナホーム :戸建+7.1%、アパート+11.5%
住友林業 :戸建+1.9%、アパート+22.4%
旭化成ホームズ :戸建▲2.0%、アパート▲ 9.3%
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戸建は、5社のうち4社が前年度比プラスを予測しています。販売予測は、前年度(2015年度)の受注を色濃く反映します。
前回お伝えしたとおり、2015年度の受注実績は、通年では前年割れが目立つものの、下期に入って回復の兆しが見られるメーカーが少なくありませんでした。
この傾向が今年度も継続し、結果としてプラス受注が見込めるという予測のようです。
唯一マイナス予測の旭化成ホームズは、昨年後半の報道による広告宣伝活動の自粛が影響しています。
一方でアパートも、旭化成ホームズを除く4社が前年度比プラスの予測です。しかも、もともとボリュームが大きく大幅増が難しい大和ハウスを除く3社は、2桁のプラスを見込んでいます。
ここ数年好調なアパートの勢いが衰えていないことを裏付けています。
受注:プラス予測目立つも、消費増税先送りの影響は不透明
今度は受注棟数・戸数の予測です。先ほどと同様に、前年度比で見ていきましょう。
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大和ハウス :戸建▲1.1%、アパート+ 2.8%
ミサワホーム :戸建+6.5%、アパート+ 9.3%
パナホーム :戸建+5.4%、アパート+11.5%
住友林業 :戸建+6.1%、アパート+14.9%
旭化成ホームズ :戸建+6.4%、アパート+ 2.0%
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戸建は、5社のうち4社が前年度比プラスの予測です。各社のプラス幅も5~6%台と、ここ数年の受注状況を考えると、やや強気とも言える予測が目立ちます。
2013年度の増税駆け込み以降、苦戦を続けていた住宅業界が、ようやく反転するという期待が見られます。アパートは5社すべてがプラス予測で、うち2社が2ケタ増を見込んでいます。
ややピークは過ぎた印象はあるものの、好調を持続するという見通しのようです。
戸建・アパートとも前向きな予測が目立ちますが、ここで気をつけておきたいのは、これらの予測がすべて、消費増税の先送りが発表された6月1日より前に発表されているということです。
数ヶ月前から増税先送りの観測が流れていたため、各社の受注予測に駆け込み受注はさほど見込んでいないと考えられますが、住宅検討客の後押し要因を欠いたことで、受注回復が期待を下回る可能性は考えておかなければなりません。
ただし、マイナス金利による住宅ローン金利低下もあり、住宅展示場などの来場はここ数ヶ月間好調が続いているようです。
長らく動きの見られなかった住宅検討客が、ようやく動き出したと言えそうです。消費増税が見送られた今、住宅ローン金利低下と将来の上昇可能性は、住宅検討客の買い時感を醸成する数少ない有力材料と言えそうです。
まずは積極的な集客施策によって、動き出したお客様に対して、確実に自社を認知していただくことが必要になりそうです。
顧客化・見込客化していない過去の来場客に対しても、アプローチの絶好のタイミングと言えるでしょう。
そして来場客・商談客に対しては、住宅ローン金利の現状などを的確に伝え、いま契約に踏み切る理由を丁寧に説明する工夫が求められます。
(情報手強:住宅産業研究所)