大手メーカーの中間決算にみる、住宅業界の現状と今後(後編)業界ニュース,市場動向,ハウスメーカー
前回に引き続き、大手住宅メーカー8社(※)の2015年度中間決算をもとに、住宅市場の現状と今後について解説します。
(※積水ハウス・大和ハウス・積水化学工業・ミサワホーム・パナホーム・住友林業・旭化成ホームズ・三井ホーム。積水ハウスは1月決算、その他は3月決算)
■ 2015年度通期の予測、販売はマイナスも受注はアパート・戸建ともプラスか
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今回は、上半期の販売・受注実績や、
各社による今後の市場予測を織り込んだ、
2015年度通期での業績予測を見ていきましょう。
まず、戸建の販売戸数(棟数)です。
予測を開示している6社
(積水ハウス・三井ホームは非開示)合計での販売数は、
前年実績比で▲4.2%の見込みです。
前回お伝えした上半期の厳しい市場環境が、
そのまま通期の販売予測に反映された格好です。
メーカー別の予測を見ると、
6社すべてが前年比でマイナスの予測です。
期初の時点では複数のメーカーが
前年比プラスの販売予測を出していましたが、
いずれも中間決算で下方修正を行い、マイナスに転じています。
一方で、アパート販売戸数(棟数)はどうでしょうか。
戸建と同様に予測を開示している6社の合計で、
前年実績比+4.5%の見込みです。
2014年度が前年比+15.6%と大幅増を記録しており、
ハードルは高いのですが、
2015年度はそれをさらに上回ると予測しています。
メーカー別に見ると、6社のうち4社が前年比プラス予測で、
特に住友林業(+32.1%)・旭化成ホームズ(+16.6%)は
2ケタ増を見込んでいます。
とりわけ住友林業は、建築請負全体に占めるアパートの比率は
他社に比べ小さいものの、
社を挙げての営業強化により受注が好調で、
今期は大幅な販売増を見込んでいます。
このように、戸建・アパートそれぞれの販売予測を見ると、
前年度から続く「戸建苦戦・アパート好調」の現状が、
極めて明確になります。
戸建については、受注の戻りが大幅に遅れているうえ、
急速な受注回復の要因も乏しく、
今期の販売も苦戦を強いられています。
一方でアパートは、
引き続き都市部・富裕層を中心に需要は旺盛で、
多くのメーカーにおいて強気の予測が目立ちます。
それでは、直近の受注見込みを踏まえた、
通期の受注予測はどうでしょうか。
戸建・アパート合算での受注予測を開示している6社
(積水ハウス・積水化学工業を除く)の合計は、
前年実績比で+4.2%の見込みです。
上半期の受注数が実績値で+3.2%ですから、
下半期はさらに受注回復が進むという予測であると言えます。
メーカーごとの予測を見ると、ミサワホームを除く5社が、
通期での受注数を前年比プラスで見込んでいます。
アパートは引き続き好調との予測で、
6社のうち4社が前年比プラスの見通しです
(ミサワホームはマイナス予測、三井ホームは
戸建・アパートの内訳を非開示)。
そして気になる戸建ですが、
内訳が非開示の三井ホームを除く5社すべてが、
戸建の受注数が前年を上回ると予測しています。
分譲住宅を除いた注文住宅の受注数においても、
パナホームの微減予測(−0.4%)を除いては、すべてプラス予測です。
このプラス予測に関して、
「企業としてプラス予測を出すのは当然である」
との見方もあるかもしれませんが、
一方で、メーカー各社が戸建の受注回復の手応えを
感じ始めているとも言えそうです。
事実、足元の集客に関して各メーカーに話を聞くと、
エリア・メーカーにより波はあるものの、
9月のシルバーウィークごろから
回復傾向にあるという声が聞かれます。
商談の長期化や結論の先延ばし傾向は続いているようですが、
集客の回復は商談数の増加につながるプラス材料です。
集客の山場となる、2016年の新春集客が目の前に迫っています。
集客回復のトレンドが続くのであれば、
このお正月は一定の集客が期待できます。
そして、9月には消費税8%の経過措置の期限が控えています。
来る2016年は、
久しぶりに住宅検討社の動きが活発化する1年になる可能性が
高いでしょう。
これは、今回データを紹介した大手ハウスメーカーだけでなく、
ビルダー・工務店にも同じことが言えます。
動き始めたお客様を逃さないためには、
積極的な自社PR活動・集客活動や、
接客・商談の工夫が求められます。
また、消費増税を見越して、
過去に接触したものの動きがない
名簿客・管理客に対するアプローチも必要となるでしょう。
(情報提供:住宅産業研究所)