今から始めるZEH~制度編業界ニュース,市場動向,太陽光/省エネ/ZEH関係
年間の一次エネルギー消費量が正味(ネット)でゼロになる住宅「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」。政府はこのZEHが、「2020年までにハウスメーカー、工務店等が施工する新築住宅の過半数になること」を目指しています。
2020年の標準化に向けて、新年度補助金制度がスタート
実際に2020年時点でこの目標が達成できるかどうかはともかくとして、燃料価格の上昇や企業競争力の確保、環境負荷低減など様々な要因から、国が定める住宅建築の基本方針が今後も省エネルギー性能の向上にあることは間違いありません。
「家づくりに大事なのは性能ではない」という声もあり、それも一つの事実です。しかし、上記のような政府の方針から、2020年に近づくに従い、「一定以上の省エネ性能を満たすことが、住まいづくりの前提条件となる」という風潮は高まっていきます。
「ZEHにあらずんば住宅にあらず」そんな時代は思いのほか早く訪れるかもしれません。こうした流れを最も如実に表しているのが、ZEHの補助金制度「住宅・ビルの革新的省エネルギー技術導入促進事業費補助金」です。
4月よりスタートした新年度の制度では、従来とは異なり「補助金を申請する住宅は、補助金を支給する団体である、SIIに登録されたZEHビルダーが設計、建築または販売を行う住宅であること」が必要となりました。
登録には、以下のような要件が必要となります。
・2020年度のZEH率を50%以上とする事業目標を掲げる
・その達成に向けた具体的な普及策を有している
・ZEHの実績や普及目標を報告し、一般消費者の求めに応じて開示する
つまり、「今のブームはZEHだから、とりあえず“ZEH出来ますよ”とお客さんにアピールしよう」という会社が建てた住宅ではなく、将来的に自社が建てる標準的な住宅をZEHとし、そのために継続的な企業努力をできる会社が建てた住宅に対して補助金を支給するということです。
全住宅業者が横一線の性能比較へ
補助金の支給額は、1戸あたり一律で125万円となります。加えて北海道やごく一部の北東北といった1~2地域では、別途定める寒冷地特別外皮強化仕様を満たすことで25万円追加の150万円が支給されます。
再生可能エネルギーを含めて基準一次エネルギー消費量を75%以上削減する、Nearly ZEHについては、今回は原則補助対象外となっていますが、1~2地域において寒冷地特別外皮仕様を満たす物件に限り、125万円が支給されます。
このほか、蓄電池についてもZEHであることを前提に、蓄電容量1kWhあたり5万円(上限は補助対象経費の1/3または50万円のいずれか低い金額)が支給されることとなっています。
補助金の予算は住宅・ビルを合計して110億円で、住宅側の予算は半分の55億円と言われています。仮に1戸あたり125万円としても4,400戸という計算になりますが、5月13日時点でのZEHビルダー登録は既に1,302件に上っており、補助金の申し込みが支給額の上限を超えることは確実と見られます。
今回の補助金公募は第1次から第6次の計6回に分けられていますが、いずれの回でも「申請額が予算額を上回った場合、申請のあった物件の中から年間一次エネルギー消費削減率と、各種加点要素を評価して、より省エネ性能の高い住宅を優先して採択する」という仕組みになっています。
つまり、ZEHの基準を満たしていても、同様に申請している他社よりも省エネ性能が優れていなければ補助金は支給されないということです。従来制度では補助金支給は先着順というケースもありましたが、今回の変更によってハウスメーカーも工務店も、全ての住宅会社が横一線で性能を比較されることとなります。
しかもZEHビルダーは一般消費者の求めに応じて目標や実績を開示しなければならないので、ZEH採択状況はユーザーの目にも明らかになります。ユーザーにとってもZEH、ひいては省エネ性能は日々の光熱費に関わる関心の高い分野です。
ZEHビルダーとして登録されているか、そして実際にZEHを達成しているかが、今後ユーザーにおける住宅会社の選定基準に影響する可能性は高いと言えます。
(情報提供:住宅産業研究所)