今後10年の政策指針 住生活基本計画業界ニュース,市場動向
3月18日、政府は今後10年の国の住宅政策の方針を示す「住生活基本計画」を閣議決定しました。住生活基本計画とは、住生活基本法で規定されている国民の住生活の安定の確保及び向上の促進に関する基本的な計画を定めたものです。
前回は、2011年3月に閣議決定され、2011~2020年度までの10年間についての方針が示されました。
住生活基本計画は、おおむね5年毎に見直しが行われるため、今回は、2016~2025年度についての方針を示した基本計画ということになります。
今回、閣議決定された住生活基本計画では、
住生活をめぐる現状と今後10年の課題として、
以下の6つの事項を挙げています。
(1)少子高齢化・人口減少の急速な進展。大都市圏における後期高齢者の急増
(2)世帯の減少により空き家がさらに増加
(3)地域のコミュニティが希薄化しているなど居住環境の質が低下
(4)少子高齢化と人口減少が、住宅政策上の諸問題の根本的な要因
(5)リフォーム・既存住宅流通等の住宅ストック活用市場への転換の遅れ
(6)マンションの老朽化・空き家の増加により、防災・治安・衛生面での課題が顕在化するおそれ
例えば、(1)については、
少子高齢化や大都市圏での後期高齢者の
急増が課題とされています。
国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」よると、
2025年には団塊の世代が後期高齢者となり、
全国の後期高齢者数は、2010年の約1,419万人から
約1.5倍の約2,179万人にもなると予測されています。
さらに首都圏に限って見ると、約318万人から約572万人へと、
約1.8倍に増加するとされています。
首都圏をはじめとする大都市圏では、
後期高齢者の大幅な増加に直面する見込みであり、
医療・介護・福祉需要の増加への対応が
喫緊の課題として挙げられています。
■ 新たな住生活基本計画のポイント
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住生活基本計画では、住宅政策の方向性を国民に
分かりやすく示すことを基本的な方針としています。
また、上記の今後10年の課題に対応するための
政策を多用な視点に立って示し、総合的に実施するとしています。
そこで、新しい住生活基本計画では、
次の3つの視点から8つの目標を掲げています。
(1) 居住者からの視点
目標1:結婚・出産を希望する若年世帯・子育て世帯が安心して暮らせる住生活の実現
目標2:高齢者が自立して暮らすことができる住生活の実現
目標3:住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保
(2) 住宅ストックからの視点
目標4:住宅すごろくを超える新たな住宅循環システムの構築
目標5:建替えやリフォームによる安全で質の高い住宅ストックへの更新
目標6:急増する空き家の活用・除却の推進
(3) 産業・地域からの視点
目標7:強い経済の実現に貢献する住生活産業の成長
目標8:住宅地の魅力の維持・向上
新たな住生活基本計画では、
少子高齢化・人口減少社会を正面から受け止めた、
新たな住宅政策の方向性を提示しています。
ポイントは、若年・子育て世帯や高齢者が
安心して暮らすことができる住生活の実現のため、
「若年・子育て世帯」と「高齢者」の住生活に
関する目標を初めて設定しました。
また、既存住宅の流通と空き家の利活用を促進し、
住宅ストック活用型市場への転換を加速するため、
「空き家」に関する目標も初めて設定されました。
さらに住生活を支え、強い経済を実現する
担い手としての住生活産業を活性化するため、
「産業」に関する目標も初めて設定されています。
次回は、住生活基本計画で掲げられた目標を
達成するための基本的な施策についてご紹介します。
(情報提供:住宅産業研究所)