「若年層ユーザーの現実」(前編)市場動向
近年になって若年層は「消費しない」「モノを買わない」と、消極的な消費行動が指摘されています。
住宅購入者のボリュームゾーンは未だ30代を中心とした、若年一次取得層であることは間違いありませんが、こうした消費行動の変化から若年層が求める住まいへのニーズも徐々に変化が見られます。
そこで今回は最近の若者像から、住宅取得に対する考え方、スタンスを探ると共に、今後どのような住宅が好まれるようになるかを考えてみたいと思います。
■ 収入低下で若年層の住宅取得はどうなるか
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若年層像を掴むにあたって、
まず若年層の現在の収入について見てみます。
2002年、2007年、2012年に行われた
総務省の就業構造基本調査によれば、
30代の所得分布の推移は下記のようになっています。
<2002年> <2007年> <2012年>
~199万円 21.2% 24.7% 26.3%
200~299万円 13.5% 18.2% 18.6%
300~399万円 15.7% 18.6% 18.9%
400~499万円 15.6% 16.1% 15.6%
500~599万円 11.1% 10.6% 9.5%
600~799万円 9.5% 8.5% 6.8%
800~999万円 2.2% 2.0% 1.5%
1,000万円以上 1.2% 1.3% 1.0%
所得399万円台までで見れば50.4→61.5→65.7%で、
20代についてもほぼ同様の傾向が出ています。
これは派遣社員、契約社員といった
非正規雇用者が大きく増えたことが要因で、
正社員だけで見ると
所得の減少は世代平均よりも緩やかになりますが、
いずれにせよ若年層の所得が減少したことで、
住宅予算や住宅の購入意欲にも
大きく影響を与えていることは間違いありません。
収入減に付随して、
将来に対する不安を大きく抱えているのも若年層の特徴です。
国土交通省が2013年に実施した国民意識調査では、
10年後の社会に対するイメージとして、
「不安がある」と答えた回答者は、
40~50代や60代と比べると、20~30代が最も多い結果となりました。
バブル崩壊や就職氷河期、
深刻なデフレを目の当たりにしてきた若年層は、
今や日本経済の成長、
ひいては自身の給料が右肩上がりになっていくことを想像できず、
将来に対して悲観的なイメージを持っている傾向にあります。
これが顕著に表れているのが、借金やローンに対する考え方です。
同じく国民意識調査では
「買い物でローンや借金はしたくない」という設問に対して、
「あてはまる」「ややあてはまる」との回答は82.2%に達しました。
若年層の消費傾向として、
身の丈以上にお金を使わない「身の丈消費」は確実に増えており、
自分が好きなものや価値を感じるものには
お金をかけてそれ以外を節約する「メリハリ消費」、
また、ランニングコストやトータルコストを重視するなど、
支払うコストに対する感覚は敏感になってきています。
ローンや借金を嫌うならば、
一見住宅は売りにくくなるように思えます。
しかし一方で、国土交通白書によれば所有地、
借地であるに関わらず「家を所有したい」との意向は、
20~30代で未だ8割を超えています。
将来に対する不安があればこそ、
賃貸ではなく家を所有して将来に備えたいというニーズも
また根強くなります。
「お金はない」「大きな負債を抱えたくない」
「しかし持ち家に住んで将来に備えたい」、
こうした消費指向を持つ若年層を
キャッチする住まいを提案することが、
これからの住宅販売については重要になります。
次回は今後若年層が求める具体的な住宅像について触れていきます。
(情報提供:住宅産業研究所)