住宅メーカーの多層階戦略商品・トレンド,ハウスメーカー
前回は消費者が多層階住宅に住むことのメリットと、その中でも多層階住宅への参入が難しいとされる木造住宅に特化した住友林業の多層階商品を紹介しました。
今回は鉄骨住宅メーカーの中でも業界最高の7階建を発売しているパナホーム、新しく開発した構法で大空間、大開口を実現した大和ハウスの動向を紹介いたします。
業界最高7階建訴求と3階建も強化~パナホームのビューノ~
多層階向けの新商品を次々と投入し、その性能の高さをアピールしているのがパナホームです。
同社初の多層階住宅「スリーF」を発売したのが1977年で、2000年に4階建、2004年に5階建というように多層階への対応を図ってきました。
2014年には工業化住宅として初の7階建を可能にした「ビューノ」、2015年には店舗・事務所併用商品として「ビューノ・プロ」を投入しており、多層階住宅の累計販売実績は約17,000棟に上ります。
パナホームの多層階商品には重量鉄骨「NS構法」が採用されています。NSとはNon-welded Solid:ノンウェリデッドソリッドの略で「無溶接」という意味です。
一般的に重量鉄骨工法は、溶接により柱と梁を強固に固定しますが、同構法は独自開発の高力ボルトにより接合します。施工現場で溶接を行わないため精度が安定し、施工の効率化、品質の均一化、コストダウンといったメリットにつながると訴求しています。
同社では、このような自社商品の特長を訴求する場として「ビューノプラザ」という多層階専用の営業拠点を展開しています。
2014年開設の豊島、中野、川崎を皮切りに2015年4月にオープンした東京都新宿区、台東区、神奈川県横浜市3拠点の他、名古屋、近畿まで、現在までに全国10拠点がオープンし、いずれも駅近で気軽に訪問できる立地にあります。
業界最高の7階建を訴求している同社ですが、今年4月に「ビューノ 3S 」という軽量鉄骨3階建商品を発売しました。
軽量鉄骨→重量鉄骨、3階建→4・5階建といったように徐々に対応できる階層を増やしていく他社と異なり、一気に7階建を可能とする重量鉄骨商品で技術力をアピールする一方、4階建以上の住宅市場に比べ10倍もの市場規模である3階建でさらなる拡販を狙うというユニークな戦略です。
業界最大の大空間・大開口を実現~大和ハウスのスカイエ~
大和ハウスは、相続税対策を目的とした二世帯住宅や賃貸、事務所併用住宅のニーズを見込み、3、4、5階建重量鉄骨住宅「スカイエ」をリニューアルし、2015年10月に「新・スカイエ」を発売しました。
さらに今年4月には多層階専門の総合展示場板橋高島平ハウジングステージに「新・スカイエ」のモデルハウスをオープンしました。
新構法「DRF構法」による構造躯体の強度アップにより、最大8,190mmのワイドスパン、業界最高クラス2,720mmの天井高という、ゆとりの空間を可能としました。
二世帯住宅や賃貸併用住宅、店舗併用住宅に対応でき、従来商品から1割程度低価格化も実現しました。
坪単価は5階建の参考価格で101.8万円からで、大和ハウス商品の代名詞となっている「外張り断熱通期外壁」も採用できるようになりました。
さらに外壁には、ジーヴォΣに採用されている25mm厚の窯業系サイディング「DXウォール」も搭載可能になり、進化した重鉄の多層階住宅がどこまで需要を獲得できるかが注目です。
消費者は多層階に対し、耐震性や上下階間の騒音などの不安があり、各住宅メーカーは現在まで、その不安を取り除くことに注力してきました。
今後の多層階戦略においても、耐震性、断熱性能などの住み心地の向上が図られるでしょう。
また、賃貸併用住宅、事務所併用住宅の流れを踏まえると、宿泊施設併用住宅、コワーキングスペース併用住宅など、新しい暮らし方の提案、不動産投資としての提案の幅が広がっていくでしょう。
(情報提供:住宅産業研究所)