今から始めるZEH~実施編~市場動向,ハウスメーカー,太陽光/省エネ/ZEH関係
ZEHの補助金が支給される基準は、年間一次エネルギー消費削減量と、各種の加点要素によって決められています。具体的には次のようになっています。
ZEH採択の決め手は窓
1)交付要件のUA値より、20%以上強化(エネルギー消費削減率10ポイント相当)
2)高性能HEMS(グレードB)導入(同5ポイント)
3)BELS(国交省が進める建物の省エネ性能表示制度)の取得(同5ポイント)
この一次エネルギー消費削減量には太陽光発電システムの創エネルギー分を含みません。よって一次エネルギー消費削減量と、UA値に大きく関わってくる外皮性能を強化することが採択の近道となります。
外皮性能の向上には断熱材をより厚くしたり、素材を断熱性能の高いウレタンフォームやポリスチレンフォームに変更する、あるいは、断熱ドアを採用するなど様々な方法があります。
その中で最も効果的なのは、やはり窓ガラス・サッシの高断熱化です。
住宅における熱の出入りのうち、窓が占める比率は冬で5割、夏では7割に達すると言われており、窓の断熱化が住宅のエネルギー消費量に大きく関わっていることは間違いありません。
省エネルギー性能に優れた住宅の表彰制度として「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エナジー」があります。
2015年の受賞作品を見ると、大賞を受賞した一条工務店や、宮崎のアイ・ホーム、また特別優秀賞を受賞した29件の多くがLow-Eトリプルガラス+樹脂サッシという構成となっています。
当然外皮性能の強化によって発生するコストアップをいかに抑えるかという課題は残りますが、一定以上の省エネ性能を有する住まいが一般的になるに従って、サッシ・窓の高性能化は進行していきます。
ハウスメーカー、ビルダーの動きは?
5月13日付のZEHビルダー登録件数は1,302件で、そのうちの多くが2020年にかけてのZEH普及目標を公開しています。
ハウスメーカーで最も高い普及目標を掲げているのはミサワホームで、2020年時点では自社で供給する住宅のうち90%をZEHが占めることを目指すとしています。
このほか積水ハウスやパナホーム等も2020年時点で80%目標と高い普及率を掲げる一方で、あくまで50%と最低ラインを目標とするメーカーも少なくありません。
スウェーデンハウスや一条工務店など断熱性能に特化した企業においても、そもそも住まいへのこだわりから太陽光発電システムを搭載しない、あるいは太陽光の売電全量買取りを選択するなど、ZEHの要件から外れるケースも多いようです。
システム化された住まいを供給する場合、地域ごとの気候や気温の差もネックになるなど、ハウスメーカーにとっても年間数千棟に及ぶ普及率50%の達成はかなり高いハードルと言えます。
ビルダーについては、エコ住宅の先駆者である九州のエコワークスが2020年に95%の普及とするなど、従来からエコ住宅、高気密高断熱住宅に注力してきた住宅会社では高い目標を掲げる傾向にあります。
比較的狭いエリアで展開するビルダーについては、エリア差が少なく、トップが掲げる戦略が営業現場まで浸透しやすいというメリットがありますが、一方で設計や申請といった人的な負担、ZEH仕様によるコスト上昇をどう解決するかという課題もあります。
こうした背景から、今後はビルダー間でZEH基準を満たした企画住宅が増加しそうです。
1棟880万円からのローコスト企画住宅を提案する桧家グループのパパまるハウスは、断熱材のグレードアップやエネルギー消費効率の高いエアコンなど、ZEH仕様に対応したパッケージとZEH対応プランを組み合わせ、約1,000万円からのZEH住宅を提案しています。
また、今回の制度ではフランチャイズがブランドでまとめてZEHビルダー登録申請を行うこともできるため、ZEHノウハウの吸収や設計・人的負担軽減といった目的から、フランチャイズへの加盟も増えそうです。
(情報提供:住宅産業研究所)