専業系リフォーム会社の営業戦略(後編)集客・マーケティング,経営・人材育成,リフォーム・リノベーション
先週と今週は、専業系(独立系)リフォーム会社の動きをお伝えしています。
先週は、専業系大手各社の直近の業績動向について解説しました。
今週は、各社の営業戦略について、ユニークな取り組みをいくつかご紹介します。
■ 大型ショールーム・水まわり専門店・エリア拡大…専業系各社の店舗戦略
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以前、このメールマガジンでもお伝えしましたが、
専業系リフォーム会社の集客は、
ここ数年はウェブを利用したものが活発化しています。
その一方で、シニア層も専業系各社の
主要ターゲットであることから、新聞折込などの紙媒体も、
多くの企業で積極的な活用が続いています。
これらの集客媒体と並んで、各社が注力しているのが「店舗」です。
専業系大手の多くが注力する大規模案件においては、
現地での打ち合わせのみで契約に至るというケースは少なく、
1度は店舗に足を運ぶというケースが多いようです。
そのため、店舗の立地や内容が重要になります。
この店舗展開に、各社の特徴がよく現れています。
東京都多摩市に本社を置くホームテックは、
「リフォームプライス」と銘打った
ショールーム型の大型店舗が特徴です。
幹線道路沿い、もしくはターミナル駅から徒歩圏内という
好立地に構える店舗が多く、
広さは1,000平米を超えるものもあります。
このリフォームプライスでは、
複数メーカーの住宅設備を展示しています。
例えば、2006年にオープンした、
同社初の大型店舗である八王子店では、
キッチンだけで12メーカー19台、
浴室も7メーカー13台が展示されています。
各商品の特徴を5つ星で評価しているほか、
本体価格・工事価格も明記しています。
リフォーム検討客にとっては、
気になるメーカーのショールームに何か所も足を運ぶことなく、
商品ごとの機能や価格を比較できるというメリットがあります。
八王子に1号店をオープンした2006年当時、
世間では悪徳リフォーム業者の横行が社会問題となり、
リフォーム業界全体のイメージが悪化し、
集客がやや低迷していました。
大型店開設の背景には、
地域の優良リフォーム会社としてのイメージを
醸成するという目的もあったようです。
この狙いが当たり、
2006年度の売上高は前年比で20%以上のプラスとなり、
工事単価も大幅に上昇したということです。
現在、リフォームプライスは11店舗に増えています。
近年のエリア拡大においては、
従来の単独ショールームではなく、
地元百貨店にテナント出店することで、
大型のスペースを確保しつつ、
百貨店ブランドによる信頼感醸成を狙っています。
ホームテックとは逆に、
「事務所」に近い小規模店舗を展開する企業もあります。
例えば、東京都足立区に本社を置く山商リフォームサービスは、
店舗の役割を「来店したお客様のための打ち合わせスペース」に
とどめており、20坪以下のコンパクトなスペースに
必要最小限の人員・機器を配置するのみで、
出店コストを抑制しています。
現在、12店舗を開設していますが、
出店地を複数の鉄道が交差するターミナル駅に絞り込むことで、
出店効率を高めているということです。
また、近年、専業系リフォーム会社が相次いで展開しているのが
「水まわり専門店」です。
小規模なショールーム型店舗に水まわり商品のみを展示し、
店舗名も通常のブランドとは異なる
「水まわり専門」の名を冠することで、
増改築提案型の集客・営業活動では取り込むことのできなかった
顧客層に訴求するというものです。
大阪市に本社を置くナサホームが2011年に開始した
専門店「みずらぼ」の成功をきっかけに、
同様の店舗が各地に広がっています。
■ 大型案件獲得は各社共通の課題、「中古+リノベ」取り込みも
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2014年度の案件減少があったとはいえ、
各社とも大型案件の獲得には引き続き積極的です。
特に、近年は国主導による中古流通の活性化も
進められていることから、「中古住宅+リノベーション」の
訴求に各社とも積極的です。
例えば、前述のホームテックでは、
自社ウェブサイトに中古不動産検索サイトをオープンし、
物件探しからの顧客獲得を強化しています。
サイト内では、物件情報と併せてリノベーションプランと
工事価格を掲載し、検討客が具体的にイメージしやすいよう
工夫を施しています。
また、大型案件の受注においては、
価格だけではなく提案力も重要です。
近年、多くのリフォーム会社では、
大型案件の受注強化を目的とした
専門チームを設置するケースが増えています。
受注率の高いデザイナーや
コンテスト入賞経験のあるデザイナーを選抜し、
提案力を高めるというものです。
社内で複数のデザイナーによるコンペを実施し、
提案の質を高めているという例もあります。
今後の大型案件獲得においては、価格勝負だけではなく、
新築並みの提案力が勝敗を分けることになりそうです。
(情報提供:住宅産業研究所)