空き家問題の解決策となるか?“特区民泊”始動業界ニュース,市場動向
総務省が2013年に実施した住宅・土地統計調査によると、全国の空き家数は約820万戸と、前回、2008年に行った調査よりも63万戸増加し、過去最高を記録しました。
また、総住宅数に対する空き家率では13.5%となり、右肩上がりで増え続ける空き家は社会問題となっています。国は空き家問題を解決するため、2015年5月に空き家対策特別措置法(特措法)を全面施行しました。
これまでは自治体ごとに空き家の持ち主を探して指導をしたり、
倒壊の危険がある空き家の場合には、
強制的に撤去できるように条例を制定したりする
などの対策を行ってきました。
特措法の全面施行後は、倒壊の危険性がある空き家や、
ごみの放置などで衛生上有害な空き家などを特定空き家とし、
持ち主へ修繕・撤去の指導・勧告・命令ができるようになりました。
また、命令に従わなかった場合には、
行政が強制的に撤去を行い、
かかった費用を持ち主へ請求することができる
「代執行」も可能となっています。
国を挙げて増加する空き家問題を解決しようとしている中、
空き家問題の新たな解決策として注目されているのが民泊です。
民泊とは、個人が所有する住宅の空き室や、
マンションの部屋を旅行者に有料で貸し出すサービスのことです。
空き家を有効活用することができるほか、
訪日外国人旅行者の増加で、
宿泊施設が不足している問題を
解消する対策としても注目されています。
インターネット上で旅行者と部屋の提供者をつなげるサービス
「Airbnb(エアビーアンドビー」が2008年にアメリカで開始され、
現在では日本にも拡大し、
エアビーアンドビーのサービスを利用した民泊が
日本でも行われています。
しかし、日本では旅館業法上、
宿泊業は原則としてホテルや旅館などに限定されており、
民泊を行っていた業者が法律に違反するとして
摘発されるという事態も起きています。
そこで東京都大田区では、国家戦略特区の特例を利用し、
全国で初めて合法的に民泊を解禁しました。
全国初の“特区民泊”の認定を受けたのは、
民泊のマッチングサイト「STAY JAPAN」を運営する企業、
とまれる(株) の物件です。
物件は、蒲田駅から徒歩14分という立地の
平屋建てとなっています。
約50平米、1LDKの間取りで、
築65年の日本家屋をフルリノベーションしたものです。
部屋の中には日本の文化を感じさせる小物が多く配置されており、
外国人旅行者に日本的な生活空間を体験してもらう工夫が
取り入れられています。
フルリノベーション工事には、
住友不動産の新築そっくりさんが活用されているということです。
■ 注目の一方でトラブル増加の懸念も
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大田区の他に大阪府なども条例を制定し、
特区民泊解禁の動きを見せています。
さらに、2020年には東京オリンピックが開催され、
多くの外国人旅行者が日本を訪れることが予想されるため、
今後も民泊は増加していくと考えられます。
一方で、近所に民泊施設ができることで
トラブルの増加を心配する声も挙がっています。
ジャストシステムが東京都に住む
20~69歳の個人1000人を対象に行った、
民泊に関する意識調査では、
「民泊」という言葉を知っている人は
全体の90.1%となっており、
多くの人が民泊サービスを認知していることが分かります。
また、民泊認知者のうち、
民泊サービスが犯罪目的に使われる可能性については、
66.7%が不安に感じているということです。
さらに戸建住宅の住人に限定した質問では、
自宅の周辺に民泊サービスが増えたら
27.9%の人が引っ越しを検討すると回答しており、
民泊サービスに対する不安感の高さがうかがえます。
実際に部屋を民泊で開放したマンションなどでは、
他の住民とのトラブルも起きているようです。
トラブルの内容としては、
複数の外国人が部屋を出入りしており、
防犯上不安というものから、
ごみ出しのルールが守られず、
共用廊下にごみが放置されているといったものまで、様々です。
民泊に関するトラブルを防ぐため、
あらかじめ民泊禁止を管理規約に定めた
新築マンションを販売するというケースもあります。
民泊ビジネス拡大のためには、
住民とのトラブルをどう防ぐかという点がポイントになりそうです。